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13.項垂れる妹
「エムリー、落ち込んでいるあなたにこんなことを言うのは、流石の私も酷だと思うけれど」
私は、ゆっくりと言葉を紡いでいた。
妹のことは、今まで疎ましい存在だと思っていた。今回の件においても、私は事実を知った際に勝ち誇っていたくらいである。
ただ、絶望している妹の顔を実際に見てみると、怒りや憎しみという感情は消え去っていた。
とはいえ、それでもエムリーにルヴィード子爵家を渡す訳にはいかないと思っている。故に私は、淡々と事実を伝えることにしたのだ。
「お母様は、ルヴィード子爵家に嫁いできた身であることは、あなたもわかっているでしょう。つまり、あなたはルヴィード子爵家の後継者にはなり得ない」
「くっ……」
エムリーには、ルヴィード子爵家の血は流れていない。
彼女は、母方の家系の後継者になり得ても、ルヴィード子爵家の後継者になることは不可能なのである。
それは最早、生まれ持った血筋の問題だ。私達の世代で何をしようとも、変えることができない。例え私を葬り去ったとしても、エムリーがルヴィード子爵家を手に入れることはない。
「お父様とお母様も、頃合いを見てあなたに話すつもりだったのでしょうね。まあ実際の所、二人はあなたのことを本当の娘だと思っているでしょうけれど」
私とエムリーの仲は悪いが、お互いに両親との関係が険悪だったという訳ではない。
だからこそ、妹は深く傷ついているのだろう。彼女にとっては、アイデンティティの崩壊に近しいことが起こっているのだから。
「エムリー、あなたには色々と思う所はあるけれど、しかしそれでも、どれだけ憎み合っていたとしても、私もあなたのことは妹だと思っている。その認識は、今更変えようがないものなのでしょうね」
「……」
私としても、今更エムリーのことを他人だと思うことができるという訳でもない。
私と彼女は、仲の悪い姉妹だ。その関係性が変わる訳ではない。それは事実なので、一応伝えておくことにした。
「さて……今回の件であなたに非があると認めるのは、こちらとしても不利益になる訳だから、このままならあなたはルヴィード子爵家から排除されることはないわ。だからこれ以上悪事を働かず、大人しくしていることね」
「私を飼い殺しにするということですか?」
「ええ、適切な関係を築いていきましょう」
私の言葉に、エムリーは項垂れていた。
最早彼女には、抵抗する力など残されていないだろう。その様からは、それがとてもよく伝わってくる。
これでエムリーとの争いは終わりだと思っていいだろう。もちろん、油断するべきではないだろうが。
私は、ゆっくりと言葉を紡いでいた。
妹のことは、今まで疎ましい存在だと思っていた。今回の件においても、私は事実を知った際に勝ち誇っていたくらいである。
ただ、絶望している妹の顔を実際に見てみると、怒りや憎しみという感情は消え去っていた。
とはいえ、それでもエムリーにルヴィード子爵家を渡す訳にはいかないと思っている。故に私は、淡々と事実を伝えることにしたのだ。
「お母様は、ルヴィード子爵家に嫁いできた身であることは、あなたもわかっているでしょう。つまり、あなたはルヴィード子爵家の後継者にはなり得ない」
「くっ……」
エムリーには、ルヴィード子爵家の血は流れていない。
彼女は、母方の家系の後継者になり得ても、ルヴィード子爵家の後継者になることは不可能なのである。
それは最早、生まれ持った血筋の問題だ。私達の世代で何をしようとも、変えることができない。例え私を葬り去ったとしても、エムリーがルヴィード子爵家を手に入れることはない。
「お父様とお母様も、頃合いを見てあなたに話すつもりだったのでしょうね。まあ実際の所、二人はあなたのことを本当の娘だと思っているでしょうけれど」
私とエムリーの仲は悪いが、お互いに両親との関係が険悪だったという訳ではない。
だからこそ、妹は深く傷ついているのだろう。彼女にとっては、アイデンティティの崩壊に近しいことが起こっているのだから。
「エムリー、あなたには色々と思う所はあるけれど、しかしそれでも、どれだけ憎み合っていたとしても、私もあなたのことは妹だと思っている。その認識は、今更変えようがないものなのでしょうね」
「……」
私としても、今更エムリーのことを他人だと思うことができるという訳でもない。
私と彼女は、仲の悪い姉妹だ。その関係性が変わる訳ではない。それは事実なので、一応伝えておくことにした。
「さて……今回の件であなたに非があると認めるのは、こちらとしても不利益になる訳だから、このままならあなたはルヴィード子爵家から排除されることはないわ。だからこれ以上悪事を働かず、大人しくしていることね」
「私を飼い殺しにするということですか?」
「ええ、適切な関係を築いていきましょう」
私の言葉に、エムリーは項垂れていた。
最早彼女には、抵抗する力など残されていないだろう。その様からは、それがとてもよく伝わってくる。
これでエムリーとの争いは終わりだと思っていいだろう。もちろん、油断するべきではないだろうが。
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