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 私は、バルメルト王国の王都に来ていた。
 クルストさんが言っていた通り、それなりに長い旅になったが、途中に宿屋など休憩もあったため、それ程疲れが溜まっているという訳ではない。
 という訳で、私は早速セルクス様と会うことになった。というかそれをこなさなければ、私も安心して休むことができない。

「ふう……」

 私は客室で、セルクス様を待っていた。
 王族とはシュタルド王国で散々と接してきたが、それでも緊張はしている。相手は知らない他国の王族だからだ。
 しかも、私を助けてくれた人である。その事情なども気になるし、中々落ち着けない。

「……失礼します」
「あっ……」

 そんなことを考えている内に、部屋の戸がゆっくりと開かれた。
 そして中に入ってきたのは、若い男性だ。身なりからして、その人物がセルクス様で間違いないだろう。

「あなたが、フラウメ・ウォーティストさんですか?」
「ええ、そうです」
「それでは、まずは自己紹介からしましょう。私は、セルクス・バルメルトと申します。この国の第三王子です」

 セルクス様は、とても飄々とした態度で挨拶をしてきた。
 どうやら、彼は私の顔も知らなかったようだ。それなのに助けてくれたというのは、なんだかおかしな話であるような気もする。

「さてと、まあ気になっていることは色々とあるでしょう。何から聞きたいですか?」
「え、えっと……」

 セルクス様は、私の正面にある椅子に腰かけながらそう問いかけてきた。
 質問に答えてくれるつもりのようだが、そう言われると何から聞いていいのかわからなくなってくる。
 あまり考えても仕方ないので、一番気になっていることから聞いた方がいいかもしれない。私が一番気になっていること、それは何故彼が私を助けてくれたのかということになるだろうか。

「どうして、私を助けてくれたんですか?」
「そうですね……元を辿ると、ポールス先生に頼まれたから、ということになるでしょうか。とはいえ、それがなくてもあなたを助けていた可能性はありますが」
「……どういうことですか?」
「私は、あなたを助けることが利益になるとそう判断したはずだからです。ポールス先生の頼みがあったため、決断は早くなりましたが、根本は変わりません」
「えっと……」

 セルクス様は、何か意図があって私を助けてくれたようである。その意図は、もちろん気になる所だ。
 それはきっと、私が払うべき対価になる。私がもたらす利益とは、一体なんなのだろうか。
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