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13.意外な質問
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しばらく睡眠を取ってから、私は食堂に向かうことにした。寮での食事は、基本的にはそこで取ることになっている。
恐らく、食堂での食事は息苦しいものになるだろう。この学園に通っている者達のほとんどは貴族だ。その目がある中での食事は、そんなに楽しくなさそうである。
いや、もしかして、そうではないのだろうか。息苦しい貴族の生活から解放されて、皆案外そういうことは気にしない空気になるかもしれない。
「……あら?」
「あっ……」
そこで私は、部屋から出てくるある人物に気づいた。メルティナが、自室から出てくる所に、丁度私が通りかかってしまったのだ。
私は、思わず足を止めてしまう。教室で話していて、ここでそのまま通り過ぎるのが変だと思ったからだ。
「こんにちは、メルティナさん……もうこんばんはかしら?」
「そうですね……こんばんは、アルフィア様。アルフィア様も、食堂に向かっているのですか?」
「……ええ。ということは、あなたも?」
「ええ、そういうことです」
この時間に部屋から出て来たので当然のことかもしれないが、メルティナも食堂に向かうようである。
「それなら、一緒に行きましょうか?」
「いいのですか?」
「ここで別れるのも、変な話でしょう? まあ、あなたが嫌というなら、それは仕方ないことだけれど」
「いえ、そんなことはありません。それでは、ご一緒させていただきます」
私達の目的地は同じ場所だ。ということは、ここで別れるのも変な話である。その考えから、私はメルティナを誘うことにした。
彼女とは、あまり関わり合いになりたくないと思っていた。だが、最早、それは不可能である。
彼女に話しかけられたことから、私は彼女とクラスメイトとして接さなければならなくなった。そうしなければ、変なのだ。
もちろん、彼女を徹底的に無視することはできる。しかし、それは虐めているのと変わらない。心情的にも、あまりしたくはないことだ。
「アルフィア様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あら? 何かしら?」
「……こういう質問は、あまり良くないことなのかもしれませんが、アルフィア様は平民に対する差別意識などというものは、ないのですか?」
「え?」
アルフィアの質問に、私は驚いた。まさか、彼女の方からそんな質問が飛んでくるなんて、思っていなかったからだ。
それは、私にとってとても重要なことである。高慢な貴族にならない。私がこの世界で生きるにあたって、ずっと意識していたことだからだ。
それに関する事柄を、彼女が聞いてくる。そのまるで私の状況をわかっているかのような質問に、私は少し困惑してしまった。
「差別意識ね……私は、そういうものは持っていないわ。身分の違いはあるけど、それは役割の違いだと認識しているもの」
「そうなのですね……」
「まあ、そういう意識を持つ貴族がいるのは、残念ながら確かなことなのよね……平民であろうと貴族であろうと、同じ人間であるというのに、どうして見下したり差別したりできるのか、私には理解できないわね」
とりあえず、私はメルティナに自身の考えを話しておいた。多少大袈裟に言っているが、それは私の素直な気持ちだ。
私からしてみれば、貴族と平民との差などよくわからない。それは、私がかつて別の世界で暮らしていた時に、そういうことが身近ではなかったことが、関係しているだろう。
その記憶があるからこそ、私はこの世界の価値観と少しずれている。だから、この世界の価値観があまり理解できないのだろう。
「……あなたは、素晴らしい方なのですね」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、私はそこまで褒められるような人間ではないのよ?」
「いえ、そんなことはありません。私は今確信しました。あなたが、素晴らしい人間であると……」
メルティナは、私のことを称賛してくれた。彼女にとっては、平民を見下さない私は、平民である彼女にとっては、そう思えるような人間なのだろう。
だが、私の価値観はいわばずるである。他の世界の記憶を持っているという特別な理由のある私が、この世界で暮らしている人々よりも優れていると手放しに賞賛できるかといったら、それはとても微妙なことであるはずだ。
恐らく、食堂での食事は息苦しいものになるだろう。この学園に通っている者達のほとんどは貴族だ。その目がある中での食事は、そんなに楽しくなさそうである。
いや、もしかして、そうではないのだろうか。息苦しい貴族の生活から解放されて、皆案外そういうことは気にしない空気になるかもしれない。
「……あら?」
「あっ……」
そこで私は、部屋から出てくるある人物に気づいた。メルティナが、自室から出てくる所に、丁度私が通りかかってしまったのだ。
私は、思わず足を止めてしまう。教室で話していて、ここでそのまま通り過ぎるのが変だと思ったからだ。
「こんにちは、メルティナさん……もうこんばんはかしら?」
「そうですね……こんばんは、アルフィア様。アルフィア様も、食堂に向かっているのですか?」
「……ええ。ということは、あなたも?」
「ええ、そういうことです」
この時間に部屋から出て来たので当然のことかもしれないが、メルティナも食堂に向かうようである。
「それなら、一緒に行きましょうか?」
「いいのですか?」
「ここで別れるのも、変な話でしょう? まあ、あなたが嫌というなら、それは仕方ないことだけれど」
「いえ、そんなことはありません。それでは、ご一緒させていただきます」
私達の目的地は同じ場所だ。ということは、ここで別れるのも変な話である。その考えから、私はメルティナを誘うことにした。
彼女とは、あまり関わり合いになりたくないと思っていた。だが、最早、それは不可能である。
彼女に話しかけられたことから、私は彼女とクラスメイトとして接さなければならなくなった。そうしなければ、変なのだ。
もちろん、彼女を徹底的に無視することはできる。しかし、それは虐めているのと変わらない。心情的にも、あまりしたくはないことだ。
「アルフィア様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あら? 何かしら?」
「……こういう質問は、あまり良くないことなのかもしれませんが、アルフィア様は平民に対する差別意識などというものは、ないのですか?」
「え?」
アルフィアの質問に、私は驚いた。まさか、彼女の方からそんな質問が飛んでくるなんて、思っていなかったからだ。
それは、私にとってとても重要なことである。高慢な貴族にならない。私がこの世界で生きるにあたって、ずっと意識していたことだからだ。
それに関する事柄を、彼女が聞いてくる。そのまるで私の状況をわかっているかのような質問に、私は少し困惑してしまった。
「差別意識ね……私は、そういうものは持っていないわ。身分の違いはあるけど、それは役割の違いだと認識しているもの」
「そうなのですね……」
「まあ、そういう意識を持つ貴族がいるのは、残念ながら確かなことなのよね……平民であろうと貴族であろうと、同じ人間であるというのに、どうして見下したり差別したりできるのか、私には理解できないわね」
とりあえず、私はメルティナに自身の考えを話しておいた。多少大袈裟に言っているが、それは私の素直な気持ちだ。
私からしてみれば、貴族と平民との差などよくわからない。それは、私がかつて別の世界で暮らしていた時に、そういうことが身近ではなかったことが、関係しているだろう。
その記憶があるからこそ、私はこの世界の価値観と少しずれている。だから、この世界の価値観があまり理解できないのだろう。
「……あなたは、素晴らしい方なのですね」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、私はそこまで褒められるような人間ではないのよ?」
「いえ、そんなことはありません。私は今確信しました。あなたが、素晴らしい人間であると……」
メルティナは、私のことを称賛してくれた。彼女にとっては、平民を見下さない私は、平民である彼女にとっては、そう思えるような人間なのだろう。
だが、私の価値観はいわばずるである。他の世界の記憶を持っているという特別な理由のある私が、この世界で暮らしている人々よりも優れていると手放しに賞賛できるかといったら、それはとても微妙なことであるはずだ。
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