偽りの聖女だと糾弾されて国外追放されましたが、実は本物の聖女だったので戻って来て欲しいと言われました。今更戻ると思っているんですか?

木山楽斗

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「さてと、それでは話を次に移しましょうか。あなたの仕事ですが、この国の魔法関連の仕事を担当してもらいます」
「まあ、そうなりますよね。具体的には何をすればいいんですか?」
「それはまだ決めていません。とりあえず、あなたは私の部下ということになりますが、実務に関して私はそこまで関わっていませんから、現場の者と相談してからですね」

 セルクス様は、苦笑いを浮かべていた。
 王族である彼は、それなりの役職に就いているようだ。話の内容から考えると、魔法関連のトップか何かなのだろう。
 そういった立場は、大抵現場のことはわからない。そこで現場に相談しようと考える彼は、優れた上司といえるだろう。

「まあ、その相談もありますし、何よりこの国に来たばかりのあなたにすぐに仕事をしてもらおうとは思っていません。ですから、しばらく休んでいてください」
「それは正直助かります。色々とあって、結構疲れていて……」
「当たり前のことですね。罪人として裁かれて、その後王族に呼び出される……少々配慮が足りませんでしたね」
「いえ、そんなことはありません」

 セルクス様が申し訳なさそうにしていて、私は少し焦っていた。
 別に文句を言ったつもりはない。だが、考えてみればそう取られてもおかしくない言葉だった。
 同時に私は、セルクス様の態度の変化を感じていた。彼の態度は演技の後元に戻ったと思っていたが、より柔らかくなっていたのだ。
 それはきっと、私が罪人ではないと確証を得ることができたからなのだろう。その変化が私は嬉しかった。彼に信用してもらえているような気がするからだ。

「こちらの話がまとまるまでの休暇期間は、こちらで宿屋を手配してありますから、そこでお過ごしください。いい宿屋を用意しています」
「それは、とてもありがたいです。でも、いいんですか?」
「ええ、問題ありません。ああ、仕事が決まる前に、恐らく一度呼び出すことになると思います。そちらとは別件で、シュタルド王国について色々と聞きたいので」
「あ、はい。もちろん、大丈夫です」

 シュタルド王国の秘密について話す。それに関しては、少々抵抗がある。
 不当に追い出されたとはいえ、あの国は私の故郷だ。それを売るという行為には、やはり罪悪感がある。
 とはいえ、バルメルト王国にはそれ以上の恩義があるため、包み隠さず話すつもりだ。命を救ってもらったのだから、それは当然のことである。

「ふむ、今話しておくべきことは、この程度でしょうか……」
「あ、その、ポールス先生が何を話していたかを聞いても構いませんか? 実の所、私はあの事件についてまだよくわかっていなくて……」
「ああ、私としたことが、一番重要な部分を話していませんでしたね……」

 私の言葉に、セルクス様は苦笑いをした。
 どうやら、私に話せないという訳ではなく、単純に忘れてしまっていたようだ。
 だが、それは是非とも聞いておきたい。私の身に何が起こったのか、アムトゥーリが何をしたのか、知りたいことは山ほどある。
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