派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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92.兄弟の思い

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「それで、今度は三人でどうしたのだ?」

 私とドルキンス、そしてキャロムの三人は生徒会室にやって来ていた。
 度々来るのは失礼かと思ったが、早めに伝えておいた方がいいだろう。そう思って、本を借りてからここに来たのである。

「ディゾール様、実は……あ、いえ、ここはドルキンスから言ってもらった方がいいかな?」
「ああ、そうだね。ドルキンス、事情の説明をよろしく頼むよ」
「うっ……」

 私は事情を説明しようと思ってやめた。ここは、ドルキンスが説明するべきだと思ったからだ。
 彼のディゾール様へのコンプレックスを克服するためにも、そうした方がいいだろう。緊張しているようだが、ここは頑張って欲しい所である。

「兄上……シズカ嬢から聞いたんだ。兄上が魔法の指導をすると」
「ああ、確かにそうだが……」
「俺にも、指導をして欲しいんだ。魔法の指導を……」
「なっ……」

 ドルキンスの言葉に、ディゾール様は表情を変えた。驚くような表情になったのである。
 それは、今まで見たことがないような表情だ。彼が、ここまで動揺するのも珍しいことである。

「僕も、ドルキンスと同じさ。あなたの魔法の腕を見込んで、指導してもらいたいんだ」
「……」
「生徒会長、聞いているかい?」
「あ、ああ、すまない……」

 キャロムの言葉に対して、ディゾール様は反応しなかった。いや、できなかったというべきだろう。
 それ程までに、ドルキンスの言葉に動揺しているようだ。ここまで驚くということに、私としては驚きである。
 ドルキンスは、ディゾール様のことをひどく気にしていると思っていたが、それは逆も同じなのかもしれない。ディゾール様の動揺を見て、私はそんなことを思った。

「指導を望むのなら、もちろん手助けしよう。俺は努力する者への助力は惜しまないつもりだ……だが、ドルキンス、俺はお前に一つ聞かなければならない」
「な、なんだ、兄上?」
「お前は、本当に真面目に指導を受けるつもりはあるのか? 他の者に流されたという訳ではなく、お前に確固たる意志があるのか? それを問いたい」

 ディゾール様は、真剣な目でドルキンスを睨みつけていた。その視線に、ドルキンスは少し怯む。
 しかし、彼はその直後に表情を変える。図書室で見たのと同じ決意に満ちた表情になったのだ。

「兄上、確かに俺はシズカ嬢の決意に看過されて、兄上からの指導を受けようと思った。だが、俺は真剣だ。メルティナ嬢やキャロム君、それに兄上のようになりたいと、力を貸せるようになりたいとそう思っているんだ」

 ドルキンスは、はっきりとそう言った。怖いとさえ思えるディゾール様の眼光をものともせず、そう言い切ったのである。
 その言葉に対して、ディゾール様は笑う。それは、とても嬉しそうな笑みだ。

「ならば、よかろう。手加減はしないぞ?」
「ああ、よろしく頼む」

 ディゾール様の言葉に、ドルキンスはゆっくりと頷いた。その表情は、とても晴れやかなものだった。
 こうして、私達三人は、ディゾール様から指導を受けることになったのである。
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