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色恋
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2度目は社会人になってからだった。
その日は仕事帰りに少しだけ会社の先輩と飲んだためお酒が入っていた。
私の借りている部屋は最寄り駅が新宿駅だったので、暮らしているうちに土地勘ができ、街に対する怖さはかなり薄れていた。
1度歌舞伎町に行って案外普通だったという記憶があったので、もう1度行ってみようかなと何故か思った。
この時の私の行動力は普段の私から考えると異常だ。
それでも流石に1人では行けないなと思った私は適当にネットをあさってみた。
『これから一緒に初回行ける人募集。デブスでもよかったらメールください。xxx~~xxxx@~~.co.jp』
こんな書き込みを見つけ、お酒の勢いに助けられてメールをしてみた。
するとすぐに返信が来た。
その子もすでに新宿駅にいるということで待ち合わせ場所に向かってみると、すごい美少女がいた。
デブスとは!?
騙された気分だった。
こうして小花柄のワンピースに身を包んだ姫系の美少女と会社帰りのOLという謎の2人組でホストクラブに向かうことになった。
美少女はカトリーヌと名乗ったので、私もとっさにブリジットと名乗った。
今回は前回ほど緊張せずに落ち着いて歩くことができた。
明らかにカトリーヌちゃんの方が慣れている感じだったので、行く場所はカトリーヌちゃんに任せた。
カトリーヌちゃんが会ってみたいホストがいるお店に行くことになった。
立ち並ぶ雑居ビルの5階にそのお店はあった。
店内はやはり別世界。
薄暗い照明とキラキラした輝き。
前回もキラキラしているという印象は持ったけれど、何がキラキラしていたのかはよく覚えていなかった。
今回落ち着いて見渡してみると、先ずシャンデリアのキラキラが目に入る。
そして他のお客さんのテーブルに並ぶボトルのキラキラ。
香水瓶を大きくしたようなキラキラしたお酒がたくさんテーブルに並んでいた。
シンデレラに出てくる、ガラスの靴のようなお酒もあるようだ。
とても可愛い。
私達は初回ということで、10分くらいの間隔で次々とホストの方々が挨拶にやってきては接客をして名刺を置いて行く。
無口な人、空回りな人、かっこいい人、きれいな人、面白い人、忙しそうな人などなど。
前回よりも楽しむことができたので名残惜しかったけれど、私達は当初の予定通り延長せずに帰ることにした。
帰りには送り指名というのを選ぶことができる。
このお店では、選んだホストがお店の外まで送ってくれるらしかった。
私はカッコいいなぁと思った人を選んだ。
カトリーヌちゃんは女の子のようにきれいな人を選んでいた。
私の選んだ人は私をエレベーターで階下まで送ると「ヒメ、また会いたいから連絡先教えて」と言ってきた。
私は驚いて目を丸くした。
だって私は自分の名前を言っていない。
今日私はお店でもブリジットと名乗った。
それなのにその人は私の本名を呼んだのだ。
「私たちどこかで会いましたか?」
私は、もしこんなカッコいい人と知り合いだったら絶対忘れるわけはないと思いながらも尋ねた。
「夢の中で」
彼はそう言った。
この瞬間私は心を持っていかれてしまったんだと思う。
どうかしていたとしか思えないけれど、このセリフは私の大好きなディ●ニー映画『眠れる森の美女』の中で王子が姫に言うセリフなのだ。
それに夢の中で逢うというのは古典ではとても特別な意味を持つ。
私の中では最高にロマンチックなセリフだった。
こんなセリフを言ってくれる日本人は、ほとんどいないだろう。
気が付くと私はホイホイと連絡先を教えていた。
後から知ったことだけれど、名前が分からない・忘れた時ホストは女性をとりあえず姫と呼ぶらしい。
その時も単にそれで姫と呼んだのを私が本名を呼ばれたと勘違いしただけだった。
私はカトリーヌちゃんと別れて自宅へ帰った。
たぶん30分くらいは歩いたけれど、私はふわふわと浮かれていたのでどうやって帰ってきたのかほとんど覚えていなかった。
家に帰ってスマホをチェックすると早速連絡が来ていた。
『今夜も夢で逢おうね、お休み』
今思うと彼は潜在的に気配りができる人だったのだ。
私が夢ネタに弱いらしいというのを瞬時に見抜きこんなメッセージを送ってきたのだから。
それから毎日のように彼から丁寧な連絡が来て、私はまた会いたいという気持ちが大きくなり、気が付くと再びそのホストクラブを訪れ、彼を指名していた。
こうして彼は私の担当となり私は担当のATMとなった。
その日は仕事帰りに少しだけ会社の先輩と飲んだためお酒が入っていた。
私の借りている部屋は最寄り駅が新宿駅だったので、暮らしているうちに土地勘ができ、街に対する怖さはかなり薄れていた。
1度歌舞伎町に行って案外普通だったという記憶があったので、もう1度行ってみようかなと何故か思った。
この時の私の行動力は普段の私から考えると異常だ。
それでも流石に1人では行けないなと思った私は適当にネットをあさってみた。
『これから一緒に初回行ける人募集。デブスでもよかったらメールください。xxx~~xxxx@~~.co.jp』
こんな書き込みを見つけ、お酒の勢いに助けられてメールをしてみた。
するとすぐに返信が来た。
その子もすでに新宿駅にいるということで待ち合わせ場所に向かってみると、すごい美少女がいた。
デブスとは!?
