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50.王弟からの糾弾
「つまりですね、これは王女イムティアの陰謀なのです」
集められた有力者達の前で、初老の男性はそのように宣言した。
彼は、件のウォンバルト公爵である。イムティア様が目をつけていた国王様の弟は、彼女の予想通りの主張をしてきたのだ。
「あの二人を亡き者にして、誰が一番得するか、それは明白です。彼女はこれで、容易に王になることができる。今回の件の犯人は、彼女しかいないのです」
姪であるイムティア様のことを、ウォンバルト侯爵は嬉々として糾弾していた。
今回の件の犯人が、彼であるかはまだわかっていない。しかし例え犯人でなかったとしても、彼は最低の人間だ。
この状況で、イムティア様を追い詰める。それがどれだけ、罪深いことか。私は公爵に対して、ふつふつと怒りが込み上げてきていた。
「ラフェリア嬢、心配はいりません。彼の言っていることは、根拠のないものです。流石にこれを鵜呑みにする人はいませんよ」
「それは私も、わかっているつもりです。しかし……」
「今はとにかく、見極めましょう。もしかしたら犯人は、この中にいるかもしれません。その手がかりが掴めるかもしれません」
一方で糾弾されているイムティア様は、とても冷静であった。
そんな彼女の言葉によって、私も少し冷めた。ウォンバルト公爵を許すことはできないが、今は成り行きを見守った方がいいということなのだろう。
「……ウォンバルト公爵、少しよろしいでしょうか?」
「む?」
そこで、一人の男性がゆっくりと手をあげた。
その男性は、有力者達の中でも一際若い男性だ。私達よりも、少しだけ年上といった所だろうか。
「お前は、エルビー公爵の倅……一体、何を言いたいというのだ?」
「ウォンバット公爵、私は王女イムティアが今回の事件の犯人足りえないと考えています」
「何?」
その男性、エルビー公爵令息はウォンバルト公爵に対して堂々と言い切った。
そのことに、周囲の人達は騒めき始める。まだ若い公爵が、王弟である彼に強い意見を出したということに、驚いているのだろう。
正直な所、それは私も同じだった。まさかこの状況で、イムティア様を擁護する者が現れるとは思っていなかったからだ。
「イムティア様、彼は一体……」
「彼は、エルビー公爵令息……エバリス様です。エルビー公爵が病床に伏しており、その代理としてこちらにやって来た方ですが」
イムティア様も、エバリス様の言葉には驚いている。つまり彼は、決してイムティア様の味方ではなかったということだろう。
彼女に王位を継がせるのに反対するのと、彼女を今回の犯人にすること、その二人は結びつかないということだろうか。とにかく、エバリス様はこちらにとってはありがたい主張をしてくれるようだ。
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「それは私も、わかっているつもりです。しかし……」
「今はとにかく、見極めましょう。もしかしたら犯人は、この中にいるかもしれません。その手がかりが掴めるかもしれません」
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そんな彼女の言葉によって、私も少し冷めた。ウォンバルト公爵を許すことはできないが、今は成り行きを見守った方がいいということなのだろう。
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「む?」
そこで、一人の男性がゆっくりと手をあげた。
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「お前は、エルビー公爵の倅……一体、何を言いたいというのだ?」
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