おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗

文字の大きさ
14 / 18

14.誤解を解くために

しおりを挟む
「……俺は君と割り切った関係性を望んだ。故にもちろん、君が誰かと恋をしたとしても、それを咎めようとは思っていない」
「あっ……」

 私が自らの失念を後悔していると、アルフェルグ様がゆっくりと口を開いていた。
 その発言に、私は思わず固まっていた。ただ、それもミスだ。私は無理やりにでも、アルフェルグ様の発言を止めるべきだった。

「しかし、もしも誰かと関係を持っていたとしても、子供のことだけはきちんとしておいてもらいたい。そのことは俺にとって、決して譲れないことだ」
「アルフェルグ様、違うんです!」
「む……」

 私は、これまで出したことがない程の声量でアルフェルグ様の発言を止めていた。
 こんな夜分に大きな声を出すのは、使用人達に迷惑である。ただ、これくらい強く否定しないと今の彼にはわかってもらえないと思った。使用人達には、後で謝るとしよう。

「その、違うんです。私は、浮気なんてしていません。信じてもらえないかもしれませんが……」
「……」

 少し勢いを失った私の顔を、アルフェルグ様は真っ直ぐに見てきた。
 状況的に、私の潔白を証明するのは中々に難しいことかもしれない。ただ、それでもなんとか言葉を発していくしかないだろう。そうでなければ、私と彼との関係が険悪なものになってしまい兼ねない。

「私が会っていたのは、エルドスという人で、彼女は女性なんです。その心が、という意味なのですが……」
「ほう……?」
「本当に友人なんです。私は彼女のことを女性であると認識していますし……その辺りにつていの考慮が、足りていなかったことは反省していますが」
「ふむ……」

 アルフェルグ様は、考えるような仕草を見せていた。
 私の言葉が本当かどうか、彼なりに吟味しているのだろう。
 そうやって考えてもらえると、なんだか希望が見えてくる。アルフェルグ様は、人を見る目がある人だ。きっと私が本心から話していると、理解してくれるだろう。

「なるほど……確かに、それなら尾行していた者達からの報告も、納得できるか」
「えっと……」
「いや、君の友人というそのエルドスは、不思議な雰囲気を纏っていたと聞いた。それはつまり、女性的だったということなのだろう」
「そ、そうだと思います」
「そういうことだったのか……ふふ、まったく、俺もひどい勘違いをしていたものだ」

 アルフェルグ様は、少し安心したような笑みを浮かべていた。
 その笑みの意図は、どういうことなのだろうか。私は少し、息を呑んでしまう。

「……しかし、そういうことならこの場はなんなのだ?」
「え?」
「俺はてっきり、君が誰かと関係を持った故に、この場を設けたと思っていたが」
「あ、それは……」

 続くアルフェルグ様の言葉に、私は彼からゆっくりと目をそらすことになった。
 どうやら私は、また恥ずかしい思いをしなければならないらしい。それは昼間に済ませたと思っていたのだが、改めて伝える必要があるようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする

矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。 『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。 『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。 『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。 不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。 ※設定はゆるいです。 ※たくさん笑ってください♪ ※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

待ち伏せされた悪役令嬢、幼馴染み騎士団長と初恋をやり直す。

待鳥園子
恋愛
悪役令嬢クラウディア・エズモンドとして転生し、前世の記憶が婚約破棄の夜会数日前に戻った。 もう婚約破棄されることは避けられない。覚悟を決めて夜会が開催される大広間に向かう途中、騎士団長であるオルランド・フィンリーに呼び止められ……。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました

ミズメ
恋愛
 感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。  これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。  とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?  重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。 ○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

【完結】「お前を愛することはない」と言われましたが借金返済の為にクズな旦那様に嫁ぎました

華抹茶
恋愛
度重なる不運により領地が大打撃を受け、復興するも被害が大きすぎて家は多額の借金を作ってしまい没落寸前まで追い込まれた。そんな時その借金を肩代わりするために申し込まれた縁談を受けることに。 「私はお前を愛することはない。これは契約結婚だ」 「…かしこまりました」  初めての顔合わせの日、開口一番そう言われて私はニコラーク伯爵家へと嫁ぐことになった。  そしてわずか1週間後、結婚式なんて挙げることもなく籍だけを入れて、私―アメリア・リンジーは身一つで伯爵家へと移った。 ※なろうさんでも公開しています。

お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。  初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。 それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。 時はアンバー女王の時代。 アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。 どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。 なぜなら、ローズウッドだけが 自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。 ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。 アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。 なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。 ローズウッドは、現在14才。 誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。 ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。 ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。 その石はストーン国からしか採れない。 そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。 しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。 しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。 そして。 異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。 ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。 ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。  

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

処理中です...