騙された気分だった。
こうして小花柄のワンピースに身を包んだ姫系の美少女と会社帰りのOLという謎の2人組でホストクラブに向かうことになった。
美少女はカトリーヌと名乗ったので、私もとっさにブリジットと名乗った。
今回は前回ほど緊張せずに落ち着いて歩くことができた。
明らかにカトリーヌちゃんの方が慣れている感じだったので、行く場所はカトリーヌちゃんに任せた。
カトリーヌちゃんが会ってみたいホストがいるお店に行くことになった。
立ち並ぶ雑居ビルの5階にそのお店はあった。
店内はやはり別世界。
薄暗い照明とキラキラした輝き。
前回もキラキラしているという印象は持ったけれど、何がキラキラしていたのかはよく覚えていなかった。
今回落ち着いて見渡してみると、先ずシャンデリアのキラキラが目に入る。
そして他のお客さんのテーブルに並ぶボトルのキラキラ。
香水瓶を大きくしたようなキラキラしたお酒がたくさんテーブルに並んでいた。
シンデレラに出てくる、ガラスの靴のようなお酒もあるようだ。
とても可愛い。
私達は初回ということで、10分くらいの間隔で次々とホストの方々が挨拶にやってきては接客をして名刺を置いて行く。
無口な人、空回りな人、かっこいい人、きれいな人、面白い人、忙しそうな人などなど。
前回よりも楽しむことができたので名残惜しかったけれど、私達は当初の予定通り延長せずに帰ることにした。
帰りには送り指名というのを選ぶことができる。
このお店では、選んだホストがお店の外まで送ってくれるらしかった。
私はカッコいいなぁと思った人を選んだ。
カトリーヌちゃんは女の子のようにきれいな人を選んでいた。
私の選んだ人は私をエレベーターで階下まで送ると「ヒメ、また会いたいから連絡先教えて」と言ってきた。
私は驚いて目を丸くした。
だって私は自分の名前を言っていない。
今日私はお店でもブリジットと名乗った。
それなのにその人は私の本名を呼んだのだ。
「私たちどこかで会いましたか?」
私は、もしこんなカッコいい人と知り合いだったら絶対忘れるわけはないと思いながらも尋ねた。
「夢の中で」
彼はそう言った。
この瞬間私は心を持っていかれてしまったんだと思う。
どうかしていたとしか思えないけれど、このセリフは私の大好きなディ●ニー映画『眠れる森の美女』の中で王子が姫に言うセリフなのだ。
それに夢の中で逢うというのは古典ではとても特別な意味を持つ。
私の中では最高にロマンチックなセリフだった。
こんなセリフを言ってくれる日本人は、ほとんどいないだろう。
気が付くと私はホイホイと連絡先を教えていた。
後から知ったことだけれど、名前が分からない・忘れた時ホストは女性をとりあえず姫と呼ぶらしい。
その時も単にそれで姫と呼んだのを私が本名を呼ばれたと勘違いしただけだった。
私はカトリーヌちゃんと別れて自宅へ帰った。
たぶん30分くらいは歩いたけれど、私はふわふわと浮かれていたのでどうやって帰ってきたのかほとんど覚えていなかった。
家に帰ってスマホをチェックすると早速連絡が来ていた。
『今夜も夢で逢おうね、お休み』
今思うと彼は潜在的に気配りができる人だったのだ。
私が夢ネタに弱いらしいというのを瞬時に見抜きこんなメッセージを送ってきたのだから。
それから毎日のように彼から丁寧な連絡が来て、私はまた会いたいという気持ちが大きくなり、気が付くと再びそのホストクラブを訪れ、彼を指名していた。
こうして彼は私の担当となり私は担当のATMとなった。
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