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9.新入生代表は
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『以上をもって、歓迎の挨拶とさせてもらう』
物議をかもした挨拶を、ディゾール様はそう締めた。彼は何事もなかったかのように、壇上から下りていく。
会場は、すっかり彼のおかげで冷え切っている。正直言って、この後に話さなければならないというのは、可哀想だ。
そんな可哀想な人を、私は知っている。この後の場面も、ゲームにはあったのだ。
『つ、続きまして、新入生の挨拶です……新入生代表、キャロム・サンドライク、前へ……』
続いて壇上に上がるのは、新入生代表のキャロム・サンドライクである。彼のことも、私は良く知っていた。なぜなら、彼もゲームの攻略対象の一人だからだ。
「おい、あれ……」
「ああ……なんだ? あいつ?」
壇上に上がった人物を見て、会場は少しざわつき始めた。それは、当然だろう。その人物は、明らかに私達よりも年下だからだ。
キャロムは、特例として十三歳になる年にこの魔法学園に入学した。普通なら、それはあり得ないことである。だが、彼は特別だったのだ。
キャロムは、天才である。あの年で、私達以上の知能を備えている神童なのだ。
単純に勉強ができるというだけではない。彼は、この世界の偉人とされている人物が行ってきた魔法の開発ができるのだ。
つまり、キャロムは歴史に名を残すことができる天才ということである。そんな人物であるからこそ、魔法学園に早く入学させるというのが決まったのだ。
「俺達より、年下だよな……?」
「ああ、なんなんだろうな……?」
だが、ここにいる多くの人達は、キャロムのことなんて知らない。そのため、年下の人物が壇上に上がったこの状況に困惑するのは、当たり前のことだ。
ちなみに、新入生代表の挨拶は、入学試験の成績によって決まる。原則として、成績の第一位が代表になるのだ。
この試験に落ちると入学できないのだが、そうなると貴族としてはとんでもない恥になるので、基本的には落ちることはない試験である。しかし、それでも試験で一位になるのは難しい。当然のことながら、あそこに立つ名誉は計り知れないものなのだ。
『在校生の皆さん……いや、まあ、もういいか。こんなの』
そんな名誉ある場所に立ったキャロムは、まずそんなことを言った。
その様子に、会場はまたざわつき始める。当たり前のことだが、新入生代表の挨拶でこんなことを言うのはおかしい。こういう騒ぎになるのは、仕方ないことである。
『さっきの生徒会長の挨拶は、面白かったよね……でも、彼は間違っている』
キャロムは口の端を歪めながら、そんなことを言い出した。ディゾール様の意見が間違っていると、堂々と否定したのだ。
その発言に、一部の人達はまた騒ぎ始めた。その人達は、先程までディゾール様の言葉を否定していた人達だ。
恐らく、彼らは期待しているのだろう。キャロムが、生徒会長を痛烈に批判することを。
『だって、才能がない凡人が努力したって、無駄なんだから、そういう人達はこの三年間を遊ぼうかどうしようが関係ないもんね。どの道無駄だったら、遊んでもいいんじゃないかなって、僕は思うんだ』
しかし、キャロムはディゾール様と同じかそれ以上のとんでもないことを発言した。
才能がない凡人は何をしても無駄。その発言は、もしかしたら多くの人達にとって不快なものかもしれない。
『これを聞いて、僕を批判しようとしている人達は、まず僕に勝って欲しいんだよね……僕は、この年で新たな魔法を開発している。歴史上の多くの偉人達が成し遂げたことを、僕は成し遂げた。それが、君達にできるのかな? できないんだったら、僕の考えを否定しないで欲しいんだ。だって、君達は僕よりも才能がないんだから』
キャロムの発言は、高慢な天才のものだった。彼の言葉に、私達凡人は反論できない。それだけのことを、彼は成し遂げているからだ。
だが、それでも腹が立つのが人間というものである。ここにいる多くの人達が、キャロムに対して反感を持ったことだろう。
『さて、言いたいことも言ったし、新入生代表の挨拶はこれでいいかな? それじゃあ、入学式の続きをどうぞ』
