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24.忘れないために

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「あの時の俺は、あいつの意図も知らずに戦っていた。何か意図があることはわかっていた。だが、それでも魔族達を先導するあいつを止めなければならなかった。今思えば、あいつは俺が手加減などしないように、何も言わなかったのだろうな」
「……もしかして、ラフードはわざとフレイグ様に負けたんですか?」
「……そうかもしれない。今となっては、わからないことだが、あいつは本気ではなかったような気がする」

 親友の戦いで、本気になれるかどうかは微妙な所だ。もし事実を知らされていれば、フレイグ様はその剣を振るうことを躊躇ったかもしれない。
 だが、それでは駄目だったのだろう。ラフードとしては、自分の力を見せつけた上で、フレイグ様に敗北しなければならない。血気盛んな魔族達を抑えるためには、そうせざるを得なかったのだ。

「俺は、あいつを自らの剣で切り裂いた。その結果、魔族達は人間界への侵攻を諦めた。ラフードという王子は、奴らにとっては希望だった。その希望が打ち砕かれた結果、奴らは戦意を喪失したんだ」
「……ラフードの意図通りになったという訳ですね」
「ああ、そこで俺はあいつの意図を初めて知ったんだ。あいつの最期を見届ける中で、俺はやっと全てを教えてもらえた……」

 フレイグ様とラフードの間には、何か特別なものがある気がしていた。
 今の話を聞いて、それがなんとなくわかった。二人の絆は、積み上げてきた数々の戦いによるものなのだろう。
 背中を預けて戦い、死闘を繰り広げた仲でもある。そして、フレイグ様にとっては命を奪った相手だ。そんな相手を特別に思うのは、当然のことである。

「この墓は、そんなあいつの墓なんだ。俺の一番の友……この手で散らせた大切な存在を忘れないためにも、俺はこの墓にいつも参っている」
「そういうことだったんですね……」
「あの時、あいつを切ったことは正しいことだったはずだ。だが、俺はずっと思っている……もっと違う方法があったんじゃないかとな」

 フレイグ様は、とても悲しそうにしていた。
 それは、ラフードの意図に気づけなかった後悔なのだろう。
 だが、それで自分を責めるのは間違っている。何も話さないラフードの意図を全て理解するなんて、不可能なのだから。

「……フレイグ様、どうか自分を責めないでください」
「わかっている。だが……」
「ラフードは、きっとあなたにそんな顔をして欲しいと思っていないはずです。だって、彼は……」

 私は、ふとラフードの方を見た。話している最中、彼はこちらにやって来ていたのである。
 その表情は暗い。それはきっと、フレイグ様が自分を責めているからだろう。
 二人がこんな表情をするなんて、間違っている。私は、そう思っていた。
 だから、私は言葉を探す。フレイグ様の心に届く言葉を、必死になって考えているのだ。
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