甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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37.負け惜しみ

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「ラフェリア……これは全て、お前の差し金か?」
「さて、どうでしょうね?」
「忌々しい女め……お前は、いつもそうだった。あのラナキシアにそっくりだ」
「ラナキシア……」

 そこでお父様は、母の名前を口にした。
 お父様の口調からは、確かな怒りが読み取れる。それはつまり、母のことをひどく憎しんでいるということなのだろう。

「あの女は、いつも俺を見下してきた! そんなあいつが俺は大嫌いだった! やはりお前など産ませるべきではなかった! 俺にそんなつもりはなかったというのに、あの女は……まさかあの一度の過ちで、お前などができるなんて……」

 お父様の言葉からは、後悔の念のようなものが伝わってきた。
 彼は一体、どこから後悔しているのだろうか。私はそれを、少し考えていた。

 私という存在ができるまで何があったのか、それを私は知っている。この屋敷で、噂になっていたからだ。
 それを考えると、はらわたが煮え繰り返ってきた。お父様は一体、どれだけ自分勝手なのだろうか。

「あなたがお母様に何をしたのか、私は知っています。もしかしたら私という存在は、あなたの非道な行いに対するお母様の復讐心によって形作られているのかもしれませんね」
「生意気な所まで、あの女にそっくりだ。益々忌々しい。言っておくが、あの女は屑だ! 妻の風上にもおけない愚か者だ! 死んだ時は清々したさ! あいつの死ぬ顔を、お前にも見せてやりたかったくらいだ!」

 既に破滅が決まっているからか、お父様はお母様のことを大々的に罵倒し始めた。
 その発言の数々に、私の体は震えていた。お母様の記憶なんてものはないが、それでもお父様の言葉が許せない。

 故に私は、自然と腕を大きく振り上げていた。
 しかし、その手が振り下ろされることはなかった。なぜなら、そんな私の腕を掴む人がいたからである。

「ナルギス……?」
「……あんな男に手をあげる必要はない。そんなことをして、あなたの綺麗なこの手を汚す必要はない」
「ナルギス、あなた……」

 私が言葉を発した次の瞬間、ナルギスの体は大きく前進していた。
 そして彼の拳が、素早く振るわれる。その対象は当然ながら、お父様だ。

「なっ……ぬあああああああっ!」

 ナルギスの拳に対して、お父様は情けない叫び声をあげた。
 ただその拳は、お父様に届いていない。ナルギスは、寸前でその手を止めているのだ。
 そこには、彼の理性が現れているのかもしれない。彼は怒りながらも、それでもお父様を傷つけないことを選んだのだろう。

「あがっ……」

 しかしお父様は、その場にゆっくりと膝をつきそのまま動かなくなった。
 ナルギスの気迫だけで、参ってしまったのだろう。やはり彼はどこまでも、矮小な人である。目の前にいる一人の誇り高き男性の背中を見ながら、私はそう思うのだった。
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