せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。

木山楽斗

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49.彼とならきっと

「イルドラ殿下、あなたは心情的なことを気にしていましたが、その点に関してはまったく問題がありませんよ」
「……そうなのか?」
「ええ、だって……」

 結論が出たため、私は自然と笑みを浮かべていた。
 イルドラ殿下でいいのではない。私は、イルドラ殿下がいいと思っている。それはきちんと、伝えておくべきことだろう。
 そう思って言葉を発した訳だが、直後に私は気付いた。これはなんというか、愛の告白みたいであると。

「えっと……」
「リルティア嬢?」

 言い方を考えなければならないと思った私は、言葉を詰まらせることになった。
 別に私は、彼に好意を抱いている訳ではないはずだ。いや、どうなのだろうか。それがなんというか、わからなくなってきた。
 ただとにかく私は、イルドラ殿下を選びたいと思っている。それはきちんと、伝えておくことにしよう。

「私は、イルドラ殿下を選びます。私はあなたに、次の国王になってもらいたいと思っています。イルドラ殿下なら、きっとこの国を良き方向に導ける」
「……それは過大評価であるような気もしてしまうがな」
「過大評価というなら、私の方ですよ。次期国王を選ぶなんて大役を任されているのですから。それでも私は、自分の選択に自信を持っています」

 イルドラ殿下が王に相応しいというのは、私の紛れもない本心だ。
 彼は、アヴェルド殿下とは違う。正しく国を導ける人だ。それを私は、確信している。

「もちろん、私はこの選択の責任を取るつもりです。王妃としてイルドラ殿下の隣に立ち、あなたを支えてみせます」
「リルティア嬢……」
「イルドラ殿下は、それを受け入れてくれますよね?」

 私の言葉に、イルドラ殿下はゆっくりと息を呑んだ。
 だが彼の表情は、すぐに真剣なものになる。決意を孕んだその表情に、私の肩の荷は軽くなった。彼がどのような結論を出したのか、わかったからだ。

「……まあ、元々俺がやるしかないことだということはわかっていた」
「イルドラ殿下……」
「心強い味方を得られたことは、嬉しいことだ。リルティア嬢、これからどうかよろしく頼む」
「ええ、任せてください」

 私は、イルドラ殿下と固く握手を交わした。
 その力強い握手からは、彼の決意が伝わってくる。
 私もそれに、応えなければならない。王妃としてしっかりと務めていくとしよう。

「といっても、父上もまだまだ健在だからな。俺が王位を継ぐのは随分と先の話となるだろう」
「それはそうですね。その時までに、成長していないと」
「確かにそうだな」

 私達は、そのような言葉を交わして笑い合った。
 イルドラ殿下となら、きっと大丈夫だろう。根拠はないが、その笑顔に私はそんなことを思っていた。
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