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6.父の正体
「アルゼル王国において、かつて王位争いがあったことを知っているか?」
「王位争い……はい、もちろん知っています」
「私には二人の弟がいる。当時において、第二王子と第三王子にあたる人物だ」
国王様は、ゆっくりと言葉を発していた。
その表情からは、躊躇いが読み取れる。王位争いのことは、進んで話したいことではないということなのだろう。
それでも話すということは、その出来事に私の出自が関係しているということだ。なんというか、段々と話が見えてきた。
「第二王子――上の弟と私は主に争っていた。第三王子――下の弟は、あまりそういった事柄には興味がなかったのだ。王位争奪から、奴は一歩離れた位置にいた。しかし当時の情勢故に、選ばねばならなかったのだ。兄のどちらにつくかを……」
「その選択によって、王位争いの情勢が傾く、ということでしょうか?」
「ああ、その通りだ。そして奴は、私を選ぼうとした。悩んだ末の決断だ。それで王位争いは終わるはずだった」
王位争いに関しては、私も知識として知っている。それは苛烈なものだったらしい。
今でこそアルゼル王国は平和なものだが、当時はかなり逼迫していたと聞いている。国王様の口振りからしても、それは間違いないようだ。
「その最中、上の弟はなんとも非常な手を取ったのだ。下の弟を亡き者にするという手をな……」
「それは……」
「実の弟に対して、そこまで非常な手を取るなどとは思っていなかった。しかしその行いがあったからこそ、私は王の地位につけたともいえる。下の弟の暗殺は隠しきれるものではなかったのだ。私は上の弟の非常な手段を糾弾して味方を増やし、奴を亡き者にした」
王位争いによって、当時の二人の王子が亡くなった。それはなんとも、血みどろなものだったといえるだろう。
とはいえ、それは既に終わっていることである。問題となるのは、私がそこにどう絡んでいるのかということだ。
「それからしばらくして、私はとある事実を知ることになった。下の弟に、懇意にしていた女性がいたということをな……」
「つまり、私は……」
「ああ、その女性とは君の母親だったのだろう。諸々の状況から考えて、君が王家の血を引いていることは間違いない」
国王様から告げられたことは、予想していたことではあった。
しかしそれでも、動揺せずにはいられない。その事実は、私という人間を根底から覆すようなものであったからだ。
「……ラナーシア嬢、大丈夫ですか?」
「あ、え、ええ……」
「どうか、心を強く持ってください……」
動揺して震える私に声をかけてくれたのは、スヴェルツ様であった。
ただ彼の方も、大いに動揺していることはわかった。当然のことながら、この事実は王国を揺るがすものだ。聞かされて平然としていられる訳もない。
しかしスヴェルツ様の言葉のお陰で、私は少しだけだが落ち着くことができた。私は改めて国王様の方を見る。彼が私に何を望んでいるのか、私はそれを知らなければならない。
「王位争い……はい、もちろん知っています」
「私には二人の弟がいる。当時において、第二王子と第三王子にあたる人物だ」
国王様は、ゆっくりと言葉を発していた。
その表情からは、躊躇いが読み取れる。王位争いのことは、進んで話したいことではないということなのだろう。
それでも話すということは、その出来事に私の出自が関係しているということだ。なんというか、段々と話が見えてきた。
「第二王子――上の弟と私は主に争っていた。第三王子――下の弟は、あまりそういった事柄には興味がなかったのだ。王位争奪から、奴は一歩離れた位置にいた。しかし当時の情勢故に、選ばねばならなかったのだ。兄のどちらにつくかを……」
「その選択によって、王位争いの情勢が傾く、ということでしょうか?」
「ああ、その通りだ。そして奴は、私を選ぼうとした。悩んだ末の決断だ。それで王位争いは終わるはずだった」
王位争いに関しては、私も知識として知っている。それは苛烈なものだったらしい。
今でこそアルゼル王国は平和なものだが、当時はかなり逼迫していたと聞いている。国王様の口振りからしても、それは間違いないようだ。
「その最中、上の弟はなんとも非常な手を取ったのだ。下の弟を亡き者にするという手をな……」
「それは……」
「実の弟に対して、そこまで非常な手を取るなどとは思っていなかった。しかしその行いがあったからこそ、私は王の地位につけたともいえる。下の弟の暗殺は隠しきれるものではなかったのだ。私は上の弟の非常な手段を糾弾して味方を増やし、奴を亡き者にした」
王位争いによって、当時の二人の王子が亡くなった。それはなんとも、血みどろなものだったといえるだろう。
とはいえ、それは既に終わっていることである。問題となるのは、私がそこにどう絡んでいるのかということだ。
「それからしばらくして、私はとある事実を知ることになった。下の弟に、懇意にしていた女性がいたということをな……」
「つまり、私は……」
「ああ、その女性とは君の母親だったのだろう。諸々の状況から考えて、君が王家の血を引いていることは間違いない」
国王様から告げられたことは、予想していたことではあった。
しかしそれでも、動揺せずにはいられない。その事実は、私という人間を根底から覆すようなものであったからだ。
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「あ、え、ええ……」
「どうか、心を強く持ってください……」
動揺して震える私に声をかけてくれたのは、スヴェルツ様であった。
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