継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗

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23.友との戦い

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「魔族は撤退するにあたって、ラフードは魔族達の世界……魔界に帰ることになったんだ」
「どうしてですか? こちらの世界で生きていく方が、彼にとっては良かったのではないでしょうか?」
「こちらの世界では、魔族に対する風当たりは強い。あいつが生きていくには、少々辛い環境だった……」
「……そうですよね。考えてみれば、それは当たり前のことでした」

 ラフードは、戦いが終わって魔界という魔族の世界に帰ったようだ。
 それは、仕方ないことだったのだろう。人間の世界で、彼が生きていくのは難しい。魔族に襲われた人々の反感を買うからだ。
 だが、彼にとって魔界に帰ることもいいことはいえないだろう。魔族にとっても、彼は裏切り者なのだから。

「いや、お前の言うこともわからない訳ではない。あいつも、悩んだ末の選択だったからな……幸いにも、向こうの世界にはあいつと同じように侵攻に反対していた者達もいた。そんな奴らとともに平和な魔族の世界を作っていく。あいつは、そう言い残して、俺の元を去っていたんだ」
「……そこから一体、何があったんですか?」
「……大打撃を受けた魔族達は、それでもまだ人間界への侵攻を諦めていなかった。それをラフードは抑えようと尽力していた。だが、それでも無理だったんだ。魔族達が、再び人間の世界へと攻めてこようとしていたんだ」
「そんな……」

 魔族達は、もう引き返せない所まで来てしまっていたのだろう。
 人間界を支配するか、滅びるか。そんな両極端の道しか目に入らなくなっていたのかもしれない。
 しかし、先の戦いで既に大打撃を受けた魔族達が、人間の世界に侵攻しても結果は目に見えている。敗北は必至だろう。

「ラフードは、それを止めようとしていた。もうこれ以上、血が流れて欲しくない。そう言っていたな……」
「……それで、彼はどうしたんですか?」
「あいつは……王子として、敢えてそいつらの先頭に立ったんだ」
「え?」

 フレイグ様の言葉に、私は驚いた。止めようとしているのに、敢えて先頭に立つ。その行動の意図が、よくわからなかったからだ。

「魔界の王族というものは、非常に強い力を持っているらしい。他の魔族よりも比べ物にならない程に大きな力を持っているんだ。あいつもそれは例外ではなかった。あいつは、その力によって戦いを止めることにしたんだ」
「でも、魔族達を先導したんですよね?」
「あいつは考えたんだ。圧倒的な力を持つ自分が、正面から戦って人間に敗北すれば、魔族達を止めることができると」
「それは……」
「その相手として、あいつは俺を選んだ……戦いを本当に終わらせるために、俺とあいつは死闘を繰り広げることになったんだ」

 フレイグ様は、苦しそうにそう呟いていた。
 親友同士が、全ての戦いを終わらせるために繰り広げる戦い。それは、どれ程辛いものだったのだろうか。それはきっと、私には想像できない程に、悲痛なものだったのだろう。
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