6 / 73
6.友から見た彼
しおりを挟む
『さて、俺の自己紹介はこんなものでいいだろう。今度は、こっちから質問してもいいか?』
「あ、はい。どうぞ」
『あ、お嬢ちゃん、俺にそんな堅苦しくなる必要はないぞ? 貴族だとか、そういうしがらみなんて、俺にはないからな』
「えっと……それじゃあ、そうさせてもらう、ね?」
『おうよ』
ラフードに促されて、私はその口調を変えることになった。
こんな風に話すのは、あまり慣れていない。そのため、少々ぎこちなくなってしまう。
私には、友達もいないし、家族もあんな風だ。気軽に話す機会なんて、今までまったくなかったのである。
『お嬢ちゃんは、フレイグの婚約者……というか、お嫁さんということでいいのか?』
「そうだね……うん。私は、フレイグ様と結婚するためにこっちに呼ばれたんだ」
『あいつが結婚か……まあ、貴族だから当然なのかもしれないが、あんまり想像できることではないなぁ……』
ラフードは、何かを思い返すように天井を見つめていた。恐らく、フレイグ様との思い出を振り返っているのだろう。
友人が結婚するということに対して、彼もまだあまり実感は湧いていないのかもしれない。特に、フレイグ様はあんな感じだから、よりそう思うのだろうか。
『おっと、勘違いしてもらったら困るけど、あいつは別に悪い奴じゃないんだぜ? まあ、多少不愛想だし、口は悪いし、俺の扱いは雑だったけど、本当は優しい奴なんだ』
「そ、そうなんだ……」
ラフードは、慌てたようにフレイグ様のことをフォローした。しかし、これはフォローなのだろうか。
不愛想で、口が悪くて、扱いが雑。それはまったく褒めているように思えない。
だが、それを語っている彼はとても楽しそうだ。彼にとって、フレイグ様は本当に大切な友人なのだろう。それがその表情から伝わってくる。
『さっきのだって、そうなんだ。あいつが一人で行動するのは……他の誰かにも傷ついてほしくないからなんだよ』
「え?」
そこで、私は思いもよらないことを言われて面を食らった。
先程の会話、私が余計なことを聞いてしまった会話も、ラフードはしっかりと聞いていたようだ。
『もちろん、言っていることの半分は本当なんだとは思うぜ。あいつは、滅茶苦茶に強い。下手な奴なら、足手まといになるくらいには……』
「……その強さは、私も目の当たりにした。でも……」
『ああ、お嬢ちゃんが言いたいことはわかっている。どれだけ強くても、一人は危険だよな。せめて、俺がいれば違うんだが……』
ラフードは、少し困ったような顔をしていた。
もしかしたら、彼がこうなる前、二人はコンビで活動していたのかもしれない。その言葉と表情からは、そんなことが読み取れる。
それに、今のラフードがフレイグ様にそれ程干渉できないのもなんとなくわかった。それができるなら、こんな風に悩んだりはしないはずだからだ。
『あいつはさ、なんでも一人で背負い込もうとするんだよ。周りの人を傷つけるくらいなら、その方がいいってな。そして、質の悪いことに、それでほとんどのことを解決できてしまうんだ』
「それだけ、フレイグ様は強いんだね……」
『ああ……そんなあいつの姿を見ていたらさ、周りの奴もそれでいいと思ってしまう。だから、あいつはずっと一人で行動しているのさ』
ラフードの説明を聞いて、私はあの時のフレイグ様の表情が、どういう感情からきたものかを少し理解した。
恐らく、彼はその真意を話すのが恥ずかしくて、どう答えていいものか困っていたのだろう。
ラフードの話を総合すると、彼がそういう人間であることは想像できる。彼は多分、不器用な人間なのだ。
「あ、はい。どうぞ」
『あ、お嬢ちゃん、俺にそんな堅苦しくなる必要はないぞ? 貴族だとか、そういうしがらみなんて、俺にはないからな』
「えっと……それじゃあ、そうさせてもらう、ね?」
『おうよ』
ラフードに促されて、私はその口調を変えることになった。
こんな風に話すのは、あまり慣れていない。そのため、少々ぎこちなくなってしまう。
私には、友達もいないし、家族もあんな風だ。気軽に話す機会なんて、今までまったくなかったのである。
『お嬢ちゃんは、フレイグの婚約者……というか、お嫁さんということでいいのか?』
「そうだね……うん。私は、フレイグ様と結婚するためにこっちに呼ばれたんだ」
『あいつが結婚か……まあ、貴族だから当然なのかもしれないが、あんまり想像できることではないなぁ……』
ラフードは、何かを思い返すように天井を見つめていた。恐らく、フレイグ様との思い出を振り返っているのだろう。
友人が結婚するということに対して、彼もまだあまり実感は湧いていないのかもしれない。特に、フレイグ様はあんな感じだから、よりそう思うのだろうか。
『おっと、勘違いしてもらったら困るけど、あいつは別に悪い奴じゃないんだぜ? まあ、多少不愛想だし、口は悪いし、俺の扱いは雑だったけど、本当は優しい奴なんだ』
「そ、そうなんだ……」
ラフードは、慌てたようにフレイグ様のことをフォローした。しかし、これはフォローなのだろうか。
不愛想で、口が悪くて、扱いが雑。それはまったく褒めているように思えない。
だが、それを語っている彼はとても楽しそうだ。彼にとって、フレイグ様は本当に大切な友人なのだろう。それがその表情から伝わってくる。
『さっきのだって、そうなんだ。あいつが一人で行動するのは……他の誰かにも傷ついてほしくないからなんだよ』
「え?」
そこで、私は思いもよらないことを言われて面を食らった。
先程の会話、私が余計なことを聞いてしまった会話も、ラフードはしっかりと聞いていたようだ。
『もちろん、言っていることの半分は本当なんだとは思うぜ。あいつは、滅茶苦茶に強い。下手な奴なら、足手まといになるくらいには……』
「……その強さは、私も目の当たりにした。でも……」
『ああ、お嬢ちゃんが言いたいことはわかっている。どれだけ強くても、一人は危険だよな。せめて、俺がいれば違うんだが……』
ラフードは、少し困ったような顔をしていた。
もしかしたら、彼がこうなる前、二人はコンビで活動していたのかもしれない。その言葉と表情からは、そんなことが読み取れる。
それに、今のラフードがフレイグ様にそれ程干渉できないのもなんとなくわかった。それができるなら、こんな風に悩んだりはしないはずだからだ。
『あいつはさ、なんでも一人で背負い込もうとするんだよ。周りの人を傷つけるくらいなら、その方がいいってな。そして、質の悪いことに、それでほとんどのことを解決できてしまうんだ』
「それだけ、フレイグ様は強いんだね……」
『ああ……そんなあいつの姿を見ていたらさ、周りの奴もそれでいいと思ってしまう。だから、あいつはずっと一人で行動しているのさ』
ラフードの説明を聞いて、私はあの時のフレイグ様の表情が、どういう感情からきたものかを少し理解した。
恐らく、彼はその真意を話すのが恥ずかしくて、どう答えていいものか困っていたのだろう。
ラフードの話を総合すると、彼がそういう人間であることは想像できる。彼は多分、不器用な人間なのだ。
30
あなたにおすすめの小説
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。
長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様!
しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが?
だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど!
義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて……
もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。
「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。
しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。
ねえ、どうして? 前妻さんに何があったの?
そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!?
恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。
私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。
*他サイトにも公開しています
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい
藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。
現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。
魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。
「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」
なんですってー!?
魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。
※全12万字くらいの作品です。
※誤字脱字報告ありがとうございます!
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる