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72.気まずい空気
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ディゾール様の働きかけによって、事件は教員達から国の中枢にまで知れ渡ることになった。
ただ、事件がかなり重大なものであったため、箝口令が敷かれている。このことを関係者以外に口外してはならないのだ。
「まあ、元々関係者以外に話すつもりはなかったけれど……」
事件の影響で、学園には少し変化が起こっている。色々と学園内のセキュリティ等が見直されることになったのだ。
それにより、現在体育館は使えなくなっている。改修工事のために、立ち入り禁止となっているのだ。
改修工事というのは、セキュリティ面の見直しである。今回の事件のようなことを防ぐために、議論がなされているのだ。
「そのことに関しては、私には関係がないことね……」
体育館のことは、教員やもっと偉い人達が話し合うべきことである。そのため、それに関して私が考える必要はない。
今、私が考えなければならないのは、アルフィアの魂のことだろう。
「さてと……」
私は今、空き教室に向かっている。現在、そこでメルティナやキャロムが魔法の練習をしているのだ。
練習している魔法は、当然魂結合魔法である。アルフィアの魂を元に戻すために、二人は頑張ってくれているのだ。
「私にできることといったら、これくらいしかないのよね……」
私は、二人に差し入れを持っていくことにした。それくらいしか、できることが思いつかなかったからだ。
魂結合魔法は、とても高度な魔法である。あの二人やディゾール様くらいしか、修得できる見込みがないのだ。
だから、私は練習している人を支えることしかできない。情けないことではあるが、彼女達に頼るしかないのだ。
「……アルフィアよ、入ってもいいかしら?」
「あ、はい……」
色々と考えている内に、私は空き教室まで辿り着いていた。
私の言葉に対して、返ってきたのはメルティナの声だ。その声は、なんだか少し暗い気がする。
どうしてそうなっているのかは、なんとなくわかっている。私がどうするのかを話してから、彼女はそんな態度なのだ。
「失礼するわね……二人とも、調子はどう?」
「あ、えっと……悪くはないと思います」
「あ、うん……そんな所かな」
暗い態度なのは、メルティナだけではなかった。キャロムも、同じような態度である。
まだ本人の口から聞いた訳ではないが、彼も私が何を考えているかはわかっているのだろう。
今までの態度から、それはなんとなく察していた。あまり気にしないようにはしていたのだが。
「差し入れを持ってきたの。もしよかったら、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、アルフィアさん」
私は、ここに来たことを少し後悔していた。こんな空気になるくらいなら、来なければ良かったのではないか。そう思ったのだ。
ただ、事件がかなり重大なものであったため、箝口令が敷かれている。このことを関係者以外に口外してはならないのだ。
「まあ、元々関係者以外に話すつもりはなかったけれど……」
事件の影響で、学園には少し変化が起こっている。色々と学園内のセキュリティ等が見直されることになったのだ。
それにより、現在体育館は使えなくなっている。改修工事のために、立ち入り禁止となっているのだ。
改修工事というのは、セキュリティ面の見直しである。今回の事件のようなことを防ぐために、議論がなされているのだ。
「そのことに関しては、私には関係がないことね……」
体育館のことは、教員やもっと偉い人達が話し合うべきことである。そのため、それに関して私が考える必要はない。
今、私が考えなければならないのは、アルフィアの魂のことだろう。
「さてと……」
私は今、空き教室に向かっている。現在、そこでメルティナやキャロムが魔法の練習をしているのだ。
練習している魔法は、当然魂結合魔法である。アルフィアの魂を元に戻すために、二人は頑張ってくれているのだ。
「私にできることといったら、これくらいしかないのよね……」
私は、二人に差し入れを持っていくことにした。それくらいしか、できることが思いつかなかったからだ。
魂結合魔法は、とても高度な魔法である。あの二人やディゾール様くらいしか、修得できる見込みがないのだ。
だから、私は練習している人を支えることしかできない。情けないことではあるが、彼女達に頼るしかないのだ。
「……アルフィアよ、入ってもいいかしら?」
「あ、はい……」
色々と考えている内に、私は空き教室まで辿り着いていた。
私の言葉に対して、返ってきたのはメルティナの声だ。その声は、なんだか少し暗い気がする。
どうしてそうなっているのかは、なんとなくわかっている。私がどうするのかを話してから、彼女はそんな態度なのだ。
「失礼するわね……二人とも、調子はどう?」
「あ、えっと……悪くはないと思います」
「あ、うん……そんな所かな」
暗い態度なのは、メルティナだけではなかった。キャロムも、同じような態度である。
まだ本人の口から聞いた訳ではないが、彼も私が何を考えているかはわかっているのだろう。
今までの態度から、それはなんとなく察していた。あまり気にしないようにはしていたのだが。
「差し入れを持ってきたの。もしよかったら、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、アルフィアさん」
私は、ここに来たことを少し後悔していた。こんな空気になるくらいなら、来なければ良かったのではないか。そう思ったのだ。
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