「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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57.操りし者

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「……あそこだ!」
「あれは……」

 そこで、ドルギアさんは、とある家の屋根を指差した。その方向を見てみると、そこには人影がある。
 恐らく、その人影が魔法を使った人物なのだろう。だが、顔は見えない。グーゼス様と戦っている内に、辺りが暗くなっており、唯一の頼りである月は雲に隠れてしまっているからだ。
 だが、雲が動くのと同時に、月明かりが戻ってくる。それによって、彼の人物の顔も見えてくる。

「あ、あなたは……」
「お久し振りですね、聖女様」

 その人物の顔を、私は見たことがあった。彼女は、私が知っている人物だったのである。

「なんだよ、知り合いなのか?」
「ええ、彼女はルミーネ。私の部下だった人です」
「お嬢ちゃんの部下? なんてこった……」

 ドルギアさんは、私の答えに驚いていた。もちろん、私も驚いている。何故、彼女がこの国で、こんなことをしているのだろうか。
 その意味が、まったくわからない。だが、状況から考えると、彼女が今回の事件の糸を引いていたことは、ほぼ間違いないだろう。

「ふふふ……」

 ルミーネは、私達を嘲笑うような笑みを浮かべながら、ゆっくりと屋根の上から下りてきた。
 それに対して、私もドルギアさんも構える。彼女が、何をしてくるかはわからない。だが、何をしてきてもいいように、準備をしておかなければならないだろう。

「そんなに身構えないでください。別に、私はあなた達と一戦交えようなんて、思っていませんから」
「なんだと? それなら、どうしてここに現れたんだ?」
「私はただ、あそこにいるモルモットを回収しに来ただけです。なんというか……少し、壊れてしまったみたいですから」

 ルミーネは、楽しそうに笑っていた。それは、グーゼス様の現状に対する笑みなのだろう。

「あなたが、グーゼス様をあんな風にしたの?」
「ええ、そうですよ。あら? 聖女様、どうしてそんなに怒っているんですか?」
「当然だよ。あんな風に、彼を弄ぶなんて……」
「別にいいではありませんか? 彼の行いは、あなたもよく知っているでしょう?」
「それはそうだけど……でも、だからといって、こんなことが許される訳がない」

 彼女の言う通り、私はグーゼス様に恨みがある。だが、それでも、彼がこんな状態になったことに対しては、同情する気持ちの方が大きい。
 確かに、彼は悪いことをしてきた。だが、あんな風に化け物にしていいなんてことがある訳がない。

「お優しい聖女様……あなたのそういう所、私は大嫌いですよ?」
「……あなたは、一体何者なの?」
「ふふふ、私がそれに素直に答えるとでも?」
「答えてもらおうと思っているよ」
「なるほど……そういうことですか?」

 私は、掌にゆっくりと魔力を集中させる。
 今回の事件の真実を知るためには、ルミーネから全てを聞き出さなければならない。そのためにも、彼女を拘束するのだ。
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