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9.王城に招かれて
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私はスヴェルツ様とともに、王城に招かれていた。
私が王家の血筋であると大々的に発表する前に、王家の面々と会うということになったのだ。
「ラナーシア嬢、私は王家の一員としてあなたのことを歓迎します。あなたはこれまで、多くの苦悩を抱えてきたことでしょう。それは私には想像することもできないような険しい道であったはずです。その道を乗り越え、ここまで歩んできたあなたはなんとも立派なものです」
国王様の妻であり血縁上私の伯母にあたる王妃様は、敬虔な方である。アルゼル王国において広く信仰されている宗教の信者として、慈善活動などに力を入れていることで有名だ。
故に私の出自に関して、ひどく心を痛めてくれているらしい。それは大変にありがたいことである。とはいえ、私は家族に恵まれていたので、そこまで険しい道を歩んできた訳でもないのだが。
「ラナフィス伯爵家か、因果なものだな。まさか叔父上の忘れ形見がそのような家に隠れていたとは……」
「兄上、それはどういうことですか?」
「ふっ……」
第一王子であるアルドバルド殿下と第二王子であるイクセル殿下は、仲の良い兄弟として知られている。
それは恐らく、国王様の教育の賜物ということなのだろう。兄弟で骨肉の争いを繰り広げた彼にとって、兄弟の仲はきっと重要なものだったはずだ。
それは王国の未来にとっても、明るい話だといえる。王位争いという国が揺れる出来事なんて、当然続いて欲しくはないことであるはずだ。
「アルドバルド殿下、ラナフィス伯爵家について何か懸念でもあるのでしょうか?」
「いや、その懸念というものは既に取り払われている」
「取り払われている? それは非常に興味深い言葉ですね。そうは思いませんか、ラナーシア嬢……」
「あ、ええ、そうですね……」
王家の方々について考えていた私は、スヴェルツ様とアルドバルド殿下の会話で少し我に返った。
確かにアルドバルド殿下の言い方は気になるものだ。彼は一体、ラナフィス伯爵家について何を知っているのだろうか。
「スヴェルツ、お前も中々に鋭くなったものだな……こうして顔を合わせるのは久方振りではあるが、お互いに難儀な立場になったものだ」
「アルドバルド殿下、今回私には役目があります。それはラナーシア嬢を補助すること……どうか質問に答えていただけませんか?」
セルナード侯爵家の一員として、スヴェルツ様は王家の面々とも親しくしているらしい。
ただ今は、親しさよりも役目を果たそうとしてくれている。それも私にとっては、なんともありがたいことであった。
「アルドバルド、何かあるならラナーシア嬢に話して差し上げなさい。彼女はこれから、王家に連なるのですから、隠し事など不要です」
「もちろん、そのつもりです。もったいぶるのは、俺の悪い癖だな……ラナーシア嬢、あなたはラナフィス伯爵家とベルガール伯爵家の婚約について、どこまで知っている?」
「婚約? あれは既に終わったものですが……つまりあれに問題が?」
「察しが良いな。それならば話しておくとしようか。ベルガール伯爵家の現状について……」
私の言葉に、アルドバルド殿下は少し表情を強張らせていた。
ハウガス様との婚約、そのことについて私はそこまで深く考えたことはない。考える前に、それが破棄されてしまったからだ。
私としては、伯父様にそう命じられたから従っただけに過ぎない。しかしそれには、何か問題が絡んでいたようだ。
私が王家の血筋であると大々的に発表する前に、王家の面々と会うということになったのだ。
「ラナーシア嬢、私は王家の一員としてあなたのことを歓迎します。あなたはこれまで、多くの苦悩を抱えてきたことでしょう。それは私には想像することもできないような険しい道であったはずです。その道を乗り越え、ここまで歩んできたあなたはなんとも立派なものです」
国王様の妻であり血縁上私の伯母にあたる王妃様は、敬虔な方である。アルゼル王国において広く信仰されている宗教の信者として、慈善活動などに力を入れていることで有名だ。
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「ラナフィス伯爵家か、因果なものだな。まさか叔父上の忘れ形見がそのような家に隠れていたとは……」
「兄上、それはどういうことですか?」
「ふっ……」
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それは恐らく、国王様の教育の賜物ということなのだろう。兄弟で骨肉の争いを繰り広げた彼にとって、兄弟の仲はきっと重要なものだったはずだ。
それは王国の未来にとっても、明るい話だといえる。王位争いという国が揺れる出来事なんて、当然続いて欲しくはないことであるはずだ。
「アルドバルド殿下、ラナフィス伯爵家について何か懸念でもあるのでしょうか?」
「いや、その懸念というものは既に取り払われている」
「取り払われている? それは非常に興味深い言葉ですね。そうは思いませんか、ラナーシア嬢……」
「あ、ええ、そうですね……」
王家の方々について考えていた私は、スヴェルツ様とアルドバルド殿下の会話で少し我に返った。
確かにアルドバルド殿下の言い方は気になるものだ。彼は一体、ラナフィス伯爵家について何を知っているのだろうか。
「スヴェルツ、お前も中々に鋭くなったものだな……こうして顔を合わせるのは久方振りではあるが、お互いに難儀な立場になったものだ」
「アルドバルド殿下、今回私には役目があります。それはラナーシア嬢を補助すること……どうか質問に答えていただけませんか?」
セルナード侯爵家の一員として、スヴェルツ様は王家の面々とも親しくしているらしい。
ただ今は、親しさよりも役目を果たそうとしてくれている。それも私にとっては、なんともありがたいことであった。
「アルドバルド、何かあるならラナーシア嬢に話して差し上げなさい。彼女はこれから、王家に連なるのですから、隠し事など不要です」
「もちろん、そのつもりです。もったいぶるのは、俺の悪い癖だな……ラナーシア嬢、あなたはラナフィス伯爵家とベルガール伯爵家の婚約について、どこまで知っている?」
「婚約? あれは既に終わったものですが……つまりあれに問題が?」
「察しが良いな。それならば話しておくとしようか。ベルガール伯爵家の現状について……」
私の言葉に、アルドバルド殿下は少し表情を強張らせていた。
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