言いたいことを言ってから、キャロムは壇上を去って行った。その後に残ったのは、すっかり冷え切った会場だけである。
物議をかもした挨拶を、ディゾール様はそう締めた。彼は何事もなかったかのように、壇上から下りていく。
会場は、すっかり彼のおかげで冷え切っている。正直言って、この後に話さなければならないというのは、可哀想だ。
そんな可哀想な人を、私は知っている。この後の場面も、ゲームにはあったのだ。
『つ、続きまして、新入生の挨拶です……新入生代表、キャロム・サンドライク、前へ……』
続いて壇上に上がるのは、新入生代表のキャロム・サンドライクである。彼のことも、私は良く知っていた。なぜなら、彼もゲームの攻略対象の一人だからだ。
「おい、あれ……」
「ああ……なんだ? あいつ?」
壇上に上がった人物を見て、会場は少しざわつき始めた。それは、当然だろう。その人物は、明らかに私達よりも年下だからだ。
キャロムは、特例として十三歳になる年にこの魔法学園に入学した。普通なら、それはあり得ないことである。だが、彼は特別だったのだ。
キャロムは、天才である。あの年で、私達以上の知能を備えている神童なのだ。
単純に勉強ができるというだけではない。彼は、この世界の偉人とされている人物が行ってきた魔法の開発ができるのだ。
つまり、キャロムは歴史に名を残すことができる天才ということである。そんな人物であるからこそ、魔法学園に早く入学させるというのが決まったのだ。
「俺達より、年下だよな……?」
「ああ、なんなんだろうな……?」
だが、ここにいる多くの人達は、キャロムのことなんて知らない。そのため、年下の人物が壇上に上がったこの状況に困惑するのは、当たり前のことだ。
ちなみに、新入生代表の挨拶は、入学試験の成績によって決まる。原則として、成績の第一位が代表になるのだ。
この試験に落ちると入学できないのだが、そうなると貴族としてはとんでもない恥になるので、基本的には落ちることはない試験である。しかし、それでも試験で一位になるのは難しい。当然のことながら、あそこに立つ名誉は計り知れないものなのだ。
『在校生の皆さん……いや、まあ、もういいか。こんなの』
そんな名誉ある場所に立ったキャロムは、まずそんなことを言った。
その様子に、会場はまたざわつき始める。当たり前のことだが、新入生代表の挨拶でこんなことを言うのはおかしい。こういう騒ぎになるのは、仕方ないことである。
『さっきの生徒会長の挨拶は、面白かったよね……でも、彼は間違っている』
キャロムは口の端を歪めながら、そんなことを言い出した。ディゾール様の意見が間違っていると、堂々と否定したのだ。
その発言に、一部の人達はまた騒ぎ始めた。その人達は、先程までディゾール様の言葉を否定していた人達だ。
恐らく、彼らは期待しているのだろう。キャロムが、生徒会長を痛烈に批判することを。
『だって、才能がない凡人が努力したって、無駄なんだから、そういう人達はこの三年間を遊ぼうかどうしようが関係ないもんね。どの道無駄だったら、遊んでもいいんじゃないかなって、僕は思うんだ』
しかし、キャロムはディゾール様と同じかそれ以上のとんでもないことを発言した。
才能がない凡人は何をしても無駄。その発言は、もしかしたら多くの人達にとって不快なものかもしれない。
『これを聞いて、僕を批判しようとしている人達は、まず僕に勝って欲しいんだよね……僕は、この年で新たな魔法を開発している。歴史上の多くの偉人達が成し遂げたことを、僕は成し遂げた。それが、君達にできるのかな? できないんだったら、僕の考えを否定しないで欲しいんだ。だって、君達は僕よりも才能がないんだから』
キャロムの発言は、高慢な天才のものだった。彼の言葉に、私達凡人は反論できない。それだけのことを、彼は成し遂げているからだ。
だが、それでも腹が立つのが人間というものである。ここにいる多くの人達が、キャロムに対して反感を持ったことだろう。
『さて、言いたいことも言ったし、新入生代表の挨拶はこれでいいかな? それじゃあ、入学式の続きをどうぞ』
言いたいことを言ってから、キャロムは壇上を去って行った。その後に残ったのは、すっかり冷え切った会場だけである。
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