転生公爵令嬢が、親友と姉妹になろうと頑張った結果

国湖奈津

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 初日はお疲れだろうということで、城の中や庭のご案内をすることになった。
 ご案内は父の計らいで私が行う。

 我が家自慢の庭をご案内し、四阿で休憩をした。
 ヴィンセント様は、ごく自然と王太子殿下専用の椅子に座られた。

 この椅子は、私が今回ヴィンセント様がお越しになるのに合わせて何脚か作ってもらい、配置しておいた椅子だ。
 私が軽く倒れ掛かるだけで、自然とラッキースケベ状態が起こるようになっている。

 先人たちが懸命に編み出したラッキースケベの中でも、最もオーソドックスなのが、転んだ拍子に女性の胸(又は股)に男性が顔を埋め込んでしまうもの、転んだ拍子に女性の胸を鷲掴みにしてしまうものだと思う。

 しかし、まずヴィンセント様を転倒させるというのは非常に難しい。
 相手は高貴な身の上なので、足を引っかけて転ばせるというわけにはいかない。
 
 そのため、ヴィンセント様を物理的に傷つけることなく、ごく自然とラッキースケベ状態を生み出すという方法を考えなければならなかった。

 王道中の王道であるパンチラは、この国の女性の衣装がロングスカート一択なので全く使えないのが痛い。
 そこで作られたのがこの椅子である。

 この椅子にヴィンセント様が座ると、丁度私の胸の少し下にヴィンセント様の顔が来るように設計されている。
 そのため、私が、『立ちくらみがした』や『足を引っかけた』などと言ってヴィンセント様の方に少し倒れ掛かるだけでラッキースケベ状態を生み出せるというわけである。

 この椅子を作るために労力を費やしたけれど、私はヴィンセント様に対する計画の中止をしようときめていた。
 昨日、チームメンバーに諭されたこともある。
 それに加えて、今私の思考は負のスパイラルに入ってしまっているようで、しきりにこの計画にマイナスになるようなことを思い出してしまっているのも関係している。

 例えば、日本で隣の席だった男子が言っていた、
 『ただし美少女に限る』
 という言葉や
 『大学生以上は育ちすぎて無理。高校生でもギリ。正直言うと10歳以上はキツイ』
 という言葉をなぜか急に思い出してしまったのだ。

 私はすごくよく言えば清楚系。
 つまり地味だ。
 髪の色も瞳の色もダークブラウンで、この国ではありふれた色合い。
 当然美少女とは程遠い。

 さらに年齢も19歳。
 日本なら大学生の年齢で、隣の席の彼が言っていた育ちすぎて無理な年齢に該当する。

 このような人間がラッキースケベの相手で嬉しかったり、異性として認識するようになり自分の過去の言動を後悔したりするはずがないということに今更気づいたのだ。

 ヴィンセント様はそういう方ではないが、相手によっては不敬罪で投獄されてもおかしくない。
 むしろ、今まで気づかなかったことがおかしいのだが。
 実行する前に計画を中止できて本当に良かったと今は思っている。
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