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10.教室に来て
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色々と波乱の入学式が終わり、私は教室に来ていた。今日の日程は、この後のホームルームで終わりだ。
『Magical stories』というゲームは、主人公であるメルティナが王立魔法学園に入学する所から始まる。つまり、あの入学式を最初に見せられることになるのだ。
ゲームであれを見た時は、色々と衝撃的だった。これが攻略対象なのかと、そう思ったのは鮮明に思い出せる。
もっとも、ゲームのキャラクターなのだから、それくらいキャラが濃いのは当然だろう。あの時の私はそう思っていた。
「ふう、やっと教室か……これでやっと落ち着けるな」
だが、実際に現実にあれを見るのでは、印象は少し違った。現実に改めて見ると、やっぱりドン引きするような入学式だったのだ。
普通に考えて、入学式であんな発言があったら大問題である。こちらの世界と、私がかつて暮らしていた世界の価値観が違うといっても、それは変わらないだろう。
まあ、二人は、公爵家の令息とこの世界きっての天才だ。その特別な地位故に、あれ程の発言をしてもそれ程問題ないのかもしれない。
「まったく、とんでもない入学式だったな……」
「ああ……生徒会長も新入生代表も、まさかあんなことを言うなんて……」
私は、バルクド様とリオーブ、さらにはファルーシャとも同じクラスである。これは、ゲームをプレイしていてわかっていたことだ。
「まあ、本人がそこにいる手前、あまり言いたいことではないんだが……」
「……そうだな」
さらにいえば、件のキャロムも同じクラスである。ディゾール様以外の攻略対象はここに揃っているのだ。
そして、もちろん、彼女もこのクラスにいる。攻略対象が揃っているのだから、主人公も当然いるのだ。
「あ、そういえば、アルフィアさんの隣の席は、例のメルティナさんですよね?」
「え? ああ、そうみたいですね……」
メルティナとアルフィアは、席が隣同士である。これもゲーム通りなのだが、窓際の一番後ろの席にメルティナ、その隣にアルフィアという席順なのだ。
そういう席順であるため、隣の席に虐めてくる人がいるというとても窮屈な環境で、メルティナは学園生活を送ることになる。心情的に、それはかなり苦しいものだっただろう。実際にプレイしている私も苦しかったのを覚えている。
もっとも、今の私は彼女を虐めるつもりはない。きっと彼女もそこまで苦しい生活は送らないだろう。
「平民で、色々と大変だと思いますから、できれば気にかけてあげてくださいね」
「え? ええ、まあ、そうですね……」
バルクド様の言葉に、私ははっきりと頷くことができなかった。あまり関わらないようにしようと思っていたからだ。
彼女とわざわざ関わる必要はない。自分が破滅する要因を作るようなことなど、したくはないのだ。
ただ、バルクド様の言っていることもわからない訳ではない。私もメルティナにはそれなりに思い入れもあるので、困っているなら助けてあげたいという気持ちはある。
「さて、そろそろ担任も来るでしょうし、席に着きましょうか」
「あ、はい。そうですね……」
結局の所、私はメルティナにどう接するかに割と迷っていた。かつてプレイしたゲームの主人公への思い入れ、自分の破滅の要因になるかもしれないという恐怖、その狭間で私は思い悩んでいるのだ。
『Magical stories』というゲームは、主人公であるメルティナが王立魔法学園に入学する所から始まる。つまり、あの入学式を最初に見せられることになるのだ。
ゲームであれを見た時は、色々と衝撃的だった。これが攻略対象なのかと、そう思ったのは鮮明に思い出せる。
もっとも、ゲームのキャラクターなのだから、それくらいキャラが濃いのは当然だろう。あの時の私はそう思っていた。
「ふう、やっと教室か……これでやっと落ち着けるな」
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普通に考えて、入学式であんな発言があったら大問題である。こちらの世界と、私がかつて暮らしていた世界の価値観が違うといっても、それは変わらないだろう。
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「あ、そういえば、アルフィアさんの隣の席は、例のメルティナさんですよね?」
「え? ああ、そうみたいですね……」
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そういう席順であるため、隣の席に虐めてくる人がいるというとても窮屈な環境で、メルティナは学園生活を送ることになる。心情的に、それはかなり苦しいものだっただろう。実際にプレイしている私も苦しかったのを覚えている。
もっとも、今の私は彼女を虐めるつもりはない。きっと彼女もそこまで苦しい生活は送らないだろう。
「平民で、色々と大変だと思いますから、できれば気にかけてあげてくださいね」
「え? ええ、まあ、そうですね……」
バルクド様の言葉に、私ははっきりと頷くことができなかった。あまり関わらないようにしようと思っていたからだ。
彼女とわざわざ関わる必要はない。自分が破滅する要因を作るようなことなど、したくはないのだ。
ただ、バルクド様の言っていることもわからない訳ではない。私もメルティナにはそれなりに思い入れもあるので、困っているなら助けてあげたいという気持ちはある。
「さて、そろそろ担任も来るでしょうし、席に着きましょうか」
「あ、はい。そうですね……」
結局の所、私はメルティナにどう接するかに割と迷っていた。かつてプレイしたゲームの主人公への思い入れ、自分の破滅の要因になるかもしれないという恐怖、その狭間で私は思い悩んでいるのだ。
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