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第4話 悪かったこと
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私は、メルスード家の屋敷に帰って来てから、お父様に事情を説明した。
全てを聞き終わった後、お父様は難しい表情になった。やはり、この婚約破棄は彼を悩ませるものだったようだ。
「なんてことをしてくれたんだ……まったく」
「申し訳ありません。でも、もう彼の悪行には耐えられませんでした」
「……別に、その点でお前を責めている訳ではない。私が言いたいのは、相談してもらいたかったということだ」
「え?」
お父様の言葉に、私は少し驚いた。
どうやら、私が思っていることとお父様が思っていることの間には、何かずれがあるようである。
「お前が、スルーガ様のことで悩んでいるなら、私に相談してくれればよかったのだ。そうすれば、国王様と話し合い、改めて婚約のことを考えられた」
「……そうなのですか?」
「ああ、だから、お前には一人で判断せずに、私に言ってもらいたかった」
「……すみませんでした」
私は、色々と勘違いをしていたようだ。
家のためにその身を犠牲にする必要などなかったのである。私がはっきりと嫌だと示せば、お父様は対応してくれたのだ。
私は、もっと彼を信頼するべきだった。そうすれば、もっと上手くことが運んでいただろう。私も、しっかりと反省しなければならないようだ。
「まあ、起こってしまったことは仕方ない。これからのことは、色々と考えるとしよう」
「はい……よろしくお願いします」
「うむ、お前はゆっくりと休むがいい」
「はい……失礼します」
後のことは、お父様が色々と考えてくれるらしい。
私にできることは、待っていることだけだ。
本当に、お父様には申し訳ないことをしてしまった。これからは、きちんと話を通すことにしよう。
「あら?」
「む……」
そんなことを思いながらお父様の執務室から出ると、見知った顔が私を出迎えてくれた。
私の弟であるイルルドだ。
私には、三つ子の弟がいる。その一番上が彼である。
イルルドは、とても真面目な性格だ。真っ直ぐで剣の腕も優れた私の自慢の弟である。
「イルルド? どうかしたの? お父様に何か用?」
「いえ、姉上が父上と話していると聞いて、何か問題でもあったのかと思ったのです」
「ああ……まあ、問題はあったけど、もう大丈夫よ。とりあえず、話はついたから」
「そうでしたか……」
どうやら、イルルドは何かあったと思って、ここに来てくれたようだ。
彼の性格上、色々と心配だったのだろう。
「何があったのかは、歩きながら話しましょうか。私も、早く部屋に戻りたいし」
「わかりました。聞かせてください」
そんな彼には、事情を説明するべきである。
いずれ、お父様辺りが話してくれるとは思うのだが、いい機会なので私から伝えておくことにしよう。
こうして、私はイルルドと話しながら部屋に戻ることにするのだった。
全てを聞き終わった後、お父様は難しい表情になった。やはり、この婚約破棄は彼を悩ませるものだったようだ。
「なんてことをしてくれたんだ……まったく」
「申し訳ありません。でも、もう彼の悪行には耐えられませんでした」
「……別に、その点でお前を責めている訳ではない。私が言いたいのは、相談してもらいたかったということだ」
「え?」
お父様の言葉に、私は少し驚いた。
どうやら、私が思っていることとお父様が思っていることの間には、何かずれがあるようである。
「お前が、スルーガ様のことで悩んでいるなら、私に相談してくれればよかったのだ。そうすれば、国王様と話し合い、改めて婚約のことを考えられた」
「……そうなのですか?」
「ああ、だから、お前には一人で判断せずに、私に言ってもらいたかった」
「……すみませんでした」
私は、色々と勘違いをしていたようだ。
家のためにその身を犠牲にする必要などなかったのである。私がはっきりと嫌だと示せば、お父様は対応してくれたのだ。
私は、もっと彼を信頼するべきだった。そうすれば、もっと上手くことが運んでいただろう。私も、しっかりと反省しなければならないようだ。
「まあ、起こってしまったことは仕方ない。これからのことは、色々と考えるとしよう」
「はい……よろしくお願いします」
「うむ、お前はゆっくりと休むがいい」
「はい……失礼します」
後のことは、お父様が色々と考えてくれるらしい。
私にできることは、待っていることだけだ。
本当に、お父様には申し訳ないことをしてしまった。これからは、きちんと話を通すことにしよう。
「あら?」
「む……」
そんなことを思いながらお父様の執務室から出ると、見知った顔が私を出迎えてくれた。
私の弟であるイルルドだ。
私には、三つ子の弟がいる。その一番上が彼である。
イルルドは、とても真面目な性格だ。真っ直ぐで剣の腕も優れた私の自慢の弟である。
「イルルド? どうかしたの? お父様に何か用?」
「いえ、姉上が父上と話していると聞いて、何か問題でもあったのかと思ったのです」
「ああ……まあ、問題はあったけど、もう大丈夫よ。とりあえず、話はついたから」
「そうでしたか……」
どうやら、イルルドは何かあったと思って、ここに来てくれたようだ。
彼の性格上、色々と心配だったのだろう。
「何があったのかは、歩きながら話しましょうか。私も、早く部屋に戻りたいし」
「わかりました。聞かせてください」
そんな彼には、事情を説明するべきである。
いずれ、お父様辺りが話してくれるとは思うのだが、いい機会なので私から伝えておくことにしよう。
こうして、私はイルルドと話しながら部屋に戻ることにするのだった。
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