妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
25 / 28

25.伯爵家のために

しおりを挟む
「……お前には感謝しなければならないな。私はお前にとって、良い父親ではなかった。しかしお前はなんとも立派に成長していた」
「感謝などは求めていません。私はただ、レゼリオン伯爵家を守りたいというだけです」

 私はクロード殿下とともに、お父様と対峙していた。
 レゼリオン伯爵家に残る。その私の結論に、お父様は気まずそうな顔をしている。

「……本当に、私達がレゼリオン伯爵家から出て行かなくても良いのか?」
「そのようなことをしていただいても、私の心は晴れません。第一、今この状況でレゼリオン伯爵がいなくなったら、どうなりますか? レゼリオン伯爵家所か、領地の民も含めて終わりです」
「……お前の言う通りだな」

 私は、両親や妹がレゼリオン伯爵家から出て行くことを止めることにした。
 それはなんとも、無駄なことだからだ。私はけじめとして出て行くことを選んだが、今そんなことをしてもレゼリオン伯爵家が弱るだけである。これからのことを考えれば、得策ではない。

「教えていただかなければならないことが山ほどあります。当主としての仕事が私一人でもできるように指導してください」
「それは……」
「それが終わったら、お母様とリオーラとともに別荘で暮らしていただきます。二人には先んじて別荘に移住してもらいますから、色々と手続きをお願い致します」
「なるほど、よくわかった」

 私はとりあえず、お母様とリオーラを別荘で暮らさせることにした。
 それはともに暮らすのは気まずいからということもあるが、単純にリオーラに休息が必要だと思ったからだ。

 彼女は最早、人前などに出る必要もない。そういうことならこの屋敷よりも別荘の方が、心身ともに休められると思うのだ。
 ただ一人で行かせる訳にもいかない。だからお母様を同行させるのだ。
 その休息によってリオーラが元に戻った場合どうするかなどは、今は考えないことにする。その時はその時で、改めて決断すれば良いことだ。

 何れはお父様にも、その別荘で暮らしてもらうつもりである。
 三人と距離を置けるのが私にとって望ましいということは、別に変っていない。だが今は、それを実現するためには段階を踏む必要があると判断した。

「……それから、私の婚約についてなども改めて取り決めていただかなければなりません。その辺りについては、どうなっていましたか?」
「話はいくつかあったが……今はもう無理だな。お前は出て行ったということになっていたからな」
「そうですよね……」

 レゼリオン伯爵家を存続させるためには、婿を迎え入れる必要がある。
 ただ、それに関しては難しい問題だ。私が出て行く前にあった婚約の話は、もう期待できないだろう。新たに話を取りまとめるしかない。

「……そのことですが、一つ提案があります」
「え?」
「クロード殿下?」

 そこでクロード殿下が、ゆっくりと手を上げた。
 どうやら彼は、この件に関しても何かあるようだ。この際だから、彼に頼ることにしよう。ここでつまらない意地を張っても仕方ない。

「ラナシア嬢、僕と婚約していただけませんか?」
「……え?」

 クロード殿下の言葉に、私は変な声を出してしまった。それが予想外の言葉だったからだ。
 彼からの婚約の申し出、それに私は固まるのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う

鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの! お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ  お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。  とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。  この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。

妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。 だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。 しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです

hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?

かのん
恋愛
 わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!  私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。  妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?  ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。  全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

処理中です...