生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗

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9.見苦しいこと

「ロナード……あなた、私の邪魔をっ!」
「姉上、見苦しい真似はおやめください……」

 リリアナ様は、私との間に入ってきたロナード様を睨みつけていた。
 彼女からしてみれば、弟の行動は当然気に入らないものだろう。これには伯母様も流石に、表情を歪めている。

「見苦しい真似ですって?」
「今の姉上の行動は、そうとしか言いようがないものです。怒りに任せて、暴力を振るおうとするなど淑女にあるまじき行為です」
「知ったような口を聞くんじゃないわよ!」
「ロナード、あなたは一体誰の味方のつもりなのですか?」

 普段はロナード様には弱い伯母様は鋭い目つきで、彼に質問をした。
 彼女はあくまで、ロナード様をあくまでも自分達側だと考えているのだろう。自分達を諫めることはあっても、真に敵対することはない。伯母様の心情は、そんな所だろう。

「……母上、僕は正しくありたいと思っています。姉上や母上のルシェーラに対する態度は、僕にとって正しいものではありません」
「正しさですって? そんなものが何になるのよ! ロナード、あなたは何もわかっていないわ。こんな女に、レヴィトン子爵家をいい様にされるかもしれないのよ? それをあなたは、黙ってみているというの?」
「全ては身から出た錆ではありませんか。姉上は母上とともに、いつもルシェーラを抑えつけていた。立場が上だからと思い込んで。それがそのまま返ってくるだけのことです」

 ロナード様の言葉に、リリアナ様は激昂していた。
 伯母様と違い、弟を疎んでいた節があったリリアナ様にとって、ロナード様の発言は聞き捨てならないものだったのだろう。彼女はすっかり、眉間に皺を寄せている。

「ふっ、ふふっ……」
「姉上?」
「……格好つけているんじゃないわよ! あなたは自分の方が立場が上だなどと思っているのかもしれないけれど、そんなことはないのよ」
「……リリアナ?」

 リリアナ様は、そこで伯母様の方に視線を向けた。
 それは私達にとって、予想外のことである。この場面において、彼女が味方に視線を向けるなんて、思ってもいない行動だ。
 彼女の表情は、凡そ味方に向けるものではない。私やロナード様に向けるような表情を、リリアナ様はしていた。

「お母様、私は知っているんですよ。お母様の秘密を……」
「な、なんですって?」
「ロナードは、お父様の子ではないのでしょう?」
「なっ……!」

 リリアナ様の一言に、周囲の空気が一気に凍り付いた。
 使用人も含めて、その場にいる誰もが固まったのだ。彼女が口にしたその事実は、それ程に重大なものだった。
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