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29.不完全な安全
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「キャロム君、それは本当なのか?」
「ああ、本当だよ」
「だ、だが、ここでは、そういう魔法を使うのは難しいのではなかったか? 確か、この学園を守る結界は、生徒の魔法を抑制する働きもあったはずだ。教室や廊下では、魔法の行使はできないと聞いたことがあるぞ?」
「その通りだよ。でも、例外はあるんだ。膨大な魔力があれば、結界の効力なんて、それ程気にならないのさ」
ドルキンスの質問に答えながら、キャロムは自分の手に魔弾を作り出してみせた。
ドルキンスが言っている通り、この学園では魔法の行使は制限されている。魔法学園を覆っている特殊な結界が、それを許さないのだ。
だが、どうやら、キャロム程の魔力があれば、その制限も意味がないらしい。流石に、あらゆる人間のあらゆる魔法を制限するということは、できないようだ。
「難しいことだとは思うけど、普通の人でも結界は突破できるかもしれない。要は、結界を越える魔力があればいいということだからね。もしかしたら、それを悟られないために、学園側は魔法が使えないとしているのかな?」
「そうだったのか……ということは、誰かが悪意を持って、この廊下に魔法を仕掛けたというのか? 侵入者でもいるというのか?」
「どうだろうね……外部の人間を入らせないようにする結界については、僕にもよくわかっていないから、断定はできないけど、流石にその部分については、学園内で魔法を使うよりも難しいと思うんだよね。人の目もあるだろうし……」
貴族や王族が在籍するこの魔法学園は、とても強固な守りで固められている。結界や護衛の兵士などによって、王国でも屈指の守りを誇るここに、外部から人間が入ってくることはとても難しい。
それは、不可能という訳ではないだろう。だが、それよりももう一つの可能性の方が高い。
「おいおい、それならまさか、この学園の生徒が魔法を仕掛けたとでもいうのか?」
「そういうことなんじゃないかな」
「な、なんてことだ……」
この学園の生徒が、魔法を仕掛けた。そちらの可能性の方が高いのだ。
それなら、侵入する必要はない。ただ、この学校の結界で抑えられないくらいの魔法を使うだけだ。もし結界がキャロムの言う通りのものなら、この学園の生徒全員に、それが実行できるということになる。
「キャロム、実の所、私にはある覚えがあるの……クラスの令嬢、レフェイラ・マグリネッサ伯爵令嬢を知っているかしら?」
「ああ、確かにいたね、そんな人……」
「彼女は、その他の令嬢とともに、メルティナを虐めていたの……もしかしたら、彼女達が一線を越えてしまったのかもしれないわ」
「彼女を虐めていた人達が、どうして僕達を狙うのかな?」
「私が以前、彼女を助けたからよ。もしかしたら、邪魔しないように私を罠に嵌めようとしたのかもしれない」
「なるほど、動機として、あり得そうなことだね……まあ、それも可能性の一つだね」
私は、キャロムの考えに納得していた。なぜなら、これを実行しそうな犯人に心当たりがあったからだ。
メルティナを虐めていた令嬢達がこれを実行したと考えるのは、そこまでおかしなことではないだろう。
私を待っていそうなメルティナがいないことも、そう考えた要素の一つだ。あの令嬢達に彼女が連れて行かれたというなら、それはとてもしっくりくる。
「人数がいれば、魔力も増せるだろうし、もしかしたらそうなのかもしれないね……でも、まあ、犯人に関しては、今はそれ程重要なことではないから、それは後で考えることにしよう。それは僕達の仕事ではないかもしれないけど……」
「……そうね」
キャロムの言葉に、私はゆっくりと頷いた。確かに、今は犯人のことよりも、目の前の問題を片付けるべきだろう。
「ああ、本当だよ」
「だ、だが、ここでは、そういう魔法を使うのは難しいのではなかったか? 確か、この学園を守る結界は、生徒の魔法を抑制する働きもあったはずだ。教室や廊下では、魔法の行使はできないと聞いたことがあるぞ?」
「その通りだよ。でも、例外はあるんだ。膨大な魔力があれば、結界の効力なんて、それ程気にならないのさ」
ドルキンスの質問に答えながら、キャロムは自分の手に魔弾を作り出してみせた。
ドルキンスが言っている通り、この学園では魔法の行使は制限されている。魔法学園を覆っている特殊な結界が、それを許さないのだ。
だが、どうやら、キャロム程の魔力があれば、その制限も意味がないらしい。流石に、あらゆる人間のあらゆる魔法を制限するということは、できないようだ。
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「そうだったのか……ということは、誰かが悪意を持って、この廊下に魔法を仕掛けたというのか? 侵入者でもいるというのか?」
「どうだろうね……外部の人間を入らせないようにする結界については、僕にもよくわかっていないから、断定はできないけど、流石にその部分については、学園内で魔法を使うよりも難しいと思うんだよね。人の目もあるだろうし……」
貴族や王族が在籍するこの魔法学園は、とても強固な守りで固められている。結界や護衛の兵士などによって、王国でも屈指の守りを誇るここに、外部から人間が入ってくることはとても難しい。
それは、不可能という訳ではないだろう。だが、それよりももう一つの可能性の方が高い。
「おいおい、それならまさか、この学園の生徒が魔法を仕掛けたとでもいうのか?」
「そういうことなんじゃないかな」
「な、なんてことだ……」
この学園の生徒が、魔法を仕掛けた。そちらの可能性の方が高いのだ。
それなら、侵入する必要はない。ただ、この学校の結界で抑えられないくらいの魔法を使うだけだ。もし結界がキャロムの言う通りのものなら、この学園の生徒全員に、それが実行できるということになる。
「キャロム、実の所、私にはある覚えがあるの……クラスの令嬢、レフェイラ・マグリネッサ伯爵令嬢を知っているかしら?」
「ああ、確かにいたね、そんな人……」
「彼女は、その他の令嬢とともに、メルティナを虐めていたの……もしかしたら、彼女達が一線を越えてしまったのかもしれないわ」
「彼女を虐めていた人達が、どうして僕達を狙うのかな?」
「私が以前、彼女を助けたからよ。もしかしたら、邪魔しないように私を罠に嵌めようとしたのかもしれない」
「なるほど、動機として、あり得そうなことだね……まあ、それも可能性の一つだね」
私は、キャロムの考えに納得していた。なぜなら、これを実行しそうな犯人に心当たりがあったからだ。
メルティナを虐めていた令嬢達がこれを実行したと考えるのは、そこまでおかしなことではないだろう。
私を待っていそうなメルティナがいないことも、そう考えた要素の一つだ。あの令嬢達に彼女が連れて行かれたというなら、それはとてもしっくりくる。
「人数がいれば、魔力も増せるだろうし、もしかしたらそうなのかもしれないね……でも、まあ、犯人に関しては、今はそれ程重要なことではないから、それは後で考えることにしよう。それは僕達の仕事ではないかもしれないけど……」
「……そうね」
キャロムの言葉に、私はゆっくりと頷いた。確かに、今は犯人のことよりも、目の前の問題を片付けるべきだろう。
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