散々虐げてきた私が初恋の子だったからと今更手の平を返した所で、許せる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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18.場の収拾

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「ふう……」
「ラーバスさん、大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん大丈夫です。しかしオルドス侯爵令息は思ったよりも、危険な男ですね。ナイフを取り出した時は驚きました。もっとも刺す場所が中途半端でしたがね」

 私の質問に、ラーバスさんは苦笑いを浮かべていた。
 傷の方は、本当に大丈夫であるようだ。流石は騎士といった所だろうか。
 しかし心配である。ナイフは刺さったままなのだが。

「とはいえ、相手から手を出してもらえたのは幸運でした。これで騎士として彼を拘束する正当な権利ができましたからね」
「そうですね。その点に関して、オルドス様は迂闊だったといえます。しかし、オルドス様は一体何を……」
「それはこれからゆっくりと聞くとしましょう。おい、誰か来てくれて!」

 そこでラーバスさんは、ゆっくりと声をあげた。
 すると待機していた騎士達が部屋の中に入って来る。
 今回の件がこじれることは予想できていた。そのため、ラーバスさんの同僚達にも来てもらっておいたのだ。

「ラーバス……派手にやったみたいだな?」
「こいつ、伸びているみたいだが、何をしたんだ? ……って、お前その腹」
「俺なら問題はない。とにかく、こいつを連れて行ってくれ。改めて話を聞く必要ができた」
「これは下手に抜かない方がいいか?」
「ああ、俺はこのまま病院にでも行くとしよう」

 ラーバスさんは、同僚達と普通に会話を交わしていた。
 ただ、同僚達の方は少し引いているような気もする。その気持ちは、よく理解できた。
 恐らく、本人としては本当に大丈夫なのだろう。見た目的にはかなりまずそうに見えるだけで、案外痛みなどもそれ程ではないのかもしれない。

「……ミルティア嬢、あなたにこんなことを頼むのは申し訳ない限りなのですが、ラーバスに付き添っていただけませんか?」
「ああ、わかりました。そうですね。どうせ私は、この後は暇ですし」

 私は、ラーバスさんの同僚の言葉にゆっくりと頷いた。
 最早私自身にはやるべきことなどない。後は成り行きを見守るだけだ。
 端的に言ってしまえば、私は暇である。ラーバスさんのことは個人的に心配だし、ここは付き添うとしよう。

「ミルティア嬢、俺のことは気にしないでも構いません。あなたも色々と疲れたでしょうし、休んでいただいても……」
「いえ、私は大丈夫です。なんというか、まだ完全に解決した訳ではありませんし、落ち着ける気もしないので、何かさせてください」
「……わかりました。そういうことなら」

 オルドス様との婚約は破棄できた訳ではあるが、彼に関してはまだ謎がある。
 その謎が解き明かされるまでは、完全に安心することはできない。
 もっとも、それは騎士達がなんとかしてくれるだろう。彼らの尋問に、オルドス様が抗えるとも思えないし。
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