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私は、アルファンド伯爵家の人々の前に連れて来られていた。
この屋敷から追放される前に、それぞれ言っておきたいことがあったようなのだ。
ただ、それは非常につまらないものだった。お母様もお姉様もお兄様も、いつも通りの罵倒で、お父様だけは激励のような言葉を言っていたが、どれも私の胸にはそれ程刺さっていない。
「……お話はこれで終わりでしょうか?」
「ええ、その通りよ。早くこの屋敷から出て行きなさい」
「……引き止めたのは、お母様であったと記憶していますが」
「生意気なことを言っているんじゃないわよ。愚かなる子め。もうお前は、アルファンド家の一員ではないのよ」
お母様は、私のことを忌々しそうに睨みつけてきた。
その恐ろしい視線も、今はそれ程痛くない。それはきっと私の心に余裕があるからなのだろう。
「……失礼します」
「誰? 今は取り込み中よ」
「……ゼルーグです」
「ゼルーグ殿下? これは、失礼しました」
「入ってもいいでしょうか?」
「え、ええ……」
そんな場にやって来たのは、ゼルーグ殿下であった。
彼は、一度屋敷に出たかがまた来てくれたようだ。それはきっと、私の積年の恨みを少しでも晴らしてあげようという気遣いからだろう。
それに対して、四人はひどく動揺している。それは当たり前だ。まさか王子が再訪問してくるなんて思っていなかっただろう。
「エノフィアさん、お話は終わりましたか?」
「ええ、丁度今終わりました」
「そうですか……少し遅いので様子を見に来ましたが、杞憂でしたか」
ゼルーグ殿下は、四人には目を向けず私に笑顔を向けてくれた。
それだけで、彼らの困惑が深まるのがわかる。先程まで話していたとはいえ、これ程親しげな意味がわかっていないのだろう。
「伝えていた通り、私はアルファンド伯爵家を追放されました」
「そうですか……」
「ゼルーグ殿下、これはどういうことです?」
「追放されてしまったようですが、一応元ご家族には伝えておくべきでしょうか……僕はエノフィアさんを妻に迎えます」
「なっ……!」
ゼルーグ殿下の言葉に、四人は各々驚いていた。
先程から彼はそんな反応ばかりだ。それが私にとっては、少し愉快である。
「こ、婚約ということですか? そんな話は聞いていません」
「そ、それなら、あの子にはこの家に留まってもらった方がいいのではありませんか、お母様?」
「姉上の言う通りです。これは、伯爵家の利益になりますよ?」
「それは……」
そこで、お母様とお姉様とお兄様がそのような会話を交わした。
それは、なんともみっともない会話だ。自分勝手で、とても彼女達らしい。
「残念ながら、僕はあなた達を支援しようとは思っていません」
「え?」
「そんな都合のいい話が通るとでも思っているのですか? 僕は確かに聞きましたよ? 彼女はもうこのアルファンド家の一員ではないと」
「そ、それは……」
「往生際が悪いですね……まあ、別に条件次第では支援しても構いませんよ。彼女を僕のものにする代わりにお金を払いましょう。それで彼女にもう二度と手を出さないなら、僕もそれで問題ありません」
「ぬうっ……」
ゼルーグ殿下の言葉に、三人は顔を歪めていた。
彼は、私のことをとことん考えてくれているようだ。それが、とても嬉しかった。
「まあ、その辺りの話は追々しましょうか。僕達には、それよりも早く果たさなければならないことがありますからね、エノフィアさん?」
「果たさなければならないこと?」
「あなたの本当のお母上が待っています」
「あっ……はい!」
私は、ゼルーグ殿下の言葉に力強く頷いた。
彼のおかげで、私は呪縛から解放された。こんなにも嬉しいことはない。
こうして、私はゼルーグ殿下とともにアルファンド伯爵家を後にするのだった。
この屋敷から追放される前に、それぞれ言っておきたいことがあったようなのだ。
ただ、それは非常につまらないものだった。お母様もお姉様もお兄様も、いつも通りの罵倒で、お父様だけは激励のような言葉を言っていたが、どれも私の胸にはそれ程刺さっていない。
「……お話はこれで終わりでしょうか?」
「ええ、その通りよ。早くこの屋敷から出て行きなさい」
「……引き止めたのは、お母様であったと記憶していますが」
「生意気なことを言っているんじゃないわよ。愚かなる子め。もうお前は、アルファンド家の一員ではないのよ」
お母様は、私のことを忌々しそうに睨みつけてきた。
その恐ろしい視線も、今はそれ程痛くない。それはきっと私の心に余裕があるからなのだろう。
「……失礼します」
「誰? 今は取り込み中よ」
「……ゼルーグです」
「ゼルーグ殿下? これは、失礼しました」
「入ってもいいでしょうか?」
「え、ええ……」
そんな場にやって来たのは、ゼルーグ殿下であった。
彼は、一度屋敷に出たかがまた来てくれたようだ。それはきっと、私の積年の恨みを少しでも晴らしてあげようという気遣いからだろう。
それに対して、四人はひどく動揺している。それは当たり前だ。まさか王子が再訪問してくるなんて思っていなかっただろう。
「エノフィアさん、お話は終わりましたか?」
「ええ、丁度今終わりました」
「そうですか……少し遅いので様子を見に来ましたが、杞憂でしたか」
ゼルーグ殿下は、四人には目を向けず私に笑顔を向けてくれた。
それだけで、彼らの困惑が深まるのがわかる。先程まで話していたとはいえ、これ程親しげな意味がわかっていないのだろう。
「伝えていた通り、私はアルファンド伯爵家を追放されました」
「そうですか……」
「ゼルーグ殿下、これはどういうことです?」
「追放されてしまったようですが、一応元ご家族には伝えておくべきでしょうか……僕はエノフィアさんを妻に迎えます」
「なっ……!」
ゼルーグ殿下の言葉に、四人は各々驚いていた。
先程から彼はそんな反応ばかりだ。それが私にとっては、少し愉快である。
「こ、婚約ということですか? そんな話は聞いていません」
「そ、それなら、あの子にはこの家に留まってもらった方がいいのではありませんか、お母様?」
「姉上の言う通りです。これは、伯爵家の利益になりますよ?」
「それは……」
そこで、お母様とお姉様とお兄様がそのような会話を交わした。
それは、なんともみっともない会話だ。自分勝手で、とても彼女達らしい。
「残念ながら、僕はあなた達を支援しようとは思っていません」
「え?」
「そんな都合のいい話が通るとでも思っているのですか? 僕は確かに聞きましたよ? 彼女はもうこのアルファンド家の一員ではないと」
「そ、それは……」
「往生際が悪いですね……まあ、別に条件次第では支援しても構いませんよ。彼女を僕のものにする代わりにお金を払いましょう。それで彼女にもう二度と手を出さないなら、僕もそれで問題ありません」
「ぬうっ……」
ゼルーグ殿下の言葉に、三人は顔を歪めていた。
彼は、私のことをとことん考えてくれているようだ。それが、とても嬉しかった。
「まあ、その辺りの話は追々しましょうか。僕達には、それよりも早く果たさなければならないことがありますからね、エノフィアさん?」
「果たさなければならないこと?」
「あなたの本当のお母上が待っています」
「あっ……はい!」
私は、ゼルーグ殿下の言葉に力強く頷いた。
彼のおかげで、私は呪縛から解放された。こんなにも嬉しいことはない。
こうして、私はゼルーグ殿下とともにアルファンド伯爵家を後にするのだった。
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