父の浮気相手は私の親友でした。

木山楽斗

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2.親友の兄

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「……ティセリア嬢、来ていたのか?」
「アウェイン様……」

 オーガル子爵家の屋敷から私が帰宅しようとしていると、反対側からこの家の長男であるアウェイン様がやって来た。
 イルーネの兄である彼とも、幼い頃から交流はある。ただ、年上で異性ということもあってイルーネ程に距離が近い訳ではない。
 ただ、彼は私にとっては特別とも言える人だ。憧れとでも言うのだろうか。私は彼に対して、並以上の感情を抱いている。

「お兄様、帰られていたのですね?」
「ああ、つい先程帰って来た所だ」
「ナルーフ男爵令息はどうでしたか?」
「怪我は大したものではないようだ。といっても、しばらくは入院して安静にしなければならないようだが……」

 イルーネの言葉に、アウェイン様は答えた。
 どうやら彼は、友人か知人のお見舞いに行っていたらしい。
 そういえば、ネーゼル男爵家の長男が、出先で魔物に襲われたという話を最近聞いたことがある。アウェイン様は、彼と繋がりがあったということか。

「おっと、すまないな、ティセリア嬢。俺達は後でいくらでも話ができるというのに……」
「あ、そうでした。ごめんね、ティセリア」
「いいえ、お気になさらず。お二人のそういったやり取りを見るのも、私の楽しみの一つですから」

 私がそう言うと、二人は顔を見合わせた。
 少し言葉が足らなかっただろうか。ただ口にしたことは本心だ。二人のこうしたやり取りを見ていると、心が安らぐ。真っ当な家族というものを、実感することができるからだ。

「私には、兄弟などがいません。ですからそういった会話を聞いていると、心が躍るものなのです。ああ、私にもお兄様がいたら、みたいな……」
「なるほど……そういうものなのか」
「私達にはわからないことなのかもしれませんね」

 私は、表面上の理由を述べて誤魔化しておいた。
 もちろん、これも嘘という訳ではない。兄弟というものに憧れはある。兄でも姉でも、弟でも妹でも、欲しかったと思う。
 ただそれは、叶わないことだ。お父様もお母様も、私という家を受け継ぐ最低限の子供を作り、それ以上は望まなかった。そこが二人の限界であったのだろう。

「でも、私も弟や妹が欲しいと思ったりはしますね……」
「そうだったのか?」
「兄弟は多い方が良いと思っています。もちろん、多かったらそれはそれで問題が発生していたのかもしれませんが……」
「まあ、俺達は貴族だからな」

 二人の言葉に、私は自分の現状を改めて考えることになった。
 私達は貴族である。望まぬ結婚もあり得るだろう。その辺りは、割り切るしかないことなのかもしれない。
 お父様やお母様は、それができなかった。いや、少なからず歩み寄ろうとしていたお母様を責めるのは酷というものだ。ずっと拒んでいるお父様が、やはり全ての元凶なのではないだろうか。
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