「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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4.意外な提案

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「どうかしましたか?」
「あ、その……」

 驚いていた私に、男性は少し不思議そうな顔をしていた。
 私は、一瞬だけ考える。彼に、私の事情を伝えていいかどうかを。
 聖女だったと明かすのは、流石にまずいかもしれない。その事情を伝えると、色々とややこしいことになりそうだ。
 だが、アルヴェルド王国に移り住みたいというくらいはいいかもしれない。それは、別にそこまでおかしなことではないはずだ。

「えっと……実は私、アルヴェルド王国に移り住もうと思っているんです」
「そうなんですか?」

 私の言葉に、男性は驚いていた。流石に、あちらも私が自分の故郷に移住を考えているとは、思っていなかったのだろう。
 それは、当然だ。私も、それで驚いたのだから、彼も驚くだろう。

「何かあったのですか?」
「え? えっと……」
「ああ、それはあまり聞かない方がいいようですね」

 男性は、続いて移住の理由を聞いてきた。それは、至極自然な質問である。こんなことを言われたら、誰だって理由を聞きたくなるものだ。
 ただ、それはあまり言いたくないことだったので、私は言葉を詰まらせてしまった。その様子に、彼は気を遣ってくれたようだ。

「まあ、我が国に来るというなら、歓迎しますよ。僕が言うことではないのかもしれませんが……」
「い、いえ、そう言ってもらえると助かります」
「ああ、そういえば、アルヴェルド王国に移住するということは、これからの旅路はほとんど同じということになりますか」
「ああ、考えてみれば、そうですね」

 男性の指摘に、私は気づいた。確かに、私達は同じ道を辿ることになるだろう。
 この馬車を利用するということは、そういうことになりそうだ。多少は異なる部分もあるだろうが、大体は一緒のはずだ。

「……もしよかったら、ご一緒しませんか?」
「え?」
「アルヴェルド王国まで、一緒に旅しませんか? これも、何かの縁ですし」
「それは……」

 男性の提案に、私は驚いた。まさか、そんな提案をされるなんて思ってもいなかったことだからだ。
 それは、要するにナンパ的なものなのだろうか。見ず知らずの女性に、一緒に旅しようと誘うというのは、その認識で間違っていないはずだ。
 それなら、流石にこの提案ははねのけた方がいいだろう。なんというか、結構危ないことだと思うからだ。

「……兄さん、それは完全にナンパだわ」
「ナ、ナンパ?」

 私が彼の提案を断ろうとしていると、後ろから女性の声が聞こえてきた。
 その女性は、男性のことを兄さんと呼んだ。ということは、彼女は彼の妹ということだろうか。
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