妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。

木山楽斗

文字の大きさ
25 / 26

25.今の二人は

「……お前達は勝手だな」
「うん?」
「……どなたですか?」
「俺が何者であるかなど、それ程重要なことではない。そんなことよりも重要なのは、お前達のことだ」

 ノルード様は、イルルグ様とウルーナ嬢に対して少し荒々しい口調で言葉をかけていた。
 その口調からは、彼の怒りが伝わってくる。それは私としては、嬉しいことだ。この場において、味方がいてくれることの心強さは計り知れないものである。

「お前達は恥知らずだ。身から出た錆をラナーシャ嬢に押し付けて、自らの非を省みないその様は無様であるとしか言いようがない」
「な、なんだと?」
「あなた、何様のつもりですか? いきなり口を挟んで、意味のわからないことを言って!」

 イルルグ様とウルーナ嬢は、ノルード様の素性にまったく気付いていないようだった。
 身なりを見れば、身分くらいはわかるはずだろう。それなのにどうしてそこまで強気に出られるのかは、正直よくわからない。

 いやもしかしたら、二人は既にそういったことを冷静に考えられない状態なのだろうか。よく見てみると目も据わっているような気がするし、既に限界ぎりぎりなのかもしれない。
 もっともそれは、私にとっては関係がないことである。今の二人は、私にとっては無礼な客でしかない。私の立場からすると、二人に対して同情する気持ちも湧いてこない訳だし。

「俺が何者であるかなど、どうでもいいことだと言っているだろう。問題は、お前達のことだ。これ以上騒ぎ立てるというなら、こちらにも考えがある」
「な、何を……!」

 ノルード様の言葉に対して、イルルグ様は言い返そうとした。
 しかし彼は言葉を紡ぐことはなかった。それはノルード様が手を上げて、憲兵が現れたからだろう。
 今の二人は、リヴァーテ伯爵家の屋敷の前で騒ぐ暴徒の類だ。事情を話せば、あるいは話さなくても憲兵は拘束してくれるだろう。

「ウルーナ! 逃げるぞ!」
「え、ええ……!」

 それを悟ったのか、イルルグ様とウルーナ嬢は一目散に逃げ出した。
 流石の彼らも、そのことがわからない程に落ちぶれてはいなかったということだろうか。
 しかし、彼らに行くあてなどはないかもしれない。私を頼ってきたくらいであるし、そもそも行ける範囲に限界がある。もしかしたらあのまま、本当に路頭に迷うかもしれない。

 とはいえ、結局の所それは私には関係がないことだ。
 あの二人の自業自得でしかない。私は別に聖人という訳ではないため、散々リヴァーテ伯爵家を侮辱した彼に対して、同情する気持ちなどはないのである。
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

わざわざ証拠まで用意してくれたみたいなのですが、それ、私じゃないですよね?

ここあ
恋愛
「ヴァレリアン!この場をもって、宣言しようではないか!俺はお前と婚約破棄をさせていただく!」 ダンスパーティの途中、伯爵令嬢の私・ヴァレリアンは、侯爵家のオランジェレス様に婚約破棄を言い渡されてしまった。 一体どういう理由でなのかしらね? あるいは、きちんと証拠もお揃いなのかしら。 そう思っていたヴァレリアンだが…。 ※誤字脱字等あるかもしれません! ※設定はゆるふわです。 ※題名やサブタイトルの言葉がそのまま出てくるとは限りません。 ※現代の文明のようなものが混じっていますが、ファンタジーの物語なのでご了承ください。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました

er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから

甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。 であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。 だが、 「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」  婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。  そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。    気がつけば、セリアは全てを失っていた。  今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。  さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。  失意のどん底に陥ることになる。  ただ、そんな時だった。  セリアの目の前に、かつての親友が現れた。    大国シュリナの雄。  ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。  彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!