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43.邪悪なる意思

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 私とソルーガ、そしてディルギン氏の三人は、ステイリオ夫人と向き合って座っていた。
 彼女から、今回の事件に関するあれこれを聞くためだ。
 傍には、パリドットさんもいる。彼も、今回の事件にかなり関わっているらしいので、同席することになったのだ。

「さて、まずは何からお話ししましょうか?」
「あなたと男爵との間に何があったかをお話いただきたい」

 夫人に対して、ディルギン氏はそんな質問を投げかけた。
 彼の予測では、男爵が夫人を殺害しようとしていたらしいのだが、それは正解なのだろうか。

「私と彼の間にあったことですか……ディルギンさん、あなたはそれに対してどのような見解を?」
「彼が、あなたに危害を加えようとしていたのではありませんか?」
「なるほど、そこまでわかっているのですね……」

 ディルギン氏の言葉に、夫人は驚いたような顔をした。
 その様子からすると、彼の予測は当たっていたということになるだろう。

「……セリネア様から彼の浮気に関する報告を受けてから、私は彼との離婚を考えていました。それまでも、なんとなく予想はしていましたが、事実としてそれを提出されて、決心がついたのです」

 私は、アルトアと関係を持っていた男性の妻及び婚約者に、手紙を出した。
 その判断は、正しいものだと思っていた。だが、それによって、夫人は被害を受けることになってしまったようだ。
 もしかしたら、彼女はその事実を知りたくなかったのかもしれない。恐らく、浮気されているという事実から、目をそらしたかったのではないだろうか。
 とはいえ、それは現実逃避に過ぎなかったというのも事実だ。どの道、彼女が追い詰められることになったという事実は、それ程変わらなかったようにも思える。

「ですが、夫は私と離婚する訳にはいきませんでした。彼には、多額の借金があります。それを返すためには、私を頼るしかありませんでした。つい最近、私は父を失い、その遺産を得ていたものですから」

 夫人は、悲しそうな顔をしていた。
 お金のために、夫から命を狙われる。それは、どれだけ悲惨なことだろうか。
 浮気して、借金を作って、殺害を企てる。考えてみると、ステイリオ男爵の邪悪さは、ラウグス様以上のものだ。

「そこで彼は、私を亡き者にしようとしました。階段に細工をしていたんです。なんとか、転げ落ちることはなかったものの、私は危うく命を落とす所でした」

 夫人の表情には、恐怖の色が伺えた。
 それは当然のことである。もしも少しでも運命がずれていれば、彼女は命を失っていた。それが恐ろしくない訳がない。
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