派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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129.戦いの終わり

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 天に昇っていくネルメアとオルディネスを、密かに見守っていた者がいた。
 それは、ネルメア自身である。彼女は、自身の大半が籠った魂の行く末を、忌々しそうに見つめていた。

「軟弱な……あの程度で折れるなんて」

 ネルメアは、念のために自身のバックアップを残していた。夫の魂と自身の魂を、ほんの少量ではあるが切り離しておいたのだ。
 魂だけの状態なら、いくら年月が経とうとも問題はない。計画は、何度でもやり直すことができるのだ。

「……まさか、自分自身すらも否定するとはな」
「……え?」

 そんなネルメアの耳に届いたのは、聞き覚えがある声だった。彼女は、ゆっくりとその方向を振り返る。

「よう……」
「リ、リオーブ?」

 そこに立っていたのは、リオーブだった。彼は、冷たい瞳でネルメアを見下ろしている。
 その冷たい視線に、ネルメアは焦っていた。最低限度に切り分けられた彼女の今の魂には、リオーブに対抗できる程の力すら、残っていなかったからだ。

「……お前には、随分と多くの人々が苦しめられてきた。姉貴やファルーシャ、それにメルティナを始めとする学園の皆、さらにはシャザームという魔法使いもか」
「な、何を……」
「そろそろ、本当に決着をつけるべきだろう。お前自身ですら、それを望んでいる。だというのに、お前はいつまでも諦めが悪いようだな?」
「く、くっ……」

 リオーブの手に、魔力が集中しているのがネルメアにはわかった。
 彼女は、必死に逃げようとした。しかし、その体は動かない。リオーブが、いつの間にか魔力で拘束していたようだ。

「ま、待つのよ、リオーブ! 私も反省しているの! どうか許して!」
「……本体は憑き物が落ちたような顔をしていたが、お前からは全然そんな感じがしないな。こんなにも違うなんて、俺も驚きだ」
「や、やめて!」
「さらばだ……」
「ぎ、ぎゃああああ!」

 リオーブの魔力が、一気に解き放たれて、ネルメアの体を消滅させていく。
 そんな中、リオーブは思っていた。これで、やっと全てが終わったのだと。
 姉の魂を奪われて、婚約者を操られて、ネルメアと彼との因縁は根深いものだった。
 そんな彼女は、今完全に滅びた。そのことに、リオーブは開放感のようなものを覚えるのだった。

「これで、終わったんだ……長きに渡る因縁が」

 リオーブは、ネルメアの方を振り返らずに歩いていく。全ての戦いが終わったことを確信して、彼は笑みを浮かべるのだった。
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