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バッサリ

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本当はイザックとの結婚が破談になりそうだなんて、話したくない。
話したら認めることになるみたいだし、それに何より言葉にするのはつらい。

けれど、リナは私にとって最も身近な存在と言えるだろうし、イザックとの話もいつも聞いてもらっていた。
それにリナは情報通でとても頼りになる。

私は決意して、リナに話すことにした。

「実は、イザックがね、私との結婚を白紙に戻したいって考えているみたいで。それであなたに本を借りたでしょう?あの後、自分でも何冊か買ってみたの。そうしたら、その中に王子が侍女と恋に落ちるっていう話があったのよ。だからもしかしたらイザックは侍女の子と結婚するために、私との結婚を白紙に戻そうとしているんじゃないかって気づいたの」

やはり言葉にするのは辛い。
どうしてもリナを見て話すことができず、うつむいてしまう。

「結婚を白紙に!?それは…、なんというか、一大事ですね。お嬢様、大丈夫なんですか?」

いつも快活なリナだけれど、戸惑っている。
どんな言葉をかければいいのか、分からないのだろう。

「ねぇ、リナ、このことはまだお父様とお母様には言わないで。私は相手の女性と直談判して、イザックに考え直させようと思っているの。それが成功してイザックが考え直してくれて、家族に心配をかけずに済むなら、それが一番いいと思うから。それまでは家族には黙っていてほしいの」

私はリナに懇願した。

「それはもちろん、言いません」

「よかった」

「では、お嬢様は王宮で働いて相手の女性を割り出そうという訳なんですね。けれど働く必要あります?普通に殿下を訪ねて行って怪しい人間を割り出しては?」

リナは不思議そうにしている。
私だって、本当ならばイザックに会いに来たい。けれど…。

「リュシーとして王宮に行きたくないの。実は婚約を白紙に戻すっていう話は、イザックがたまたま話しているのを私が立ち聞きしてしまって知ったものなの。だから正式にイザックから言われたわけではなくて。だけど王宮に行って、イザックと鉢合わせて、『よぉ、リュシー、俺たちの婚約は白紙に戻すからな、よろしく』なんて言われたらその時点で終わりよ。今、私はイザックから逃げ回ってるところなの。だからリュシーとしてではなく、王宮で働く人間になって相手の女性を捜せればなぁ、と思ったの」

先週はお腹が痛くなったことにして、イザックと会わずに帰って来た。
今週と来週は領地に遊びに行ったことになっているので、再来週まではイザックと会わずに済む。

「なるほど、そういうことだったんですねぇ。お嬢様の事情は分かりましたけど、お嬢様が王宮で働くというのは普通に無理ですね」

リナはバッサリと切り捨てた。
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