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7.父のことを知って
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今は亡き王弟ウルスルグ、それが私の父親の名前だ。
現在の国王様の二人いる弟の内の一人で、穏健派の王子であったらしい。
その気質から、国民からの人気は高かったという。ただ貴族などからの評判は良くない。
「ウルスルグ殿下のことは、私も歴史で学んだ程度のことしか知りません。しかし立派な方だったと思います。彼は民に寄り添える王族だったと聞いています」
馬車の中で、スヴェルツ様は私にそう言ってきた。
今のセルナード侯爵は、王家の中でも特にウルスルグ殿下と仲が良かったそうだ。二人は同じような気質であったらしい。
そんなセルナード侯爵を父親に持つスヴェルツ様も、民を特に重んじる貴族ということなのだろう。それは非常に、好感が持てるものではある。
「……私の母は、穏やかな人でした。ラナフィス伯爵家は取り分け民に優しい家という訳ではありませんが、もしかしたらウルスルグ殿下と同じような考えだったのかもしれません。色々とあったためか、私の幼少期には屋敷に籠っていましたけれど」
「身を隠す意味も、あったのでしょう」
「そうですね……国王様のことを信頼できなかったのかもしれません」
当時の母にとって、ウルスルグ殿下以外の王家は敵に思えたのかもしれない。今の国王様は私に敵意はないようだが、当時もそうだったとは限らない。
母が唯一信用できたのは、家族だけだったのだろう。伯父様は当時健在だったお祖父様やお祖母様とともに、色々と手を回していたらしい。
「ともあれ陛下は、ラナーシア嬢のことを公表するつもりです。それは王国にとって、とても大きな決断だといえるでしょう」
「……国王様にとって、私の存在は厄介なものです。だからこそしっかりと手綱を握ろうとしているのでしょう」
「そう考えることもできますね。単に姪を姪として認めたいだけかもしれませんが……」
国王様は、今の所私を亡き者にしようなどとは考えていないように思える。
しかしだからといって、完全に信用することはできない。母がそうであったように、私もまだ疑心暗鬼の状態だ。
とはいえ、私はもちろん国王様と敵対しようなどとは思っていない。つまり今の関係を維持することが、私にとっては重要だといえる。
私が完全に王家の側につけば、何者かに祭り上げられるようなこともないだろう。とにかく今は、自身の立ち位置をしっかりと表明していかなければならない。
「しかしまさか、婚約破棄されてからこのようなことになるとは思っていませんでしたよ……」
「……そうでしょうね。ラナーシア嬢にとっては、災難続きだ。しかしそれならせめて私が、あなたを支えられるように努力するとしましょう」
私の言葉に、スヴェルツ様は力強い言葉を返してくれた。
彼は現在、セルナード侯爵から仕事を言い渡されている。それは私及びラナフィス伯爵家の補助だ。王家の腹心ともいえる一家の一員として、彼にも役目が言い渡されているのである。お互いになんとも、大変なことになったものだ。
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「ウルスルグ殿下のことは、私も歴史で学んだ程度のことしか知りません。しかし立派な方だったと思います。彼は民に寄り添える王族だったと聞いています」
馬車の中で、スヴェルツ様は私にそう言ってきた。
今のセルナード侯爵は、王家の中でも特にウルスルグ殿下と仲が良かったそうだ。二人は同じような気質であったらしい。
そんなセルナード侯爵を父親に持つスヴェルツ様も、民を特に重んじる貴族ということなのだろう。それは非常に、好感が持てるものではある。
「……私の母は、穏やかな人でした。ラナフィス伯爵家は取り分け民に優しい家という訳ではありませんが、もしかしたらウルスルグ殿下と同じような考えだったのかもしれません。色々とあったためか、私の幼少期には屋敷に籠っていましたけれど」
「身を隠す意味も、あったのでしょう」
「そうですね……国王様のことを信頼できなかったのかもしれません」
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母が唯一信用できたのは、家族だけだったのだろう。伯父様は当時健在だったお祖父様やお祖母様とともに、色々と手を回していたらしい。
「ともあれ陛下は、ラナーシア嬢のことを公表するつもりです。それは王国にとって、とても大きな決断だといえるでしょう」
「……国王様にとって、私の存在は厄介なものです。だからこそしっかりと手綱を握ろうとしているのでしょう」
「そう考えることもできますね。単に姪を姪として認めたいだけかもしれませんが……」
国王様は、今の所私を亡き者にしようなどとは考えていないように思える。
しかしだからといって、完全に信用することはできない。母がそうであったように、私もまだ疑心暗鬼の状態だ。
とはいえ、私はもちろん国王様と敵対しようなどとは思っていない。つまり今の関係を維持することが、私にとっては重要だといえる。
私が完全に王家の側につけば、何者かに祭り上げられるようなこともないだろう。とにかく今は、自身の立ち位置をしっかりと表明していかなければならない。
「しかしまさか、婚約破棄されてからこのようなことになるとは思っていませんでしたよ……」
「……そうでしょうね。ラナーシア嬢にとっては、災難続きだ。しかしそれならせめて私が、あなたを支えられるように努力するとしましょう」
私の言葉に、スヴェルツ様は力強い言葉を返してくれた。
彼は現在、セルナード侯爵から仕事を言い渡されている。それは私及びラナフィス伯爵家の補助だ。王家の腹心ともいえる一家の一員として、彼にも役目が言い渡されているのである。お互いになんとも、大変なことになったものだ。
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