派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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30.迷宮の解明

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「でも、どうすればいいのかしら? 迷宮魔法……それを抜け出す方法はあるの?」
「魔法というものは、それを対策する魔法が開発されることがある。特に、戦いに関する魔法はそれが顕著だ。この迷宮魔法は、拠点などに侵入された時、侵入者を迷わせるために開発されたらしい。それを対策する魔法も、程なくして開発されたそうだ。つまり、対処方法はある」
「そうなの?」
「ああ、だけど、まずはこの迷宮魔法がどういうものなのかを分析する必要がある。迷宮魔法といっても、色々なものが開発されているからね」

 キャロムは、懐からペンを取り出した。彼は、それを前方に向かって投げる。
 少し転がって、ペンはその姿を消した。そして、私達の後方から転がって来る。

「迷宮魔法は、大まかに分けると、実際に壁や天井を動かすことと、空間を操作することの大まか二つに分けられる。今回の場合は、空間を操作する方だろうね」
「ええ、真っ直ぐな廊下で、行った道を戻っているのだから、そうでしょうね」
「……どうやら、この廊下は、この地点と……あの地点で繋がっているようだ。ここで手を伸ばすと……向こう側から出てくる」
「なんだか奇妙な光景ね……」

 キャロムが腕を廊下が繋がっている境目に伸ばすと、彼の腕だけが向こう側から出てきた。
 この廊下は、そこが繋がっているようである。視覚的にはどう考えても繋がっていないが、そうなっているのだ。

「空間を操る迷宮魔法も、さらに細かく分けることができる。一つは、既存の空間を切り取って繋げる方法……でも、これはかなり難しい。この状況で、その魔法が行使されたと考えるのは、いくらなんでも現実的ではないだろう」
「そうなの?」
「ああ、その場合はかなりの魔力と時間を要する。じっくりと時間をかけて、魔法を仕掛けなければならない。自分の拠点に仕掛けるなら、それでも問題はないだろう。ただ、それを人目がある学園内で行うのは、至難の業だろうね」
「なるほど……確かに、そんなことをしていたら、誰かに見つかって不審がられるでしょうね」

 キャロムは、すらすらと魔法の知識を出していた。それは、彼の幼少期からの勉強の賜物なのだろう。
 悲しい経緯はあるが、その知識は間違いなく優れたものだ。今の私達にとって、それはとても頼りになる。

「だから、これは空間を作り出す魔法だと考えるべきだろう」
「空間を作り出す? おいおい、キャロム君。それじゃあ、ここは魔法学園ではないということなのか?」
「そういうことになるかな」
「そんなことができるのか? かなり高度な魔法のような気がするんだが……」
「既存の空間を操作するよりは、空間を新たに作り出す方が簡単だ。難しいことには変わらないけど、きちんと勉強して何度か練習すれば、できなくはないと思う」

 ドルキンスの質問に答えながら、キャロムはゆっくりと窓を開けた。すると、そこには廊下がある。外の景色が映っていたはずなのに、こちらと同じような廊下が広がっているのだ。

「今回の場合は、校舎の廊下と同じような景色の廊下を二つ用意したんだろうね。多分、こっちの教室のドアは……うん、向こうの廊下の教師の戸と繋がっているみたいだ」

 キャロムは、窓に続いて教室の戸を開けた。すると、あちら側の教室の戸も開いた。
 その先には、後ろを確認する私やキャロムがいる。まるで、鏡を合わせたような光景が広がっているのだ。
「あまり、見ていて気持ちいものではないね」

 そう言って、キャロムは教室の戸を閉めた。
 どうやら、彼の推測は的を射ているもののようだ。この空間は、私達を閉じ込めるために作られた簡易的な迷宮なのである。
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