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128.決まっていた敗北
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『あ、あり得ない……こんなのは、まやかしだ!』
「まやかしなのではありません。もしもそう思うなら、自分の目で改めて夫の魂を見てみればいいではありませんか?」
『そ、それは……』
「見られないというなら、それが答えではありませんか?」
『ち、違う……』
ネルメアは、明らかに動揺していた。
それは、当然のことだ。彼女は今、目をそらしていた真実と向きっている。それは、とても苦しいことだろう。
「……あなたは、自分の魔力によって夫の魂を補っていた。その魔力によって生まれた夫というのは、あなたの理想、もしくはあなたの思い出の夫です。そんな夫が、あなたを止めるように言っている。それが、どういうことか、わかりませんか?」
『うぐっ……』
「あなたは、本当はわかっているんです。夫がこのようなことを望んでいないと。その思いが魔力に籠って先程のような夫が生まれるのではありませんか?」
そんなネルメアを、メルティナは淡々と追い詰めていった。
それは、彼女の優しさでもあるだろう。今のネルメアを倒すことは容易であるはずだ。それなのにそうしないのは、ネルメアが全てに決着をつけられるようにと思っているからだろう。
「ネルメア、もうやめましょう。これ以上やっても、もう意味などはないはずです」
『くっ……ううっ』
メルティナの言葉に、ネルメアが入っているゴーレムから力が抜けた。それは、きっと彼女が敗北を認めたからだろう。
『オルディネス……』
そのまま、ネルメアの魂が入っているゴーレムはオルディネスの魂が入ったゴーレムの元に向かう。
そのゆっくりとした足取りからは、最早敵意は感じられない。ただ、愛する夫の傍に行きたいとそう思う彼女の思いだけが、伝わってくる。
『……メルティナ、どうやら私は初めから負けていたようね』
「……」
『いいえ、負けていたなんて表現は正しくないのかしら……私は、ただ間違えていた。そういうことなのね』
ネルメアの周りには、結界が張り巡らされていた。恐らく、それは、メルティナの結界だろう。二体のゴーレムを包み込むような結界の中で、魂だけになった夫婦は寄り添っている。
そのゴーレムが、ゆっくりと崩れていく。それは、ネルメアが完全に諦めたからだろう。彼女は、自ら消えようとしているのだ。
魂というものは、あるべき場所に帰るという性質がある。それは、私自身が証明済みだ。
だから、後は彼女の思い一つで旅立つことができるだろう。あるべき場所へと。
「あれは……」
「うん、ネルメアとオルディネスだよ……」
ネルメアはオルディネスの魂を抱きかかえながら、ゆっくりと天へと昇っていく。
私達は、ただそれを見守っている。これで、戦いは終わったのだ。
「まやかしなのではありません。もしもそう思うなら、自分の目で改めて夫の魂を見てみればいいではありませんか?」
『そ、それは……』
「見られないというなら、それが答えではありませんか?」
『ち、違う……』
ネルメアは、明らかに動揺していた。
それは、当然のことだ。彼女は今、目をそらしていた真実と向きっている。それは、とても苦しいことだろう。
「……あなたは、自分の魔力によって夫の魂を補っていた。その魔力によって生まれた夫というのは、あなたの理想、もしくはあなたの思い出の夫です。そんな夫が、あなたを止めるように言っている。それが、どういうことか、わかりませんか?」
『うぐっ……』
「あなたは、本当はわかっているんです。夫がこのようなことを望んでいないと。その思いが魔力に籠って先程のような夫が生まれるのではありませんか?」
そんなネルメアを、メルティナは淡々と追い詰めていった。
それは、彼女の優しさでもあるだろう。今のネルメアを倒すことは容易であるはずだ。それなのにそうしないのは、ネルメアが全てに決着をつけられるようにと思っているからだろう。
「ネルメア、もうやめましょう。これ以上やっても、もう意味などはないはずです」
『くっ……ううっ』
メルティナの言葉に、ネルメアが入っているゴーレムから力が抜けた。それは、きっと彼女が敗北を認めたからだろう。
『オルディネス……』
そのまま、ネルメアの魂が入っているゴーレムはオルディネスの魂が入ったゴーレムの元に向かう。
そのゆっくりとした足取りからは、最早敵意は感じられない。ただ、愛する夫の傍に行きたいとそう思う彼女の思いだけが、伝わってくる。
『……メルティナ、どうやら私は初めから負けていたようね』
「……」
『いいえ、負けていたなんて表現は正しくないのかしら……私は、ただ間違えていた。そういうことなのね』
ネルメアの周りには、結界が張り巡らされていた。恐らく、それは、メルティナの結界だろう。二体のゴーレムを包み込むような結界の中で、魂だけになった夫婦は寄り添っている。
そのゴーレムが、ゆっくりと崩れていく。それは、ネルメアが完全に諦めたからだろう。彼女は、自ら消えようとしているのだ。
魂というものは、あるべき場所に帰るという性質がある。それは、私自身が証明済みだ。
だから、後は彼女の思い一つで旅立つことができるだろう。あるべき場所へと。
「あれは……」
「うん、ネルメアとオルディネスだよ……」
ネルメアはオルディネスの魂を抱きかかえながら、ゆっくりと天へと昇っていく。
私達は、ただそれを見守っている。これで、戦いは終わったのだ。
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