不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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50.必要な反省

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 私は、教室まで来ていた。
 中を覗いてみると、思っていた通りマグナード様がいた。
 よく考えてみれば彼の居場所は知らなかったので、ここで見つかったというのは幸いである。

「マグナード様、少しよろしいでしょうか?」
「イルリア嬢……」

 私は少し安心しながら、教室の中に入っていった。
 放課後ということもあって、中には彼しかいない。これならミレリア嬢のことなども含めて、色々と話をすることができそうだ。

「ミレリア嬢との話し合いは、終わったのですか?」
「ええ、彼女はマグナード様に感謝していましたよ。ヴォルダン伯爵令息には、散々煮え湯を飲まされていたようですから」
「……なんというか、複雑ですね」

 ミレリア嬢からの感謝を伝えると、マグナード様は微妙な顔をしていた。
 彼は、感謝されていることについて反省している。だからこそ、素直に喜ぶことなどはできないのだろう。

「やはり、後悔しているのですか?」
「恥ずべきことをしたと自分では思っています。激情に身を任せて、暴力を振るうなんてことは、紳士の行動ではありませんからね……」
「……ミレリア嬢も、それにブライト殿下もそうだと思いますが、私はマグナード様の行動は非難されるようなものではないと思っています。紳士の行動ではないとは言いますが、あの二人がやっていたことは人間とは思えない所業なのですから」

 正直言って、私はかなりすっきりしていた。
 あのような所業を働いていたヴォルダン様の顎を砕いたくらいで、気に病む必要なんてあるはずがない。むしろ、罰としてはぬるいくらいだと思っている。
 ただ、当人として暴力を振るったことを許容できないのが、理解できないという訳でもない。それがきっと、この問題の難しい所なのだろう。

「……もちろん、あの二人に関しては裁かれる必要があるとは思っています。ヴォルダン伯爵令息には申し訳ないことをしたとは思っていますが、それで容赦や情けをかけるつもりはありません」
「それは……」

 マグナード様は、鋭い目をしていた。
 彼は、敵と認識した人には容赦しない。ヴォルダン伯爵令息やムドラス伯爵令息は、彼とブライト殿下の権力によって、潰されることになるのだろう。

「しかし、自省はします。それは必要なことであると思っています」
「そうですか……」

 結局の所、マグナード様の憂いは彼が自分で納得するまで解決しない。
 私やミレリア嬢の考えは伝えた訳ではあるし、今はそれでいいとしよう。
 これから私にできることは、彼と今まで通りに接することだ。そうやって日常を過ごして、彼の心を癒していくとしよう。
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