そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。

木山楽斗

文字の大きさ
17 / 24

第17話 当主として相応しいのは

しおりを挟む
 私は、メルスード家の次期当主を決めることになった。
 その当主の妻に、私はなるのだ。当主と妻になる人物、私はそれを決めなければならないのである。

「難しい問題よね……」

 そのことを考えると、頭が痛くなってきた。
 弟の誰かを夫にするというだけで、難しいことなのに、そこに当主の問題まで付随するというのは、かなり大変なことである。

「まあ、普通に考えると……イルルドになるのかしら?」

 当主にするということを考えた時、一番に思い浮かんできたのはイルルドの顔だった。
 イルルドは、真面目で誠実な子である。貴族としての自覚もしっかりとあるし、最も当主に相応しいのは彼なのではないだろうか。
 他の二人が駄目という訳ではない。ただ、当主としての素質でいえば、イルルドが一番だと思うのである。

「まあ、個人的に支えてあげたいと思うのは、二人の方だけど……」

 ウルーグやエルディンは、支えたいと思えるような二人だ。
 私は少し世話好きな側面があるので、二人の妻になることも悪くないことのように思える。
 だが、やはりイルルドこそ当主に相応しい。だから、彼の妻になるということでいいのではないだろうか。

「さて、そうと決まれば、お父様や三人に知らせに行かないとね。こういうことは、早い方がいいし……」

 この結論は、覆せないと思ったので、私はお父様達に知らせることにした。
 こういうことは、早い方がいい。いつまでも悩んでいても結論は出ないだろうし、最初の直感で決めるべきだろう。
 という訳で、私はお父様の部屋に向かっている。まずはお父様に話して、その流れで三人に話せばいいだろう。

「あら?」

 そんな私の目に、ある光景が目に入ってきた。庭に、ウルーグを見つけたのだ。
 見つけたのは、ウルーグだけではない。彼の腕の中には、子猫がいる。庭に迷い込んできた子猫を、彼が保護したのだろう。
 なんというか、微笑ましい光景だ。こういう風に優しいのが、ウルーグの本質なのである。

「どうするかね……親を探すか? でも……」

 ウルーグは、周囲を見渡していた。
 子猫であるため、親猫とはぐれたと考えて探しているのだろう。
 広い庭であるため、親猫を探すのは大変そうだ。いや、庭に親猫がいるとも限らない。探すのは、かなり大変だろう。

「まあ、頑張るとするかね」
「ニャー……」
「なんだよ。気楽そうに鳴きやがって……」

 ウルーグは笑いながら、庭を歩き始めた。
 彼は、本気でこの中庭を探すつもりのようだ。
 そんな光景を見ていると、私も考えを改めてしまう。ウルーグが当主になっても、問題ないのではないだろうかと。

「私……単純なのかしら?」

 この光景を見て、簡単に考えを変える私は単純なのかもしれない。
 だが、そう思ってしまった。だから、仕方ない。もう少し、考えることにしよう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。

coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。 彼の本当の相手は…別に居るのだ。 もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。

完璧すぎる幼馴染に惚れ、私の元を去って行く婚約者ですが…何も知らず愚かですね─。

coco
恋愛
婚約者から、突然別れを告げられた私。 彼は、完璧すぎる私の幼馴染に惚れたのだと言う。 そして私の元から去って行く彼ですが…何も知らず、愚かですね─。

ブスなお前とは口を利かないと婚約者が言うので、彼の愛する妹の秘密は教えませんでした。

coco
恋愛
ブスなお前とは口を利かないと、婚約者に宣言された私。 分かりました、あなたの言う通りにします。 なので、あなたの愛する妹の秘密は一切教えませんよ─。

年上令嬢の三歳差は致命傷になりかねない...婚約者が侍女と駆け落ちしまして。

恋せよ恋
恋愛
婚約者が、侍女と駆け落ちした。 知らせを受けた瞬間、胸の奥がひやりと冷えたが—— 涙は出なかった。 十八歳のアナベル伯爵令嬢は、静かにティーカップを置いた。 元々愛情などなかった婚約だ。 裏切られた悔しさより、ただ呆れが勝っていた。 だが、新たに結ばれた婚約は......。 彼の名はオーランド。元婚約者アルバートの弟で、 学院一の美形と噂される少年だった。 三歳年下の彼に胸の奥がふわりと揺れる。 その後、駆け落ちしたはずのアルバートが戻ってきて言い放った。 「やり直したいんだ。……アナベル、俺を許してくれ」 自分の都合で裏切り、勝手に戻ってくる男。 そして、誰より一途で誠実に愛を告げる年下の弟君。 アナベルの答えは決まっていた。 わたしの婚約者は——あなたよ。 “おばさん”と笑われても構わない。 この恋は、誰にも譲らない。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!

私の婚約者と姉が密会中に消えました…裏切者は、このまま居なくなってくれて構いません。

coco
恋愛
私の婚約者と姉は、私を裏切り今日も密会して居る。 でも、ついにその罰を受ける日がやって来たようです…。

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

もうあなた達を愛する心はありません

ぱんだ
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。 差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。 理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。 セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。

処理中です...