「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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36.人気の理由

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「そういえば、お嬢ちゃんはこの店がなんでこんなに人気か知っているかい?」
「どうして人気か、ですか?」

 そこで、他のお客さんが話を一気に変えてくれた。恐らく、気を遣ってくれたのだろう。
 私は、その話に乗らせてもらうことにした。ここは、空気を変えるべきだろう。

「やっぱり、料理がおいしいからとかではありませんか?」
「まあ、確かにそれもあるな……ここの料理は評判だ」
「でも、それが人気の理由ではないのですか?」
「ああ、俺が思っているのはそこじゃないんだ」

 私の言葉に、お客さんは笑みを浮かべる。それは、なんというか楽しそうな笑みだ。
 しかし、料理以外に人気の理由とはなんだろうか。後あるとすれば、店の雰囲気などだろうか。

「この店は、トゥーリンやナーゼスが料理を作っている。そこに、大きな意味があるんじゃないかと俺は思うんだ」
「大きな意味ですか?」
「ああ、日頃から厳しい社会に揉まれている俺達は、ここに癒しを求めに来ているんだよ。男だったら、トゥーリンに女だったらナーゼスに、それぞれ異性の手料理が食べられるという体験こそが、俺達にとっては嬉しいものなんじゃないだろうか」

 お客さんは、二人の手料理が食べられることのありがたみを力説していた。
 確かに、異性の手料理が食べられるというのは結構嬉しいことかもしれない。トゥーリンさんもナーゼスさんも容姿は端麗であるし、二人の人気というのもこの店の人気に関係しているのだろうか。

「なあ、おっさん。でも、おっさんがいつも頼んでいる料理は、俺が担当だぜ?」
「うん? そうだったか?」
「ああ」
「……」

 そこで、ナーゼスさんから突っ込みが入った。どうやら、持論とは裏腹に彼はナーゼスさんの料理を好んでいるようだ。
 それによって、お客さんは黙ってしまう。ナーゼスさんの指摘が、とても効いてしまったようである。

「ナーゼス、お前は料理が上手いなあ……」
「おっさん……」

 やっとのことでお客さんが呟いたのは、そんな言葉だった。
 ここまで話を聞いていて、私はあることが気になっていた。二人の料理とは、どんなものなのだろうかと。
 色々と立て込んでいたので、私はまだこの店の料理を食べていない。その味が、とても気になってきたのだ。

「やっぱり、ここは料理がうまいから人気なんだよ」
「言っていることが、変わっているじゃないか」
「いやいや、そんなことはないさ」

 一応、後で食事を振る舞ってもらえることになっている。私は、それを楽しみにしながら、お客さんと接するのだった。
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