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25.伯爵家のために
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「……お前には感謝しなければならないな。私はお前にとって、良い父親ではなかった。しかしお前はなんとも立派に成長していた」
「感謝などは求めていません。私はただ、レゼリオン伯爵家を守りたいというだけです」
私はクロード殿下とともに、お父様と対峙していた。
レゼリオン伯爵家に残る。その私の結論に、お父様は気まずそうな顔をしている。
「……本当に、私達がレゼリオン伯爵家から出て行かなくても良いのか?」
「そのようなことをしていただいても、私の心は晴れません。第一、今この状況でレゼリオン伯爵がいなくなったら、どうなりますか? レゼリオン伯爵家所か、領地の民も含めて終わりです」
「……お前の言う通りだな」
私は、両親や妹がレゼリオン伯爵家から出て行くことを止めることにした。
それはなんとも、無駄なことだからだ。私はけじめとして出て行くことを選んだが、今そんなことをしてもレゼリオン伯爵家が弱るだけである。これからのことを考えれば、得策ではない。
「教えていただかなければならないことが山ほどあります。当主としての仕事が私一人でもできるように指導してください」
「それは……」
「それが終わったら、お母様とリオーラとともに別荘で暮らしていただきます。二人には先んじて別荘に移住してもらいますから、色々と手続きをお願い致します」
「なるほど、よくわかった」
私はとりあえず、お母様とリオーラを別荘で暮らさせることにした。
それはともに暮らすのは気まずいからということもあるが、単純にリオーラに休息が必要だと思ったからだ。
彼女は最早、人前などに出る必要もない。そういうことならこの屋敷よりも別荘の方が、心身ともに休められると思うのだ。
ただ一人で行かせる訳にもいかない。だからお母様を同行させるのだ。
その休息によってリオーラが元に戻った場合どうするかなどは、今は考えないことにする。その時はその時で、改めて決断すれば良いことだ。
何れはお父様にも、その別荘で暮らしてもらうつもりである。
三人と距離を置けるのが私にとって望ましいということは、別に変っていない。だが今は、それを実現するためには段階を踏む必要があると判断した。
「……それから、私の婚約についてなども改めて取り決めていただかなければなりません。その辺りについては、どうなっていましたか?」
「話はいくつかあったが……今はもう無理だな。お前は出て行ったということになっていたからな」
「そうですよね……」
レゼリオン伯爵家を存続させるためには、婿を迎え入れる必要がある。
ただ、それに関しては難しい問題だ。私が出て行く前にあった婚約の話は、もう期待できないだろう。新たに話を取りまとめるしかない。
「……そのことですが、一つ提案があります」
「え?」
「クロード殿下?」
そこでクロード殿下が、ゆっくりと手を上げた。
どうやら彼は、この件に関しても何かあるようだ。この際だから、彼に頼ることにしよう。ここでつまらない意地を張っても仕方ない。
「ラナシア嬢、僕と婚約していただけませんか?」
「……え?」
クロード殿下の言葉に、私は変な声を出してしまった。それが予想外の言葉だったからだ。
彼からの婚約の申し出、それに私は固まるのだった。
「感謝などは求めていません。私はただ、レゼリオン伯爵家を守りたいというだけです」
私はクロード殿下とともに、お父様と対峙していた。
レゼリオン伯爵家に残る。その私の結論に、お父様は気まずそうな顔をしている。
「……本当に、私達がレゼリオン伯爵家から出て行かなくても良いのか?」
「そのようなことをしていただいても、私の心は晴れません。第一、今この状況でレゼリオン伯爵がいなくなったら、どうなりますか? レゼリオン伯爵家所か、領地の民も含めて終わりです」
「……お前の言う通りだな」
私は、両親や妹がレゼリオン伯爵家から出て行くことを止めることにした。
それはなんとも、無駄なことだからだ。私はけじめとして出て行くことを選んだが、今そんなことをしてもレゼリオン伯爵家が弱るだけである。これからのことを考えれば、得策ではない。
「教えていただかなければならないことが山ほどあります。当主としての仕事が私一人でもできるように指導してください」
「それは……」
「それが終わったら、お母様とリオーラとともに別荘で暮らしていただきます。二人には先んじて別荘に移住してもらいますから、色々と手続きをお願い致します」
「なるほど、よくわかった」
私はとりあえず、お母様とリオーラを別荘で暮らさせることにした。
それはともに暮らすのは気まずいからということもあるが、単純にリオーラに休息が必要だと思ったからだ。
彼女は最早、人前などに出る必要もない。そういうことならこの屋敷よりも別荘の方が、心身ともに休められると思うのだ。
ただ一人で行かせる訳にもいかない。だからお母様を同行させるのだ。
その休息によってリオーラが元に戻った場合どうするかなどは、今は考えないことにする。その時はその時で、改めて決断すれば良いことだ。
何れはお父様にも、その別荘で暮らしてもらうつもりである。
三人と距離を置けるのが私にとって望ましいということは、別に変っていない。だが今は、それを実現するためには段階を踏む必要があると判断した。
「……それから、私の婚約についてなども改めて取り決めていただかなければなりません。その辺りについては、どうなっていましたか?」
「話はいくつかあったが……今はもう無理だな。お前は出て行ったということになっていたからな」
「そうですよね……」
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ただ、それに関しては難しい問題だ。私が出て行く前にあった婚約の話は、もう期待できないだろう。新たに話を取りまとめるしかない。
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どうやら彼は、この件に関しても何かあるようだ。この際だから、彼に頼ることにしよう。ここでつまらない意地を張っても仕方ない。
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「……え?」
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彼からの婚約の申し出、それに私は固まるのだった。
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