まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗

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36.次期国王は

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「さてと、アゼルト兄上、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「……なんだ?」

 私の胸をすっきりとさせてくれたイルガン殿下は、アゼルトお兄様に対して真剣な表情を向けた。
 それで何かを察したのか、アゼルトお兄様の方も表情を変える。恐らく今回集まった主目的について、話し合うということだろう。

「今回私達を集めたことには、それ相応の理由があるとお見受けします。それについて聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「お前なら薄々勘付いていることだろう。大方の準備が整ったのだ」
「なるほど、いよいよ私達が動き出す時が来たという訳ですか」
「ふふ、王位争いも面白いことになってきたね」

 アゼルトお兄様とイルガン殿下の会話に、クロードお兄様は笑顔を浮かべていた。
 しかし彼は、とても他人事である。この場に呼び出されたということは、当事者として数えられていると私は思っていたが、そういう訳でもないのだろうか。

「それではアゼルト兄上、表明するとしましょうか。それぞれが誰を支持するかということを……」
「奴にとっては大きな重荷となるだろうな……」
「意外ですね。アゼルト兄上がそのようなことを気にするなんて。しかしそれは、仕方のないことですよ。彼にも背負ってもらわなければなりません」
「……え?」

 二人のやり取りに、私は思わず声を出してしまった。
 それによって視線が集まって、少し居心地が悪い。ただ疑問については解消しておきたいため、聞いてみることにする。

「すみません。でもその、お二人が第三者のことを述べていることが気になってしまって」
「……そうか。お前にはまだ伝えていなかったな。置き去りにして悪かった」
「ああなるほど、私達が次の王位を私達のどちらかにしようとしていると考えた訳ですか」
「なんだ。二人ともわかっていて隠していた訳ではなかったんだ」

 私の言葉に対して、三人はそれぞれ納得したような顔をした。
 クロードお兄様に関しては確信犯だったようだが、二人は話すことを失念していたらしい。この場にいる全員が、理解している前提で話していたということなのだろう。
 それらの言葉によって状況が整理でき、私もどういうことなのかは推測が立った。つまり次期王位は、この場にいないもう一人の王子に託されるということなのだろう。

「……失礼致します」
「……来たか。入っていいぞ」

 そこで部屋に、戸を叩く音が鳴り響いてきた。
 アゼルトお兄様の許可から程なくして、戸がゆっくりと開く。
 そしてそこには立っていた。王家の最年少、エンディ殿下が。
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