婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。

木山楽斗

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5.困惑する両親

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「アノテラ、私はお前が何を言っているのか理解できないぞ?」
「ええ、本当に意味がわかりません。アノテラ、冗談の類ではないのよね?」
「ええ、お父様、お母様、私が今まで説明してきたことは全て事実です」

 お父様とお母様は、私の説明に訳がわからないというような顔をしていた。
 婚約破棄されて、元婚約者の浮気相手の婚約者と縁談が持ち上がっている。それを理解しろという方が無理だろう。
 ただ、結果的にそうなってしまったというのが現実である。私だって、まだ理解は追いついていないけれど、それでも受け入れていくしかない。

「お姉様、玉の輿ってやつかな?」
「お兄様、お姉様だって貴族なのだから、玉の輿っていうのは正しくないんじゃない?」
「ああそうか」

 そんな私達の会話を、弟のイグルと妹のウェレナは楽しそうに聞いていた。
 私とは年の離れた双子の兄妹達は、私の身に起こったことをすんなりと受け入れているようである。

「えっと、ラルード様曰く、後日改めて連絡をしてくれるみたいですが、お父様とお母様と相談してという話なので……」
「ああ、そっちもなかったことになるかもしれないと?」
「ええ、そうですね」
「でも、ラルード伯爵令息は乗り気なのでしょう? 両親も説得できると思っていると、あなたはさっき言ったわよね?」
「はい、言いました。だから、この婚約はきっと成立するんじゃないでしょうか?」

 私の言葉に、お父様とお母様は顔を見合わせた。
 二人とも、なんとも奇妙な表情をしている。婚約破棄されてショックを受けて、伯爵家との縁談に少し浮かれて、二人の心情は既に滅茶苦茶なのかもしれない。

「もちろん話がまとまれば願ってもないことではある。我々にとっては、有益な結婚であることは間違いない。なんといっても、相手が伯爵家だからな?」
「でも、もしかしたら何かしらの意図があるのではありませんか? もちろん、婚約者が見つからない可能性もあるから、アノテラの持ち掛けに乗ったという単純な可能性もありますが」
「状況的に、どちらでもあり得そうだな。結論として出せるのは、わからないということだけだ」

 お父様とお母様は、早口でそのような会話を交わしていた。
 結局結論として出たのは、わからないという身も蓋もない結論である。残念ながら、その結論には同意するしかない。私も正直、ラルード様の本心はさっぱりわかっていない。
 あの時は分かり合えていると思っていたが、本当にそうだったのだろうか。彼の本質が、少々気になる所である。

「あ、そうだ」
「む?」
「アノテラ、どうかしたの?」

 そこで私は、あることを思いついた。
 それはもしかしたら、今回の件を確実に円満に終わらせられる方法かもしれない。
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