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4.妹の怒り
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「……まさか、婚約破棄なんて」
「……それについては、私も本当に驚いています」
アルバルト様の話を聞いた後、私はエムリーを訪ねていた。
色々と考えたが、彼女と話をする必要があると判断した。これは、ルヴィード子爵家にとっても重大なことなのだから。
「これでも一応、いい関係を築こうと努力していたのですけれどね」
「彼はあなたの本質を見抜いていたようね」
「見抜いていたから、なんだというのですか? それでも婚約破棄するなんて、失礼にも程があるでしょう!」
エムリーは、アルバルト様からの婚約破棄にひどく怒っていた。
それは当然といえば当然なのだが、私はどうしても同情できない。エムリーの悪辣さを誰よりも知っている私は、どうしてもアルバルト様の肩を持ってしまう。
「屈辱的です。そもそもの話、あの意気地なしなど私の婚約者として不適切でした。お父様もお母様も、見る目がなかったのですね」
「二人のことを悪く言うのはやめなさい。そもそも二人が、アルバルト様の人となりを知っていたとも限らないでしょう」
「……ふん。愚かな両親の血をお姉様は色濃く継いでいるようですね」
尊敬するべきお父様とお母様のことを、エムリーは鼻で笑っていた。
この妹が、両親のことを批判するのは珍しいことだ。それだけ、今回の婚約破棄によって冷静さを失っているということだろうか。
「あなただって、お父様とお母様の子でしょう?」
「私はあの二人のようになるつもりはありません。もっと賢く生きるつもりです。愚直なお姉様には理解できないでしょうけどね」
「自分の利益のために、他者を貶めて傷つけるのが賢い生き方だというの?」
「当り前でしょう。私は私の利益のために生きているのですから」
エムリーの顔は、ぐしゃりと歪んでいた。
怒りと欲望を孕んだその表情に、私は少し後退ってしまう。
妹の中に大きな欲望が渦巻いているのは知っていたつもりだが、ここまでとは予想外である。彼女は私が思っていた以上に、とんでもない人なのかもしれない。
「……まあ、今回の件に関して、あなたに非があるという訳ではないわ。また次の婚約者をお父様やお母様が探すでしょう」
「……」
「それまで大人しくしていることね」
「ええ、もちろんです」
私の言葉に対して、エムリーは鋭い視線を向けてきた。
それは明らかに、大人しくするつもりがない視線だ。どうやら私のささやかな平穏は、崩れ去ってしまったようである。
これから妹が何をしてくるかはわからない。何があってもいいように、私も備えておく必要があるだろう。
「……それについては、私も本当に驚いています」
アルバルト様の話を聞いた後、私はエムリーを訪ねていた。
色々と考えたが、彼女と話をする必要があると判断した。これは、ルヴィード子爵家にとっても重大なことなのだから。
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「彼はあなたの本質を見抜いていたようね」
「見抜いていたから、なんだというのですか? それでも婚約破棄するなんて、失礼にも程があるでしょう!」
エムリーは、アルバルト様からの婚約破棄にひどく怒っていた。
それは当然といえば当然なのだが、私はどうしても同情できない。エムリーの悪辣さを誰よりも知っている私は、どうしてもアルバルト様の肩を持ってしまう。
「屈辱的です。そもそもの話、あの意気地なしなど私の婚約者として不適切でした。お父様もお母様も、見る目がなかったのですね」
「二人のことを悪く言うのはやめなさい。そもそも二人が、アルバルト様の人となりを知っていたとも限らないでしょう」
「……ふん。愚かな両親の血をお姉様は色濃く継いでいるようですね」
尊敬するべきお父様とお母様のことを、エムリーは鼻で笑っていた。
この妹が、両親のことを批判するのは珍しいことだ。それだけ、今回の婚約破棄によって冷静さを失っているということだろうか。
「あなただって、お父様とお母様の子でしょう?」
「私はあの二人のようになるつもりはありません。もっと賢く生きるつもりです。愚直なお姉様には理解できないでしょうけどね」
「自分の利益のために、他者を貶めて傷つけるのが賢い生き方だというの?」
「当り前でしょう。私は私の利益のために生きているのですから」
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怒りと欲望を孕んだその表情に、私は少し後退ってしまう。
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「……まあ、今回の件に関して、あなたに非があるという訳ではないわ。また次の婚約者をお父様やお母様が探すでしょう」
「……」
「それまで大人しくしていることね」
「ええ、もちろんです」
私の言葉に対して、エムリーは鋭い視線を向けてきた。
それは明らかに、大人しくするつもりがない視線だ。どうやら私のささやかな平穏は、崩れ去ってしまったようである。
これから妹が何をしてくるかはわからない。何があってもいいように、私も備えておく必要があるだろう。
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