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21.魔力の測定
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メルティナと協力関係になったが、それで私の生活が劇的に変わったかといわれれば、そうではない。
黒幕がそう簡単に尻尾を出すことはないだろう。そういう考えの元、私達はとりあえず普通に生活を送っている。
次にアルフィアの取り巻きだった令嬢達が動いた時、事態が動くことになるのは、恐らくそこからだ。
「さて、それでは、今日は魔法の実技を行います」
今、私達は体育館にいる。ここで、魔法の実技の授業を受けるのだ。
魔法というものは、私が以前暮らしていた世界にはなかったものである。しかし、こちらの世界では一般的なものだ。この魔法は、前の世界とこちらの世界の一番の違いといえるかもしれない。
「一応、魔法について簡単に振り返っておきましょうか。魔法というものは、人間の体に宿る魔力を操作して行使するものです。例えば、自身の魔力を球体として手の平に作り出す……これは、とても基本的な魔弾という魔法です」
目の前で、先生が魔法の一例を見せてくれた。それを見ても、誰も特に反応はしない。この世界では、当たり前のことだからだ。
もちろん、私も既に魔法は知っている。自分でも使えるし、私にとっても当たり前といえるものだ。
最初に魔法を使った時は、驚いたものである。どうして、自分がそんなことができるのか。訳がわからなかったことは、今でも覚えている。
というか、今でも魔力とかそういうものをどうして操作できるのかはわからない。それはこの世界では当たり前のことで、理由があることではないのかもしれないのだが。
「さて、今日は皆さんに魔力の測定を行ってもらいます。こちらの測定器で、魔力を計ってください。数に限りがありますから、四人一組で行ってください」
今日の授業は、魔力の測定である。最初は、生徒がどれくらいの魔力を持っているのかを把握するということだ。
とりあえず、私は辺りを見渡す。すると、メルティナと目が合った。彼女は、こちらにゆっくりと近づいて来る。恐らく、一緒に測定をしようということだろう。
「アルフィア様、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「アルフィアさん、メルティナさん、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「バルクド様、もちろん、いいですよ」
メルティナに続いて、バルクド様もやって来た。これで、三人。後一人揃えば、測定が始められる。
私達は、周囲を見渡した。多くの人達は、既に四人組を作っている。そんな中、一人で腕を組んで仁王立ちしている一人の少年が目に入ってきた。
それは、キャロムである。彼は、一人で何も言わずに立ち続けているのだ。
彼を誘うべきか、私は少し考える。実は、この後のことを考えると、彼を誘うのはあまり気が進まないことなのだ。
「バルクド様、キャロムを誘ってきますね……」
「……ええ、それがいいでしょう」
しかし、一人の彼を放っておくことはできそうにない。心情的にも、状況的にも、彼を誘うしかないなのだ。
という訳で、私はキャロムの元に向かう。近づいても、彼は特に何も言ってこない。
「……キャロム、一緒にどうかしら?」
「え? ああ……まあ、構わないけど?」
私が声をかけると、キャロムはゆっくりと頷いてくれた。その表情は、少し安心しているように見える。
三つ年下であることやその極端な言動から、キャロムはクラスの中でも少し浮いている。近寄りがたい人物だと思われているのだ。
自業自得なのかもしれないが、彼は孤独である。そして、恐らくそのことを寂しがっているだろう。本人は隠そうとしているが、それは先程の反応からも明らかだ。
彼も、中々難しい人間である。嬉しそうに私についてくる彼を見ながら、私はそんなことを思うのだった。
黒幕がそう簡単に尻尾を出すことはないだろう。そういう考えの元、私達はとりあえず普通に生活を送っている。
次にアルフィアの取り巻きだった令嬢達が動いた時、事態が動くことになるのは、恐らくそこからだ。
「さて、それでは、今日は魔法の実技を行います」
今、私達は体育館にいる。ここで、魔法の実技の授業を受けるのだ。
魔法というものは、私が以前暮らしていた世界にはなかったものである。しかし、こちらの世界では一般的なものだ。この魔法は、前の世界とこちらの世界の一番の違いといえるかもしれない。
「一応、魔法について簡単に振り返っておきましょうか。魔法というものは、人間の体に宿る魔力を操作して行使するものです。例えば、自身の魔力を球体として手の平に作り出す……これは、とても基本的な魔弾という魔法です」
目の前で、先生が魔法の一例を見せてくれた。それを見ても、誰も特に反応はしない。この世界では、当たり前のことだからだ。
もちろん、私も既に魔法は知っている。自分でも使えるし、私にとっても当たり前といえるものだ。
最初に魔法を使った時は、驚いたものである。どうして、自分がそんなことができるのか。訳がわからなかったことは、今でも覚えている。
というか、今でも魔力とかそういうものをどうして操作できるのかはわからない。それはこの世界では当たり前のことで、理由があることではないのかもしれないのだが。
「さて、今日は皆さんに魔力の測定を行ってもらいます。こちらの測定器で、魔力を計ってください。数に限りがありますから、四人一組で行ってください」
今日の授業は、魔力の測定である。最初は、生徒がどれくらいの魔力を持っているのかを把握するということだ。
とりあえず、私は辺りを見渡す。すると、メルティナと目が合った。彼女は、こちらにゆっくりと近づいて来る。恐らく、一緒に測定をしようということだろう。
「アルフィア様、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「アルフィアさん、メルティナさん、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「バルクド様、もちろん、いいですよ」
メルティナに続いて、バルクド様もやって来た。これで、三人。後一人揃えば、測定が始められる。
私達は、周囲を見渡した。多くの人達は、既に四人組を作っている。そんな中、一人で腕を組んで仁王立ちしている一人の少年が目に入ってきた。
それは、キャロムである。彼は、一人で何も言わずに立ち続けているのだ。
彼を誘うべきか、私は少し考える。実は、この後のことを考えると、彼を誘うのはあまり気が進まないことなのだ。
「バルクド様、キャロムを誘ってきますね……」
「……ええ、それがいいでしょう」
しかし、一人の彼を放っておくことはできそうにない。心情的にも、状況的にも、彼を誘うしかないなのだ。
という訳で、私はキャロムの元に向かう。近づいても、彼は特に何も言ってこない。
「……キャロム、一緒にどうかしら?」
「え? ああ……まあ、構わないけど?」
私が声をかけると、キャロムはゆっくりと頷いてくれた。その表情は、少し安心しているように見える。
三つ年下であることやその極端な言動から、キャロムはクラスの中でも少し浮いている。近寄りがたい人物だと思われているのだ。
自業自得なのかもしれないが、彼は孤独である。そして、恐らくそのことを寂しがっているだろう。本人は隠そうとしているが、それは先程の反応からも明らかだ。
彼も、中々難しい人間である。嬉しそうに私についてくる彼を見ながら、私はそんなことを思うのだった。
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