せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。

木山楽斗

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45.第三王子との対話

 私は、王城のベランダに来ていた。
 隣には、ウォーラン殿下がいる。彼とも話をしなければならなかったからだ。
 という訳でやって来たのだが、ウォーラン殿下の表情は暗い。それでわかった。多分、彼も王位は望んでいないのだと。

「……リルティア嬢、僕は愚かな人間です」
「え?」
「メルーナ嬢のことを兄上から聞いていながら、何もしなかった。僕があの時に動いていれば、今回のようなことは起きなかったかもしれません。メルーナ嬢のことも助けられたし、これ程の犠牲者を出すこともなかった」

 ウォーラン殿下は、悔しそうにその表情を歪めていた。
 本当に、心から悔いているのだろう。真面目な彼らしいと言えば、彼らしい発言である。
 しかしそれは、たらればというものだ。その時のウォーラン殿下に、動きようがある訳がない。アヴェルド殿下があんな人とは、思ってもいなかったことだろうし。

「ですから、僕は王位などは望んでいません。僕は次期国王には相応しくないのです」
「……そうですか」

 王位を望んでいない。そう言われるのは、これで三回目だ。
 イルドラ殿下にまで断られたら、いよいよ後がない。というか、この時点で彼以外の選択肢が消えているというのも奇妙な話だ。

「次期国王に相応しいとしたら、やはりイルドラ兄上です。イルドラ兄上は、今回の件に一早く気付き、動いていました。結果的に多くの犠牲者が出た訳ですが、イルドラ兄上は最善の手を尽くしていました。リルティア嬢の事情も考慮して……」
「それは……まあ、そうですね」
「イルドラ兄上は尊敬できる人です。アヴェルド兄上の本性を見抜けなかった僕でも、これだけは確信しています。イルドラ兄上は聡明で優しい人だと」

 ウォーラン殿下は、兄のことを褒め称えていた。
 ただ人の好い彼の場合は、例えアヴェルド殿下でも好意的に捉えていたはずだ。普通の人いよりも、大袈裟に言っていると考えた方がいいかもしれない。

「もっとも、リルティア嬢ならそのようなことは既にわかっているとは思いますが」
「え?」
「リルティア嬢は聡明でお優しい方です。そして物事の本質を見抜ける人でもあります。僕はリルティア嬢が判断を誤るとは思っていません。父上があなたに任せたことも正しいと思っています」
「それは……褒め過ぎなような気もしますけれど」

 やはりウォーラン殿下は人を好意的に見過ぎているようだ。
 別に私は、聡明でも優しい訳でもない。ただ単純に、貴族として生きているというだけだ。

 アヴェルド殿下の件だって、優しさで動いていた訳ではない。エリトン侯爵家のために、色々と画策していただけだ。
 そして今も私は、エリトン侯爵家のために動いている。結局私は、そういう合理的な生き方しかできない人間なのだ。
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