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「あの、セルクス様、一つよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
「そんなことをするつもりは毛頭ありませんが、私が彼に悪人であったとしてらどうしますか? 聖女となれる程の魔力はあっても、本当に罪人という可能性はありますよね」
「ふむ……」
私の質問に対して、セルクス様は笑みを浮かべた。
当然のことかもしれないが、それはもちろん考慮しているらしい。
「実の所、その可能性は既にないと思っています。ポールス先生から説明は受けていますし、今までの会話で理解しました。あなたは悪人ではないと」
「そ、そう言ってもらえるのは嬉しいですけど……」
「もちろん、これは私個人の考えですね。ならば、敢えて王族として、あなたを利用しようとしている者としての言葉を発するとしましょうか……」
その瞬間、セルクス様の纏う雰囲気が変わったような気がした。
今の彼は、王族としての威厳に満ちている。私は思わず固まってしまう。前置きはあったが、それでも彼が恐ろしかったのだ。
「あなたがこの国でも妙な動きをするようなら、容赦するつもりはありません。大人しく私に従った方が、あなたの身のためだ」
「……」
「まあ、このように忠告するつもりでした。とはいえ、仮にあなたが本当に罪人であっても、そこまで問題はないと思っていましたが」
私に対して脅しのようなことを言ってから、セルクス様の雰囲気は元に戻った。
そのことに安心しながらも、私は考える。私が罪人であってもそこまで問題はないというのは、どういうことなのだろうか。
「あなたは、職務に忠実な聖女であったと聞いています。不正をして聖女になったとしても、職務に忠実であったならある程度の地位と賃金によって縛ることができるのではないかと考えていました」
「ああ、そういえば……」
セルクス様の言葉に、私は自分が聖女としてした仕事の数々を思い出した。
神器を操るだけが聖女の仕事という訳ではない。その他の仕事を私は忠実にこなしてきたのである。
その実績が、彼に問題ないと思わせたようだ。確かにそういう考えもできるのかもしれない。私は、ちゃんと仕事はしていた訳ではあるし。
「というか、私もそこは主張しておくべきだった? ……不正をした私が聖女として忠実に執務をしていた。それは私の潔白を証明する材料になったんじゃ……」
「おや、どうかしましたか?」
「あ、すみません。少し自分の立ち回りの情けなさを思い出してしまって……」
私は、シュタルド王国での立ち回りがもう少し上手くできたのではないかと後悔していた。
もちろん、過ぎたことを悔やんでも仕方ないことはわかっている。だが、もっとできることがあったとわかるとやはり振り返ってしまうのだ。
「はい、なんでしょうか?」
「そんなことをするつもりは毛頭ありませんが、私が彼に悪人であったとしてらどうしますか? 聖女となれる程の魔力はあっても、本当に罪人という可能性はありますよね」
「ふむ……」
私の質問に対して、セルクス様は笑みを浮かべた。
当然のことかもしれないが、それはもちろん考慮しているらしい。
「実の所、その可能性は既にないと思っています。ポールス先生から説明は受けていますし、今までの会話で理解しました。あなたは悪人ではないと」
「そ、そう言ってもらえるのは嬉しいですけど……」
「もちろん、これは私個人の考えですね。ならば、敢えて王族として、あなたを利用しようとしている者としての言葉を発するとしましょうか……」
その瞬間、セルクス様の纏う雰囲気が変わったような気がした。
今の彼は、王族としての威厳に満ちている。私は思わず固まってしまう。前置きはあったが、それでも彼が恐ろしかったのだ。
「あなたがこの国でも妙な動きをするようなら、容赦するつもりはありません。大人しく私に従った方が、あなたの身のためだ」
「……」
「まあ、このように忠告するつもりでした。とはいえ、仮にあなたが本当に罪人であっても、そこまで問題はないと思っていましたが」
私に対して脅しのようなことを言ってから、セルクス様の雰囲気は元に戻った。
そのことに安心しながらも、私は考える。私が罪人であってもそこまで問題はないというのは、どういうことなのだろうか。
「あなたは、職務に忠実な聖女であったと聞いています。不正をして聖女になったとしても、職務に忠実であったならある程度の地位と賃金によって縛ることができるのではないかと考えていました」
「ああ、そういえば……」
セルクス様の言葉に、私は自分が聖女としてした仕事の数々を思い出した。
神器を操るだけが聖女の仕事という訳ではない。その他の仕事を私は忠実にこなしてきたのである。
その実績が、彼に問題ないと思わせたようだ。確かにそういう考えもできるのかもしれない。私は、ちゃんと仕事はしていた訳ではあるし。
「というか、私もそこは主張しておくべきだった? ……不正をした私が聖女として忠実に執務をしていた。それは私の潔白を証明する材料になったんじゃ……」
「おや、どうかしましたか?」
「あ、すみません。少し自分の立ち回りの情けなさを思い出してしまって……」
私は、シュタルド王国での立ち回りがもう少し上手くできたのではないかと後悔していた。
もちろん、過ぎたことを悔やんでも仕方ないことはわかっている。だが、もっとできることがあったとわかるとやはり振り返ってしまうのだ。
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