「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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70.決して諦めず

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「騎士達は、見事な手際で山賊達を鎮圧しました。人質となっていた私達も助け出して……本当にかっこよかった」
「そうなんですね……」
「その姿を見て、思ったんです。僕も、彼らのようになりたいと。だから、騎士を志すことにしました。憧れたんです。騎士に……」

 少年だったマルギアスさんの心に、自分を助け出してくれた騎士は、とても輝いて見えただろう。それに憧れるのは、当然のことである。
 だが、そこからが問題だろう。騎士に憧れるまではいいが、実際になろうと思うには難しい現実が立ちはだかってくるはずだ。

「でも、騎士になるためにはお金が必要でした。貧しい平民の農家に、そんな資金はなかった。それがわかっていた私は、その夢を諦めることにしたんです」
「諦める? そこで、諦めたんですか?」
「ええ、現実との折り合いを、私は幼いながらもつけていたんです。まあ、そういう面は、家の手伝いをするようになってから、わかっていましたから」

 マルギアスさんは、聡い少年だったようである。貧しい家では、騎士になるのは難しい。それをきちんと理解していたようだ。
 しかし、彼は今実際に私の前に騎士としている。ということは、そこから何かがあったということなのだろう。

「そんな私を見かねたのか、両親はこう言ってきました。お前が本気なら、俺達も覚悟を決めると。夢に向かって決して諦めずに努力を続けるなら、無理をしてでもお金を作ると」
「それは……」
「その言葉を聞いて、私は覚悟を決めたのです。夢を諦めたくないという気持ちは、当然ありましたから。だから、両親に誓いました。必ず騎士になると」

 マルギアスさんの両親は、そんな息子のことを気遣ったようだ。
 騎士になりたいなら手助けする。そう申し出るのは、本当に覚悟がいることだっただろう。
 それを理解したマルギアスさんは、決して諦めないと決めた。彼の根底にあるその真っ直ぐさは、そこから来たものかもしれない。

「それから、私は必死に努力をしました。その結果、こうして騎士になれたのです。おかげで今は、両親にも仕送りをして多少は楽させられています」
「頑張ったんですね……」
「ええ、頑張りました」

 私の言葉に、マルギアスさんは苦笑いを浮かべていた。
 恐らく、本当に頑張ったのだろう。諦めて終われば、どうなるかはよくわかっていたはずだ。彼は、決して折れる訳にはいかなかったのである。
 そういう意味では、私と彼は似ているのかもしれない。お互い、覚悟を決めてなりたい職業を目指した訳だ。もっとも、私の動機は彼と違って、少し不純なものではあるのだが。
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