王家の血を引く私との婚約破棄を今更後悔しても遅いですよ。

木山楽斗

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14.現れた元婚約者

「……ハウガス様」
「……」

 私の前に、ハウガス様がやって来た。
 彼の表情は暗い。ベルガール伯爵家の現状を考えれば、それは当然のことだろう。
 ただ彼に関して同情する気持ちは湧いてこない。そもそもベルガール伯爵家が追い詰められた原因は彼だからだ。

「私に何の用ですか?」
「……お前に言いたいことがある」

 ハウガス様が一体何をしにここまで来たのか、その理由を私は考えていた。
 彼のことだ。私に恨み節を言いに来たということも考えられる。故に私は、少し警戒していた。

「……僕はかつて、間違いを犯した。お前との婚約破棄、それは愚かな判断だったといえる」
「それは……」
「お前も既に知っているかもしれないが、ベルガール伯爵家は危機的な状況にある。それを救うことができるのは、お前だけだ。だから僕は、お前と再度婚約したいと思っている」

 ハウガス様の言葉は、なんとも意外なものだった。まさかそこまで、しおらしくなるなんて思ってもいなかった。
 ただハウガス様は、どこか不服そうではある。その表情からは、不本意ながら言っていることが伝わってきた。
 さらに言えば、彼はこの期に及んで謝罪の言葉を口にしていない。それにはハウガス様のプライドのようなものが読み取れた。

「王家の血を引く私との婚約破棄を今更後悔しても遅いですよ」
「……何?」
「ベルガール伯爵は、既に国王様に爵位の返上を伝えています。あなたは一歩遅かったのです。そもそも、私を罵倒して婚約破棄したあなたと再度婚約するなんて選択を、私がするはずがないではありませんか。あなたには貴族としての資質がないのですから」

 私はハウガス様に対して、冷たい言葉をかけていた。
 彼に対して、優しくしようとは思わない。ハウガス様は身勝手に婚約破棄して、自身の家を破滅させた。嫡子であるにも関わらず、ベルガール伯爵家の現状を把握していなかったということも、心証が悪い。

「せめてあなたが、今回の件で反省して心を入れ替えてくれることを願っています。それでどうか、ベルガール伯爵や他の家族のことを支えてあげてください」
「……」

 とりあえず私は、言いたいことを言っておくことにした。
 その言葉がどれだけハウガス様に届くのかはわからない。ただできればこれからは心を入れ替えて欲しいと思っている。
 ベルガール伯爵と国王様のやり取りを見ていたからか、私は強くそう思っていた。

「ふざけるなよ……」
「え?」
「お前なんかが……上から目線で、語るんじゃない!」

 そんな私の期待に対して、ハウガス様は激昂してきた。
 彼の表情は、大きく歪んでいる。どうやら私の言葉は、ハウガス様の心に響いてくれなかったようである。
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