妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗

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19.信頼されて

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 私とクロード殿下は、ソーナ嬢が使っていた部屋の中にいた。
 そこは使用人の用の部屋なので、そこまで広い部屋ではない。しかしその中には、彼女がこれまで集めた秘密に関する文書などが置かれている。

「……私などが、このような場にいても良いものなのでしょうか?」
「ラナシア嬢は信頼できる方ですから、問題はありませんよ」

 文書の処分は、適切に行わなければならない。そう考えたクロード殿下は、自らと私で焼却することを選んだ。
 当然のことながら、中身は確認しない。ソーナ嬢の部屋にある者は、例え彼女の個人的な事柄に関する文書でも燃やし尽くすつもりだ。

 その大役に自分が抜擢されたことには、正直少し気が重い。
 ただそれは、クロード殿下の信頼の賜物だと思うことにする。なんだかんだ言って、彼とも付き合いが長くなってきたものだ。

「よくこれ程までに集めたものですね……ソーナ嬢はなんとも狡猾だ」
「……彼女はこれから、どうなるのでしょうか?」
「厳正な処罰が下されるでしょう。まずは彼女が利用してきた令嬢達も突き止めなければなりません。その者達には情状酌量の余地がありますから、寛大な措置もあり得ます。しかし首謀者であるソーナ嬢はそうもいきません」
「……なるほど」

 ソーナ嬢の未来は、明るいものではなかった。
 彼女は秘密裏に閉じ込められて、そこで今まで自身がそうしてきたように、秘密を吐かされることになるのだ。

 その手段というものは、必ずしも人道的なものではないかもしれない。ソーナ嬢はわかっていなかったようだが、王国は時に冷酷だ。
 そして彼女の末路は、ほぼ決まっているといえる。それは残酷なことではあるが、仕方ないことだ。ソーナ嬢は国家に反逆したも同然なのだから。

「セレーラ嬢など、利用された方々が不憫なものですね……」
「ええ、王国側としては、断固とした態度を貫かねばならない所が心苦しいものです」
「それは仕方ないことですよ。クロード殿下は、どうか割り切ってください」
「はい。そうするつもりです」

 私の言葉に、クロード殿下は苦笑いを浮かべていた。
 彼にとって、人を裁くということは楽しいものではない。そのことに心を痛める彼も、不憫だといえる。
 しかしそれでも、王子として彼はやるべきことをした。そんなクロード殿下のことを、私は尊敬している。

「今回の件について、ラナシア嬢にはお礼を述べるべきですね。ありがとうございました。お陰で王城にすくう闇を一つ葬り去ることができました」
「いえ、私は何もしていません。ただお知らせしただけです」
「それでも勇気がいることだったと、僕は思います。ラナシア嬢は、どこまでも強い方ですね」
「……その強さを教えてくださったのは、クロード殿下ですけれど」

 クロード殿下は、私を評価してくれている。
 ただ今回の私の立ち回りは、彼がかつて教えてくれたものだ。

 レゼリオン伯爵家の問題を、私はずっと抱えこんでいた。そのせいで随分と、問題を長引かせてしまったものである。
 結局の所、私は問題を先送りにしていた。それは両親などにも、いえることかもしれない。
 ともあれこれで、ソーナ嬢は排除することができた。これで王城の使用人達の風通しも、少しは良くなったのではないだろうか。
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