私が聖女になったからって、男と出て行ったあなたが今更母親面しないでください。

木山楽斗

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10.私の夢は

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 私は、エルティリナさんに呼び出されていた。
 これからのことで、話したいことがあるそうなのだ。

「まあ、そんなにかしこまる必要はない訳だから、肩の力を抜いてちょうだい」
「はい……」
「といっても、無理か」

 エルティリナさんは、苦笑いを浮かべていた。
 私がまだ慣れていないことは、見てわかるようなものだったらしい。

「さてと、話したいことというのは、あなたの今後のことなんだけど」
「今後、ですか?」
「ええ、将来の夢とか、そういうものがあるのか聞いておかなければならないと思って」
「将来の夢……」

 エルティリナさんの質問に、私は考えることになった。
 将来の夢なんて、今まで考えたことなんてなかった。両親にも聞かれたことはなかったし、まったく持ってわからないものだ。

「何かなりたいものがあるなら、私は全力で支援するつもり。言っておくけれど、遠慮は必要ないからね」
「ありがとうございます。ただ、将来の夢なんてありません」
「ああ、そうなのね」

 私は自信なさげに返答を返したが、エルティリナさんは淡白な返事をした。
 彼女は、そこまで驚いていない。夢がないというのは、珍しいことという訳でもないのだろうか。

「そういうことならそういうことでいいのよ。これから見つければいいことだし、見つからないならそれはそれでも構わないし」
「そ、そういうものなんですか?」
「まあ、あるにこしたことはないと思っているけど、私も明確な夢があったという訳ではないし……ああでも、興味があること、くらいはなかったりしない?」
「興味、ですか」

 興味と言われて、私は思わず反応してしまった。
 実の所、興味があることならあった。それについてまだよくわかっていないこともあったので、夢としては発言していなかったのだが。

「……そういうことなら、魔法には興味があります」
「魔法……」
「その……キルスタインさんが使っていたのを見て」
「なるほど、そういうことなら魔法使いの道に進むのもいいかもしれないわね」

 魔法使いの道、それは今までの人生でまったく考えていなかったものだ。
 そんな道に、私が進めるものなのだろうか。中々に不安である。

「それなら、私もかなり支援できるわね。何せ、キルスタイン様に魔法を教えたのは、他ならぬ私なのだから」
「え? そうなのですか?」
「ええ、まあ基礎の基礎を教えたというだけだから、今はもう彼の方が優秀だけれど、それでもあなたに教えられることはあると思うの」

 エルティリナさんの言葉に、私は少し驚いた。
 しかし、あのキルスタインさんの師匠というなら、これ以上ない程に心強い味方だ。なんというか、希望が見えてきた。
 もっとも、私に魔法の才能があるかどうかは定かではない。魔法使いの道に進めるかどうかは、まだ決まった訳ではないのだ。もちろん、努力はするつもりだが。
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