妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗

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10.焦る妹

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「ふ、ふざけないでください。王家の監視なんて……な、何故そのようなことを」
「真っ当な貴族であるならば、何も問題はないはずですよ? まあ、レゼリオン伯爵家は少なくとも属する令嬢の一人を過労で倒れさせるまで使い潰していた訳ですから、その辺りについては改善していただかなければなりませんが」
「お、お姉様のことは……監視する程のことではないでしょう」

 クロード殿下が淡々と言葉を発する中で、リオーラは私に視線を向けてきた。
 それは憎しみと、わずかに懇願が含まれているような視線だ。彼女としては、私にクロード殿下を説得させたいのだろう。
 しかし私が、それに応えるはずもない。最早私は、レゼリオン伯爵家の支配から外れている。

「リオーラ嬢、あなたはラナシア嬢に対して無理難題をけしかけてきた。彼女から色々と話は伺っていますよ。なんとも非道な話だ」
「そ、それは……」
「大方、ラナシア嬢が苦しむ姿を楽しんでいたのでしょう。今話しただけでもわかった。あなたはそういう人間だと。支配者を気取っていい気になって、今まで楽しかったですか?」
「あなた、何様のつもりでっ……!」

 リオーラは、クロード殿下に対して怒りを露わにした。
 彼の煽るような言葉に対して、流石に言い返したくなったのだろう。
 だが彼女は、すぐにその勢いを潜める。それは相手が、第二王子であるということを思い出したからだろう。

「理解したようですね。僕は第二王子だ。あなたが逆らえる人間ではない……これがあなたが、今までラナシア嬢にしてきたことですよ」
「なっ……!」
「……ですが、ちっとも楽しくありませんね。これ以上あなたと話しても、得られるものは何もありません」

 クロード殿下は、ゆっくりとため息をついた後に、目を丸めて固まっているリオーラの横を通り過ぎた。
 彼にとって、例え相手がリオーラのような人間であっても、押さえつけることは楽しいことではないということだろう。

 私は、クロード殿下についていく。リオーラがそれを引き止めてくるかと思ったが、そうはならなかった。
 どうやら彼女は、呆然としているようだ。クロード殿下から言われたことが、そこまで刺さったということだろうか。それは少々、意外である。

「違う、私は……違う、私は……」

 すれ違う際、リオーラがうわ言のように何かを呟いているのが聞こえてきた。
 それが何を意味しているのかはわからない。ただ彼女はもう、以前までのように横暴な振る舞いは、できないような気がする。
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