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9.教室に戻って
ロダルト様とエムリーとの話が終わってから、私は教室に戻って来ていた。
寮の自室に帰っても良かったのだが、行き先がエムリーと被っているため、鉢合わせを避けるためにも、こちらに戻ってくることにしたのだ。
幸か不幸か、教室には誰もいない。放課後であるため当然といえば当然なのだが、皆寮に帰ったりしているようだ。
「まったく、どうしてこんなことをになってしまったのだか……」
私は、自分の席に座ってゆっくりとため息をついた。
結局の所、私は動き出すのが遅かったということなのだろうか。エムリーの後手になってしまったというのは、私の落ち度としか言いようがない。
ただ彼女の口振りから考えると、ロダルト様は自らの意思でエムリーと婚約することを決めたということになる。
その場合は、私が何をしたとしても無駄だったのかもしれない。事実としてエムリーはある程度理不尽に婚約破棄された訳だし、遅かれ早かれこうなっていた気がする。
「ロダルト様は優しく気遣いができる人ではあったけれど……」
そこで私は、ロダルト様という人間の性質を思い出していた。
基本的には誠実な彼は、影響を受けやすい側面がある。今回はその側面が、私にとって望ましくない方向に働いたといえるだろう。
私はもっと、ロダルト様を懐柔しておかなければならなかったのかもしれない。
彼という人間を信じすぎていたのだ。もちろん気が進むことではなかったが、もっと彼を私に縛り付ける方策をとるべきだったのだろう。
「……浮かない顔をしていますね?」
「……え?」
色々と考えて項垂れていた私は、かけられた声に驚いた。
聞こえてきた方向を向いてみると、そこにはマグナード様がいた。彼はこちらを心配そうな顔をして、見てくれている。
「マグナード様……どうしてこちらに?」
「間抜けながら忘れ物をしてしまいましてね……しかし、それに関してはこちらも同じ疑問を抱いています。イルリア嬢は、どうしてこちらに?」
「それはその……色々とありまして」
マグナード様からの質問に、私は曖昧な答えしか返すことができなかった。
彼にルヴィード子爵家の事情を伝えるべきではないと判断したからだ。
そんな私に対して、彼は目を細めている。何かを思案しているといった感じだ。
「少し失礼します」
「あっ……」
それから彼は、ゆっくりと私に近づいて来て、隣の席に座った。
明らかに、話を聞く体勢を作っている。どうやら私の事情に、踏み込んでくるつもりのようだ。
寮の自室に帰っても良かったのだが、行き先がエムリーと被っているため、鉢合わせを避けるためにも、こちらに戻ってくることにしたのだ。
幸か不幸か、教室には誰もいない。放課後であるため当然といえば当然なのだが、皆寮に帰ったりしているようだ。
「まったく、どうしてこんなことをになってしまったのだか……」
私は、自分の席に座ってゆっくりとため息をついた。
結局の所、私は動き出すのが遅かったということなのだろうか。エムリーの後手になってしまったというのは、私の落ち度としか言いようがない。
ただ彼女の口振りから考えると、ロダルト様は自らの意思でエムリーと婚約することを決めたということになる。
その場合は、私が何をしたとしても無駄だったのかもしれない。事実としてエムリーはある程度理不尽に婚約破棄された訳だし、遅かれ早かれこうなっていた気がする。
「ロダルト様は優しく気遣いができる人ではあったけれど……」
そこで私は、ロダルト様という人間の性質を思い出していた。
基本的には誠実な彼は、影響を受けやすい側面がある。今回はその側面が、私にとって望ましくない方向に働いたといえるだろう。
私はもっと、ロダルト様を懐柔しておかなければならなかったのかもしれない。
彼という人間を信じすぎていたのだ。もちろん気が進むことではなかったが、もっと彼を私に縛り付ける方策をとるべきだったのだろう。
「……浮かない顔をしていますね?」
「……え?」
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聞こえてきた方向を向いてみると、そこにはマグナード様がいた。彼はこちらを心配そうな顔をして、見てくれている。
「マグナード様……どうしてこちらに?」
「間抜けながら忘れ物をしてしまいましてね……しかし、それに関してはこちらも同じ疑問を抱いています。イルリア嬢は、どうしてこちらに?」
「それはその……色々とありまして」
マグナード様からの質問に、私は曖昧な答えしか返すことができなかった。
彼にルヴィード子爵家の事情を伝えるべきではないと判断したからだ。
そんな私に対して、彼は目を細めている。何かを思案しているといった感じだ。
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「あっ……」
それから彼は、ゆっくりと私に近づいて来て、隣の席に座った。
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